表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
18/31

20 セージ、瘴気についての新事実を解明する


「これが俺の、渾身の突きなんだ――どうだった?」

「そうですね。殴られた筈なのに、まったく痛くありません」

「そう――なんだよねえ……」

 自分の力量は痛いくらいに知っている筈なのに、改めてダメを押されると、さすがのピピンもガックリくる。


「でも、ピピンさんの拳、思った通りでした。これは確信に近いです」

「えっ? 何が?」

「今から、ご説明いたしましょう」


 セージがスタスタッ、と舞台中央に進み出ると、照明が変わってスポットライトが当たる。

「えーと……ここ、普通のコテージ室内ですよね?」

「ひとつ分かってるのは――ここからの話が異常に長い、てことだよな……」


「さて皆様方に、始めに言っておかなくてはならない事が、あります」

 ピピンとヤンに尻を向けて、蕩々と話し出すセージ。

 だからいったい、誰に向かって喋ってるんだっ。


「それは他でもありません、魔族の呼吸から排出され、全身に纏っている瘴気ですが、それ自体は炭素化合物が複雑に結合したモノで、毒性は無いんです」

「えーっ!」

「まさかーーっ!」

 演出の都合上、条件反射的に驚いてしまった師弟であったが、実はこの世界では解明されてなかった新事実であった事を、ピピンもヤンも知らない。


「たった今、イメージではっきり浮かびました――要するに僕たちが日頃吸っている空気の一部と、根本的にはそんな変わらないんですね」

「でも……あんな紫色の気体って見たことないし、僕たちが触ると、皮膚がただれますよね?」

 またも演出の都合上、ヤンが的確な質問を仕掛けてくる。インテリツッコミの面目躍如だ。






 相変わらずセージは、ピピンたちに尻を向けたままだ。

 真っ直ぐ突っ立ったまま、短い腕をカッコ良く振り回しながら、蕩々と解説する。

「考えてもみて下さい――地上に放たれた瘴気はしばらくソコに留まっていますが、徐々に分解されて無毒化されてるでしょ? では、瘴気の毒は何処に行ったのか? そもそも毒などは存在してないんです」

「なるほどぉ」

 あっさりとヤンが納得するのは、演出の都合で以下省略。


「瘴気は、地上のあらゆる有機化合物への親和性が高く、細胞内外の受容体に付着し、イオンチャンネルによって結合分解を行うんです。つまり触れた組織は分解によって溶けてしまうので、肺や皮膚にびらんを生じるんですね」

「うんうん、なるほど」

「――肯いてるけど、ヤン、理解出来てるのか?」

「いやなんか、そうしなくちゃいけないらしいんです」


「ええっと――物が腐ってるように見えるのも、実際には分解されてるだけなんですか?」

「さすがヤン、その通りです。僕らにとっては、反応時の色がソレっぽいから、腐っていくように見えるんですね」

 セージがあっち向いたまま、大仰にヤンを指差す――他人を指差すって、あまり行儀良くないぞ。


「そうして分解された瘴気化合物がどうして優秀な堆肥になるか、なんですが――その化合物が、土壌を豊かにする微生物の餌になる、って事はご存知でしたか?」

「いや、ご存知では、なかかったな」

 せっかくの台詞なのに、噛んでしまうピピン。


「そして、瘴気が無毒な炭素化合物の集合体であるという事実が、まさにピピンさんの『瘴気吹き飛ばし拳』の秘密へと、繋がるのです」

「――いいからセージ、こっち来て座りなよ」

「そうそう、いつまでもアサッテ向いて喋るの、やめましょ」

「そうですね――お待たせしました」

 セージが腰掛けると、コテージ内の照明は室内灯に切り替わった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ