表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

エルドランド・アナザーサイド

ノースフォレストのサンタクロース

作者: ホーリン・ホーク

挿絵(By みてみん)


 ある夢の世界、深い森に囲まれた北の村〝ノースフォレスト〟に住むものたちがいます。


 ここにもクリスマスがやってきます。

 子どもたちはこの季節になるととってもいい子にしています。

 それはサンタさんが見ているから。



 サンタさんは見ているよう、いい子にしてるか見ているよう、プレゼントを持ってね。

 パパやママは微笑んで言います。


 村のみんなが楽しみにしてるクリスマス。

 北からの風にのって、聖なる一夜が今年もやってきます。


挿絵(By みてみん)


「雪だ……」


 クマのマイキーは雪が大好きです。

 小さい頃からサンタさんが大好き。

 ずっと信じてきました。

 やんちゃでいたずらっ子のマイキーも、この季節はおとなしくていい子です。


 マイキーも少し大きくなって、もう十五回目のクリスマスです。



 マイキーは言いました。

「ぼくは今度は何をもらえるかなぁ、手袋がいいな。ぼくの手は大きくなって、今持っているのはちょっときついんだ」


挿絵(By みてみん)


 するとお友達のウサギのラビィが笑いました。

「おいおい、おれたちもう子どもじゃないぜ。サンタからは何もないさ」

 ウシのモーリィも笑いました。

「まさかまだ信じてたのか? サンタクロースがいるって」

 ネズミのチュッパも笑いました。

「え、知らねえの? この村のサンタクロースはあのトナカイのルドルフおじいさんだぞ」

 みんな声を合わせてマイキーを笑いました。

「サンタクロースなんているわけないじゃん、サンタさんはルドルフおじいさんの変装です! ワッハッハ 」

 みんなで指差して、マイキーのことを笑いました。



 マイキーは泣いてお家へ帰りました。



 森のはずれにはトナカイのルドルフおじいさんが住んでいて、昔からずっと村のサンタクロース役をやってきました。


 器用でなんでも作れるおじいさんは、子どもたちに囲まれながらいつもプレゼントを考えていました。


 あの子にはマフラー、

 あの子にはミニカー、

 この子には絵本を、

 その子には靴を、セーターを、鉛筆立てを……。

 子どもたちと遊びながら見て、知って、楽しみながら考えるのが好きだったんです。



 おじいさんも楽しみにしているクリスマス。

 パパもママもおじいさんのことは知っています。

 夢の中で子どもたちは信じています。

 毎年サンタクロースがやってくるのを。


挿絵(By みてみん)


 マイキーはベッドにもぐりこんで、お友達から笑われたことを気にしています。

「サンタクロースって、本当はいないんだ……ルドルフおじいさんが、サンタクロース……」

 マイキーは泣いて、また深くベッドにもぐりこみました。



 雪の精の知らせでルドルフおじいさんはマイキーのことを知りました。

 元気のないマイキーのことを。


 ――ああ、わたしは、マイキーに言うべきなのか。本当のことを……。

 おじいさんは思い悩みました。



 十二月二十五日。

 そしてクリスマスがやってきました。

 キラキラ(きら)めくクリスマス。

 年に一度の楽しいクリスマス。

 ノースフォレストの静かな夜も、今夜ばかりはさわがしいです。


挿絵(By みてみん)


 ポンッとはじけるシャンパンのコルク。

 ジングルベルの曲が流れダンスが始まります。

 ケーキはいかが? たくさん食べて、お祝いしましょう。

 子どもたちの夢の一夜。





 ……午前二時。

 プレゼントを配り終わって、今年もルドルフおじいさんの仕事は終わりそうです。

 かわいらしい子どもたちの寝顔を思い浮かべて、それぞれに思い浮かべて、うなずきながら、おじいさんはお家へ帰っていきます。


挿絵(By みてみん)


 そのうちゴホッ、ゴホッとおじいさんは咳をし始めました。

 ――うーん、今夜は冷えるわい。今年の冬は寒すぎる。体が芯まで冷えてきた。早く家に帰らねば……。



 マイキーは目を覚ましました。

 ベッドに用意していた靴下の中には〝手袋〟が。


「ルドルフおじいさん……」


 マイキーは家を飛び出してルドルフおじいさんの家を訪ねました。

 一言、おじいさんにお礼を言おうと。

「おじいさん今まで、今まで……」


 おじいさんの家のドアを開けました。

「こんばんは、おじいさん……マイキーです。ルドルフ……」


 見るとおじいさんは暖炉の前、床にうつぶせに倒れていました。

 体は冷たく、動きません。

 何度呼んでも動かずに、床に倒れたままでした。





 ……それから十年。

 今年もノースフォレストにクリスマスがやってきます。


 雪が舞い散る空。

 クマのマイキーは子どもと並んでその空を見上げました。


 ――ルドルフおじいさん、お元気ですか?

 今はぼくがこの子のサンタクロースです。


 この子たちのサンタクロースです。


挿絵(By みてみん)



 雪の精が舞い、

 風の精が北の方から、

 音の精が鈴の音鳴らして、


 寝静まる村に光をまとって集まってきます。


 かわいい子どもたちに、

 笑顔の君に、

 一人でいるその子に、

 さびしそうなあなたに、

 みんなのもとに。


 サンタクロースは光をまとって。



 ――おしまい。





評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[良い点] やはり何度読んでもいいですね。 私もまた年を取り、マイキーからルドルフおじいさんに近づいてきました。 たくさんの人の心にひとつでも何かいいことを残したい。自分のためではなく誰かのために生き…
[良い点] ルドルフおじいさんの雪を踏みしめる一歩の描写がステキなのです。 [一言] 心打たれました。ステキな物語を書いていただき、ありがとうございます。 クリスマスは私にとって今は亡き父からの数々…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ