34 一行、いよいよ魔王城へ
「魔界の――地上出張所? それって、何ですか?」
ピピンの問い掛けにも、おばあちゃんの表情は変わる事がなかった。
「そうさの、結構大切な役目をしておるから――詳しい事は魔王さまから聞くと、ええ」
その頃テンは、荷車いっぱいに運んで来たメロメロンの実を、魔族の皆さんと一緒にご賞味中だった。
「はい、どーぞ♪ いっぱいあるよぉ」
「んーーっ!」
「こりゃあ、うめえなっ!」
「ぶもぶもっ」
「ぷもっ、ぷもっ、ぷもっ」
「確かにこりゃめろめろ~ん、て感じだなっ」
「めろめろ~ん」
いかつい魔族の皆さんが、めろめろ~んとか叫んでいるのは、どうにも似つかわしくなかった。
セージはセージで、魔界の森を指差しながら、メロメロンの採取場所を魔族の皆さんに教えている。
「ふんふん、そんな高くに成ってるのか」
「飛行魔の手助けが必要かな――見たとこ道具もないようだけど、セージはどうやって採ったんだ?」
セージの説明を聞いていた魔族の皆さんが、じーーっとピピンに視線を移す。
その好奇の目に、ピピンの背筋にツツッとうすら寒いモノが走った。
「いや、その――俺は五回で伸びちまったから……期待には多分、沿えねえぞ……」
ピピンの返しに、魔族が一瞬きょとんとし、次には腹を抱えて一斉に笑う。
「はっはっはあ。大丈夫だ、俺たちゃそんな野蛮な事、しねーよっ」
「そーだな、もっと頭使うよなあ。もちろん、ピピンとはまったく別の意味で」
そう言われたピピンも、ポンポンと頭を叩きながら、豪快に笑い飛ばした。
「確かに俺さ、頭相当使ったぞ? それこそ気絶するくらいに、ドゴンドゴンて」
メロメロンの実は、魔族の皆さんのお口に大変合ったらしく、あっという間に底を着いた。
「ぶも~~っ」
「まあ、そう言うな。また採りに行こうや」
不満げに鼻を鳴らすおっ母さんの鼻面を、赤鬼さんがポンポン叩く。
「セージ、次に実が熟れるのって、いつ頃だい?」
魔族の皆さんからも、セージは何でも知っていると思われているのだろう。
「さあ――ピピンさんが直接お話してるので、訊いてみて下さい」
再びピピンに熱い視線が注がれる。
「HAY3世はいつでもどーぞ、て言ってたな。熟してない実も結構成ってたから、二三日もありゃあ、食べ頃のヤツ結構もらえると思うぜ」
三世代かけてあれ程の巨木になった、根性のある家系である。
このチャンスにのんべんだらりと構えてるような事はしないだろう。
それを聞いた魔族の皆さんが、ぱあっと目を輝かせた。
「そうか。そしたらおっ母さん、一緒に採りに行こう。是非手伝ってくれよ」
赤鬼さんがそう言って、おっ母さんの鼻面を撫でる。
いつの間にかおっ母さんの名前は皆さんに浸透していたらしい。
「ぶもーっ」
どうやら利害関係が一致したようだった。
仔魔猪は可愛らしく跳ね回って、女性の皆さんにメロメロンと同じ効力を発揮させている。
「ふたりとも男の子だったよ。ひっくり返してタマタマ見つけたから」
「お前……ひどいことするなぁ……」
ニカニカ笑うテンに、青鬼さんが呆れ顔だった。
魔族の皆さんは、これからHAY3世の処まで道を作ろうと盛り上がっている。
母魔猪も手伝う気満々で、おっ母さんたちとはどうやら、ここでお別れのようだ。
「お前らこれから、お城まで行くんか」
「じゃあな。魔王さまによろしく」
城下町としてのセキュリティチェックの役割、ほぼゼロである。
「じゃあ、そろそろ行こうかの」
「わーいっ、マオちゃーん」
おばあちゃんとテンの先導で、一行は魔王城に向かう事となった。




