孫4
久しぶりに予定のない休日を家で惰眠を貪り過ごしていた俺を田中 栄太の着信が叩き起こした。
「神様と会えなくなった!!」
半ベソを書きながら電話してきた主は田中 拓也だった。
「僕のこと、もう、必要なくなったのかな?」
パニックで叫ぶに近い声量を出す田中 拓也。
俺は口先で田中 拓也を落ち着くようになだめながら、田中 拓也にとって必要な物語を考え始めた。
もし、これが俺の描く世界だとするのならどういう物語にするだろう。田中 拓也の言う神様なんてものは存在せず、ただ誰かに必要とされたい自らを慰めるための妄想だった。というのはどうだろうか。俺自身、出会ったこともない神様の都合を考えるよりも現実的だと思う。だが、それを田中 拓也に伝えるのはあまりに救いが無さすぎる。
では、俺のファンだという田中 拓也の父親が、他者評価を気にすることのない世界で物語を紡ぎ続けていた。としたらどうだろう?自分の息子がストーリーテラーによって書けなくされたと悲しむ田中 栄太の憂いも少しは晴れる。そして、ある日、田中 拓也が殻に閉じ籠り始めたのをなんとか外と繋ぎたくて、神様として名乗りをあげた、と。俺という外との接点ができたことでその役目を下りたとか……父親の作家への想いも子供への思いも内包した素敵なストーリーではないか。
でも。
きっと田中 拓也にそれを聞かせて納得させればいいってもんじゃないんだ。
「さぁな?その答えは神様自身の心の中あるいは――拓也くんの中にあるんじゃないか?」
俺は、わざとはぐらかすように言った。
「そんなんじゃわからないよ」
答えを出してくれと懇願するような調子で田中 拓也がごねる。
「そうは言ったって、俺、神様と会ったことないし」
俺は軽い調子で返した。
「……僕の見てきた神様を書けって言いたいんでしょう?」
鼻水を啜る音がしてから、田中 拓也がそう話す。
「よく分かったな。デビュー作ができる前から読者がいるなんてそんな幸運なかなか得られないぞ」
俺は茶化してやる。田中 拓也は大きなため息をつくと「分かったよ」といって電話を切った。
田中 拓也はどんな話を書いて来るだろうか?俺は、できることなら彼の笑顔につながる物語を紡いでいたら良いなぁとぼんやりと考えた。
俺は時計を見て、少し遅い昼食を取りに出かけることにした。書き上がった、原稿を片手に家を出る。目的地はもちろん、カフェジョーカー。




