表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
17/31

19 セージ、ピピンの瘴気吹き飛ばし拳を体験する


「それよりさ、家なくなって、お前ら今晩からどうするつもりだよ?」

 食後に、エトーが話を蒸し返した。

 バブちゃんの放った瘴気のせいで、屋内の有機物は総て灰燼と化した。

 金属製の無機物は残っているだろうが、完全に瘴気が消えてから探すべきだろう。


 つまりテンとセージの姉弟は現時点で、家無しどころか、すってんてんの着た切り雀、正真正銘の一文無しだ。


「今晩はピピンさんたちと、客用のコテージに泊まりますよ」

 涼しい顔で、セージが応える。

「で、ピピンさんはデーモンさんたちを助けに、魔王領に行くそうですから、僕と姉さんも一緒に行きます。後の事はサイに戻ってから考えます」


「そうか、気を付けて行くんだぞ」

「はい」

「はぁーい」

 驚くほどあっさりした遣り取りの後に、四人はエトーらの家を辞去し、客用のコテージへ向かった。






 客用のコテージにもLEDライトとやらは常備されていて、室内を煌々と照らした。

「これって、こんなに使いまくって大丈夫なんですか? 燃料切れとかライトが故障したりとか――」

「ご心配なく。ニュートリノは夜でも分量は変わりませんし、電気供給は充分です。ライトも原魔石をコアにしたのが奏効して、少なくとも数年間は持ちますね」

 水回りはさすがに外だが、簡素な仕切り板を外せば潤沢な清水が蕩々と流れてくる。

 すぐ歩いて行った処に湯気が立っていて、聞けば共同の温泉風呂だそうだ。


「まあ、何と言うか……」

「まるで夢の国、だね……」

 王侯貴族のような、という言葉は、現在のド・シー王国には当て嵌まらない。

 フン崩壊からの復興途上でもあり、元々階級意識がかなり乏しいせいもあって、王国貴族もほぼ同じモノを食べ、ほぼ同じ生活をしている。


 快適そのもののコテージは、ふたり掛けのソファがふたつに簡易テーブル、ベッドふたつ。

「ま、みんなで一緒に寝れば、問題はないかあ」

「いや、このソファ、背もたれを倒せばベッドになるんですよ。ほら」

 セージが実演してみせ、ピピンとヤンの口がまたもやあんぐりする。

「何とも、はや……」

「驚く事ばかり、ですねえ」

 ピピンもやってみたが、背もたれの移動部分が軽くて、想像していたよりも操作が簡単だった。中が空洞の、軽合金のパイプで骨組みを作ってあるそうだ。






 ひと息ついたところで、セージが話を切り出した。

「ピピンさん、お疲れのところ申し訳ないんですが――『瘴気吹き飛ばし拳』て今、打てますか?」

「ん? ああ、集中するだけの普通の正拳突きだから、全然出来るけど」


「ならばぜひっ、打ってみてくれませんか? 物理エネルギーが何故あんな簡単に、しかも100%に近い形で電荷エネルギーに変換され、あれほどの大規模な連鎖を惹起させるのか、どうしても知りたいんですっ」

 お目々キラーン状態で、身を乗り出してまくし立てるセージだったが、相変わらず彼以外には意味不明な言葉の連鎖であった。


 セージの熱意に押される形で瘴気吹き飛ばし拳を披露する事になった、ピピン。

「いいのか? セージに直接打っちゃって」

「はい、是非。直接体験して、間近で観察したいんです」


「それでは遠慮なく」

「いつでもどうぞ」

 仁王立ちになったセージと向かい合わせに立ったピピンが正拳の構えを取り、気合を込める。

「はあっ――――」


「とりゃああーーーーーーーっ!!」


 ピピンがセージに突きを放った瞬間、ノーダメージの筈なのに、セージの髪がサッと逆立ち、ふんわりと下りてきた。

「ほーーーーーっ」

 セージが両肩をすっくと上げ、そして下ろし、長い吐息を吐く。


「見えた…………かな……」


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ