表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
3/65

提案に乗ってみる3

「とりあえず、その暇潰しって具体的にどんなことをするのか教えてくれない?」

 髪を乱れさせることに飽きた俺はヒメに言った。

「書きかけの物語、あるいは未来に産まれる予定の物語の続きを書いてください」

 さらさらと説明されるがよくわからない。

「どういうことだ?」

「同じことを2回言わせる人だったんですか?」

 ズバッと質問を却下された。

「えっとだな、具体例がほしい」

 質問の仕方を変えてみた。ヒメは、俺の理解力に問題があると思っているようだ。が、どう考えてもヒメの説明が分かりにくいのが悪いと思う。しかし、俺は大人の男だから、女に声を荒げたりしない。


「仕方ありませんね」

 ヒメはそう答えた。後に続いて、やれやれ、物覚えが悪い子に教えるのは苦労すると小声で言うのが聞こえた。俺は声は荒らげないと誓ったばかりだが、ツッコミという名の鉄拳を食らわせたくなる。そんな俺の心情など構わずヒメがこう言った。

「昔々、あるところにおじいさんとおばあさんが住んでおりました。おじいさんは山へ芝刈りに。おばあさんは川に洗濯にいきました……はい。続きを言ってください」

 手のひらを上に向けて、俺を指す。

「川上の方から大きなももがどんぶらこっこーどんぶらっこっこ~?で、犬猿、雉お供にして、鬼退治だろ?あと幸せに暮らす」

 意味がわからないまま、知っている昔話の続きを答える。あまりに流れのつかめない会話に苛立ちは困惑に変わっていた。

「よくできましたー」

 パチパチとヒメが胸の前で拍手した。肘の辺りが胸を押すのに目を奪われる。困惑が別の気持ちにとってかわる。柔らかそうな胸だなぁ。


「と、今のように続きを書いていただきます」

 ヒメがこれで理解できましたか?と言葉を続けた。

「そうすることに、なんの意味があるんだ?」

 俺は、鼻の下が伸びているのを気づかれないように自然に口許へ手をやった。

「神様は常に新しい物語を欲しているのですよ。ところが、数行かかれて捨てられる物語のなんと多いことか。駄作だろうが、訳がわからなかろうが、完成さえしてくれたら、次に進めるのに……と神様は考えているわけです」

 ヒメは人差し指を立てて空に何事かを書くような動作をしながら言った。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ