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12 勇者一行はサイで如何に過ごし、如何なる旅路を辿ったか


「そう言えばおふた方は、勇者たちを助けるって言ってたな? 勇者たちに何があった?」

 エトーの言葉に、ふたりはあんぐり開けてた口を慌てて結び、可能な限り顔を引き締めた。

「そうそう、実は――」


 思い返せば、二年前。

 およそ勇者らしくない、勇者たち三人であった。

 勇者の出門デーモン 鯖吐サバトに、同じく勇者の左丹サタン 辺琉ヘル、そしてあんちゃんは職業もあんちゃんだった。


 黒いぴっちりした装束に身を固め、あちこちから棘が飛び出ている。

 デーモンとサタンは、ツンツンと染め固めた髪に白塗りのおどろおどろしい化粧を絶やさず、『ぎたあ』と『べえす』をベベベン掻き鳴らしながら、地獄がどうのとか、悪魔がこうのとか叫んでいた。

 あんちゃんはロングヘアで物静かな男だったが、二本の棒っこを持つと人が変わって、あちこち叩きまくって暴れ回った。


 しかし普段の彼らは非常に礼儀正しい好青年だったので、伝説とは全然違うが、最近の勇者とはそういうモノかと、誰もが思っていた。


「音楽で世界を変えられたら、嬉しいですね」

 そう話すデーモンの化粧の下から、はにかむような素顔が垣間見えた。


 そうしてフンの人々に見送られながら、勇者一行は魔王退治へと向かった。

「どいつもこいつも、地獄行きだぁっ!!」

「世界を滅亡、させてやるぜぇぇぇっ!!」

 とか、叫びながら――実際に一年後、フンは滅亡しかけたので、シャレになってなかった。






「そうか――連中、魔王にとっ捕まっちまったのか……カッコは変だったけど、気持ちの良い奴らだったよな」

「ええ、面白い楽器を持ってましたわ。髪型も化粧も少々浮世離れしていましたが」

 勇者たちはヘロヘロになりながら山道を越えて、サイまでやって来た。

 野草採りのお婆さんたちに引き摺られながらの到着で『いい若えモンが何てザマだ』状態だったらしい。


 慣れない冒険ですっかりイカれてしまった勇者たちの命、『ぎたあ』と『べえす』は、ハーフエルフのオルヴァが修理してくれた。

「デーモンさんが太陽電池を持ってて、ですね――」

 また分からない単語が出てきたが、要するに電気を貯められる装置のようだ。

 解説すると、腕時計に付いていた太陽電池に、セージは着目した。


 ちょうど発電所のプロトタイプが出来てた時期でもあり、セージは太陽電池の容量を広げ、トレヴォが作った『あんぷ』と『すぴいかあ』に繋げた。

 あんちゃんは電気を必要としなかったが、代わりに『かほん』という打楽器を、エトーに作ってもらった。



 勇者、復活。



 異世界に来てから初めて『ぎたあ』と『べえす』は本来の音を取り戻し、あんちゃんは狂ったように『かほん』を叩きまくる。

 勇者たちは感動と感謝のあまり、涙に咽びながら声を詰まらせ、それでも力の限り歌い続ける。


“一生解けない呪いをゥ 授けてやるぜっ、地獄に堕ちぃろォォォォォォッ!!!”


 静かな山間のサイの村は、喧噪と狂乱のるつぼと化した。






 かくてサイの村で装備のパワーアップを果たした勇者一行は、意気揚々と魔王討伐の旅に赴いた、と言う。

「面白いと思ったのが、例えば龍の髭とかユニコーンの角とか、僕らの言うレアアイテム――実は姉さんがしょっちゅう拾って来るんですが――そういうのを勇者さんの世界では、工場とかで作っちゃうんですね。多分、化学結合の技術が、かなりのレベルに達しているんじゃないか、と」


 セージの話が止まらない。

 ピピンたち、置いてけぼり。

「サタンさんが、向こうの世界で物理を勉強されてたので、凄い情報交換が出来ました。サタンさんにとっては、こっちの世界では自然界で、軽合金や半導体が入手可能なことの方が、驚きだったようです」


「へえ……」

「ほぉ……」

 これ以上の言葉が出て来ないが、ピピンが慌てて話を繋いだ。

「それでね。魔王領に行くのに、テンとセージの力を借りたいんだけど――」


「はい。一緒に行きましょう」

 事も無げにセージがにっこり笑った。


「僕はこっちが忙しいんであまり行かないんですが、姉さんは結構、魔王さんのとこまで遊びに行ってる筈ですよ」

『――えっ??』

 狐につままれたような顔をするピピンとヤン。

 サイに来てからというもの、思いがけない話が多すぎる。


「ええっと……魔王領までは北の山をぐるっと回って、ここから三ヶ月はかかりますよね……」

 少なくとも、テンがふらっと遊びに行って、帰って来られるような距離では無い。

「近道があるんですよ。詳しくは僕らの家でお話ししましょう――ええと、姉さんはどこ行ったかな……」


 探してみるとテンは、何故か地面にぽっかり空いた穴に頭を突っ込んで、ジタバタしていた。

 引っ張り出してみると、空いた穴から温泉がチューと噴き出してきた。


カホンというのはペルーで生まれた打楽器で、木で出来た四角い箱の形状をしています。

座ってあちこち叩くと、叩く場所によって響きが異なり、バスドラム、スネアドラム、シンバルなどの音色を出す事が可能。

充分ドラムの代わりになるので、フラメンコの伴奏に使ったり、ストリートミュージシャンが重宝しています。

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