表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
29/31

32 ピピン、新たに生まれた友情に感謝する


「ぴーよぴよぴよ、もうだめらぁ……きゅう」

 びたーんとぶっ飛ばされドゴーンと激突し、ドゴンドゴンドゴンと脳天に木の実を食らい、それを五回繰り返した処で、さすがのピピンもとうとう伸びてしまった。

 どう考えても木の実の採取に最適な方法とは言い難かったが、鍛えてばかりだったので、仕方ないだろう。


 どのくらい経ったのだろうか。

 ピピンが、心地良い揺れに目を覚ますとそこは、なんと母魔猪の背中の上であった。

「ふあ……こりゃいったい……」

「おっさんが、僕たちを乗せてくれたんですよ」


 見るとおっ母さんは、たくさんの木の実を積んだ大きな荷車を、ロープで牙と身体にくくり付け、ピピンたち三人を背中に乗せながら、えっちらおっちら曳いている。


「おっ母さん、ちからもちー」

「えーと、いろいろ訊きたい事はあるが、あの荷車って、まさかテンが……」

「そのまさか、ですよ。ぜーんぶ姉さんが、拾って来ました」

 当然といった感じの表情で、セージが呟く。

 魔界の森のいったい何処に、荷車とロープ一式が落ちていたのかどう考えても謎であるが、テンと暮らしていると、それが日常らしい。


「ぶもっ?」

「ぷもっ、ぷもっ」

 背中の気配に気付いたおっ母さんと仔らが、ピピンに話し掛けてきた。


「ああ、もう大丈夫だ……それよりこんな力仕事させて、悪いな……ああ……そうか……ありがとう……」

 ピピンがドえらく優しい眼差しで、おっ母さんの背中を何度となく撫でる。


「そうだよ……俺たちはもう、友だちだ……」






 おっ母さんが言うには、しばらく食うに困らない、こんな美味しい木の実が大量にあるなら、力仕事は願ったり叶ったり、だそうだ。


「それに――何か気付いた事は、あるかい?」

「気付いた事、ですか?」

「おっ母さん、むらさきのもやもや、だしてないよっ」

 テンがイッパツで正解を出した。


「そうなんだ」

 ピピンがおっ母さんの背中をまたもや撫でると、くすぐったいのか少し身震いする。

「おっ母さん、俺たちのために、わざと瘴気を出すの、控えてくれてるんだ――感謝するぜ」

「かんしゃーっ」

 テンがあろう事か、おっ母さんの背中ででんぐり返しを始めたので、当然ながら重力に則り、ころころ転がっていった。


 しかし最早、セージもピピンも顔色ひとつ変えない。

 テンの強運は、この程度じゃ揺らぎもしないに決まっている。

 予想通りと言うべきか、おっ母さんの鼻面までころころ真っ直ぐ転がったテンは、おっ母さんがピーンと鼻でテンを飛ばし、ピピンの腕の元まで飛んで行った。


「はーい、ないすきゃっちぃ」

 テンをお姫さま抱っこで受け止めたピピンに、セージがおざなりな拍手を送る。

「おっ母さん、ナイス鼻芸」

 ピピンのひと言におっ母さんが声高く、ぶもーーっと返事した。


 魔界の森を抜け、地平線に低い建物と、その向こうにお城っぽい大きな建物が見えてきた。

 魔王の棲み処そしておばあちゃんちは、もうすぐそこだ。






 ちなみに例の木の実は『メロメロンの実』と命名された。

 美味しすぎてみんなメロメロになるので、テンがそう名付けた。

 ピピンが提案した『ほっぺた落ちるの実』は、全会一致で敢えなく却下されたそうだ。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ