二年後
とある街中。
「それでさ~、……——っ! ねぇ、あの人!」
ショッピングに来ている女性の一人が、連れの女性の袖を引っ張り、少し離れたところにいる男性を指さす。
「ん? ……うっわ!? めっちゃイケメン!」
整った顔立ち、丁寧にセットされた髪形、百八十センチを超える身長。一般人とは一線を画すルックスを誇る男性がそこにはいた。
「だよねぇ~! モデルかなんかかな? むっちゃ背高いし、スタイル超良いし」
「——? なんか、どっかで見たことがある気がするんだよねぇ?」
「じゃあ本当にモデルだったりして!?」
「いや、私雑誌とかあんま見ないし……、あっ! 思い出した! 最近見てる朝ドラに出てる人だ‼」
「マジ‼ じゃあ俳優ってこと!?」
「そうそう! 名前は確か……
柊 アオト!」
◆
あれから、二年が経った。
その二年間にはいろんなことがあった。
毎日筋トレと食事制限を続けたり、身長を伸ばすために睡眠やカルシウムをしっかりとったり、生まれて初めての美容院やエステに行ったり、独学で演技の練習をしたり、滑舌をよくするため毎日発声練習をしたり、中学校は1日も登校せずに卒業を迎え、新人俳優オーディションに落選したり、途中で諦めかけたりと、苦悩と苦労の日々を送っていた。
——しかし、ついに。
苦節二年。僕は、
俳優になることができた。
といっても、まだまだ仕事はエキストラや脇役がほとんどの新米ではあるけど……。
それでも最近、朝ドラの主要キャストを任せられたりして、幸先いいスタートを切っていたりもする。
俳優としていい滑り出しを切っている僕だが、そんな僕にも多くの悩みを抱えている。
そりゃあ、俳優と言っても僕はまだ十七歳と悩み多きお年頃ではある。
しかし、今抱えている悩みの種は年齢とは関係ない。
僕が悩んでいるのは、〝人間関係〟についてだ。
主人公の努力の二年間については、回想として時折作品内に入れていこうと思います。
今後は二年後の主人公が新人俳優として過ごしていく時を軸に進めていく所存です。