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22 ピピンの幸運指数を測定する、その意味と意義


 明けて翌日、テンとセージ姉弟が家を失った知らせは、小さな村を風のように駆け巡ってくれたらしい。

 世話好きな年寄りたちが、古着やら穴の空いた鍋やら、必要なモノや明らかにそうでないモノモノなど、朝っぱらから客用コテージに、わんさか届けてくれた。

「わーい、あっとゆうまに、お金もちだぁ」

 両腕を大きく振ってテンが喜んでいるが、もちろん現金はひとかけらも入ってない。


 朝風呂に豪勢な朝食という、王都テンでは望むべくもない贅沢なブリリアントタイムを過ごした後に、四人は発電所へと向かった。

 幸運の指数を測る――と言われてやって来たが、正直ピピンにとって幸運とは何か、それがピピンに必要なものなのか、一晩考えてみたが明確な答えは得られなかった。


 敢えて言えば、十年以上に渡る師匠との修行――人里離れた荒野での、苛酷というかほとんど狂気にも近かった、鍛錬とサバイバルの日々から生還出来た事は、幸運であったのかも知れない。

 あの荒行は、素質に恵まれないピピンには必要なものであった――と思いたい。

 何しろ弟子のヤンは普通に育てているが、ピピンに近い腕前にまで成長している――と言うか、強さだけではピピンを圧倒しているのだから。


 発電所の小屋は木造だったが、内部は塵ひとつ落ちていない清潔な状態だった。

「僕の研究部屋も兼ねてるんです。ここだと素粒子をあれこれ弄れるから」

 いくつかの部屋に分かれていて、奥の部屋は明らかに頑丈そうな扉で、かんぬきだの金属製の錠前だので、厳重に戸締まりされている。

「発電所のコアになる部分です。ああしないと姉さんが勝手に入って悪戯するので、仕方なく……面白い反応が起こってそれはそれで興味深いんですが、安定した電気の供給には不必要ですから……」


 ちなみにテンの悪戯で、一晩にして発電所が電気蔓に覆われた件については未だに調査中、だそうである。

「姉さんが毎日のように奇跡を起こすのは構わないんですが、正直僕らもう、お腹いっぱいで……」






 セージの研究室で、ピピンの電荷エネルギー力、つまり幸運指数を測る事になった。

「で――俺は、どうすればいい?」

「まずピピンさん、身に付けてるものを全部、脱いで下さい」

「お、おう」

 スパパパパッ、と言われるままに服を脱ぐピピン。


「何と言うか――お風呂の時にも思ったんですが、ピピンさんて僕らと体型、あまり変わらないですねえ……」

「ああ。鍛えてるんだけど、な」

 そう言って腕を曲げ、力瘤を作ってみせるピピン。

 拳や蹴りの威力は、体重や筋力に比例するので、ハーフリングのピピンが拳闘士になったのは、明らかなミスチョイスだったとも言える。


「じーっ」

 セージの眼が、ピピンの唯一残ったサルマタに注がれる。

「――これも?」

「はい、もちろん」

 仕方ない、科学のためなら脱ごう。

 そうしてピピンは、一糸纏わぬ姿になった。



 (よい子のみなさん、ここからは15禁です)



 セージはごそごそと棚を漁ると、液体の入った瓶を、すっぽんぽんになったピピンに差し出した。

「電荷エネルギーと反応して発光する物質で、光の強さで幸運指数を測定します――ピピンさん、コレを頭からつま先の皮膚表面に、万遍なく塗ってください」


「了解。ヤン、頭と背中に塗ってくれないか?」

「はい、喜んで」

「あたしも手伝うよぉ」

 テンが何故か張り切っている。


 液体を少しずつ手に取り、ピピンの身体にペタペタと塗っていく。

「――お……」

 ピピンが塗った傍から、ぼおっと黄金色に近い光が顕れた。

「やっぱり、思った通りでした……」

 セージが眼を輝かせた。


「これが何を意味するかというと、ピピンさんは吹き飛ばし拳を打たなくても、微量な電荷エネルギーを常時発しているんです。これが全身から、しかも一定量以上あるようなら、瘴気の中でも皮膚がただれないし、呼吸も問題なく出来ますよ」

「ほーっ」

 これはピピンにも理解出来た。

 おそらく瘴気立ち籠めるだろう魔王領に、生身で入れるかどうか。そのための幸運指数だ。


「そりゃ、しっかりやらなくちゃな」

 そう言って真剣に液体を塗るピピンだったが、もっとやる気を出した者が居る。

 テンだ。


「わーいっ、ちんちん、ちんちん」

「わっ、馬鹿ッ。そこは俺が塗るっ」

 ナニを弄くり回そうとするテンの手を、ピピンが必死で払いのける。

「ほらほら、テン。お師さんの背中を一緒に塗りましょ」

 スムースにナビゲートするヤンだった――が、それがいけなかった。


 ピピンの背後で、テンが妖しく人差し指を立てる。

 普段のピピンなら気配で分かりそうなモノだが、ペタペタ塗り塗りの最中だったし、ヤンも居たので油断していた。


「かんちょー」

 ブスッ。

「ふにょわぁぁぁあああ」

 腰が砕けたようになりながら、情けない声を上げるピピン。

 ――何が起こったかは、読者諸氏のご想像にお任せする事にしたい……


「姉さんっ、いい加減にしなさいっ!」

 さすがのセージも、これには怒った。

 テンは少し真面目な顔になったと思うと、人差し指を鼻に近づけ、くんくんと嗅ぎ始める。


「……くさぁーい……」

「あっ、たりまえだろっ!!!」

 四つん這いになって痛む尻を押さえながら、ピピンが叫ぶ。


 テンの手を洗わせるために、ヤンがテンの背中を押しつつ外に出た。

「姉さん、その手であちこち触んないでくださいよっ!!」

 セージの叫び声に背中を丸める、テン。液体の付着したテンの掌は、明らかにピピンの10倍くらい、煌々と光り輝いていた。



 (よい子のみなさん、15禁はここでおわりです)



「これで全部、塗り終わったかなあ……」

 結局セージにも手伝ってもらって、液体は塗り終わった。

 セージの掌も発光しているのに、ピピンは気付く。

「姉さんだけじゃなくて、僕らの家系は電荷エネルギーを生まれながらに放出してるようなんです。姉さんのソレは桁が違うんですけど、ね」


「どうかな? 発光漏れはあるかな?」

 ピピンの足裏まで隈なく観察したセージは、満足げに肯く。

「大丈夫ですね、全身から均等に放出されてるようです。後は光量の測定だけ、ですね」


 と、ピピンは、発光が完全には均等でないことにも気付いた。

 ピピンの股間だけが、異様に光り輝いている。

「まったく……テンが弄くり回したせいだよ、コレは」

「ピピンさん、言いにくいんですが……お尻の穴も、相当なことになってます……まるで蛍ですよ……」



 (すみません、15禁まだつづいてました)


 ここまでの流れは、要するに『ピピンがどうして生身のまま魔王領に乗り込めたのか』という事を、長々と数話使って、論理展開させたに過ぎません。

 ですので、読み飛ばしても良い部分だったりしますw

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