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11 “過去の約束”

そろそろ冬眠しないと_(:3」∠)_


 あれから少しだけ考えをめぐらせた結果。

 都市に入るには、身分証が必要。身分証を作るには、お金がかかる。お金を稼ぐ為に、都市で仕事をしたい。都市に入るには、身分証が必要。

 という感じで、最速スコアも出せるんじゃないかと思う程の、高速堂々巡どうどうめぐりツアーになってしまった。……あれ? んでる?

 いや、待てよ。別に最初から都市に入らなくても、入る時に身分証が必要ない村とかで、どうにかお金を稼ぐとか出来ないだろうか? 

 となると、今度は村を探して……。


「……嬢ちゃん、金持ってねぇのか? すげぇ困った顔してるぜ? まぁ、“ここで会ったのも、女神様の御導おみちびき”って言うしな。俺たちに協力してくれる礼に、都市に入るまで面倒見てや――「ハンクス! それ! それ良い考え! 君そうしなよ! もし都市についても宿とかでお金もかかるし、落ち着くまでは私が面倒見てあげる!」


 自分では気付かなかったが、困った顔をしていたらしく、巨躯な男がありがたい提案をしてくれそうだった。……してくれそうだったのだが、仲間の一人が話に割り込んで言葉を続けた。

 割り込んできた小柄な女性は、男の提案を肯定しグイグイすすめてくるが、何となく危険な感じが……。

 敵対心みたいな嫌な感じはしなかったが、窪みから出た時からずっと俺を見ていた小柄な女性。今もかなり近くで話し掛けて来るから、どうして良いか分からない。

 でも、無一文で都市にも入れない俺としては、この提案自体は正直大変助かる。都市に入った後に野宿とかいろいろ怖いし、この清流に戻ってくるのも距離がありすぎる。

 でも……。


「あの、それは大変助かるのでありがたいんですが、協力といっても聞かれた事を話すだけですし……。何か別に渡せる物も持ってないので……。そこまでお世話になるのは……」


「――っ! ハンクスッ! ハンクスッ! この子、めっちゃいい子! あと、可愛いっ! 最初見た時から可愛いと思ってたけど、遠慮しながらの上目遣いとか、なに? 計算? いや、天然っぽい! しかも、最初警戒心剥き出しだったのに、もう警戒心薄くなって、ちょろ可愛いんd「落ち着こうか、プルティア。話が進まない。ハンクスも話が脱線しすぎ。心配なのは俺も同意だが、今は依頼中だ」


「どうでも良いけど、早く話を進めてくれない? こんな所で武器を手放してお喋りなんて、お茶会に来てる訳じゃないんだけど?」


「おっと! すまねぇ! たしかに、そうだわな! じゃぁ、改めて自己紹介だな」


 確かに本題どころか、最初に言っていた自己紹介すらしていなかったな。

 それに、あの魔法職っぽいお姉さんの言う通り、魔物? の居る森でずっと武器を置いたままは悪い気がしてきた。罪悪感がニョキニョキしてきたよ。


「あの……。皆さんが俺に危害を加える気がないと分かったので、武器は持ってもらって大丈夫です。気を使って頂いて、すいませんでした」


 罪悪感にうながされて特に何も考えず、確かに魔物の居る森で武器を手放すのは不安だよな、という納得からそう言ったんだけど。

 言った途端に、魔法職っぽいお姉さんにジッと見られた。真面目な顔でジッと見られると、なんか落ち着かない。俺、何か変な事でも言ったか?


「……あなた、そんな簡単に警戒心を解かない様にしなさい。容姿の良い少女が一人で居るなんて、それこそ都市に居ても危ないんだから、もっと警戒心を強く持った方が良いわ。それと、都市に着いたら私から離れない事。良いわね?」


「――クエリアッ!? ダメッ! あの子はアタシがお世話するの!」

 

 あれ? 武器持って良いよって言ったら、何故かしかられた。しかも、都市まで一緒に行動するのは、あのお姉さんの中では確定しているらしい。

 クールな感じが強かったが、これが噂に聞くクーデレってヤツか? 詳しくは知らんけど。


 そんな事を思っている間に、みんな武器を装備し始める。それと同時に自己紹介も始めてくれた。

 

「はっはっはっ! クエリアにまで気に入られるたぁ、大した嬢ちゃんだ! じゃぁ、やっとこさ自己紹介だな。俺はハンクス。さっきも見せた通りC級冒険者だ。今はこの大盾と片手剣の前衛だな」


 一番最初に自己紹介されたのは、鋭い眼光の巨躯な男で、ちょくちょく名前が出てたから覚えやすかったハンクスさん。

 スキンヘッドで顔中傷だらけで、肌は他の人より少し浅黒くて、二メートルは有るんじゃないかって位大きい。鋭かった眼光は元々の目つきも有るみたいで、俗にいう強面こわもてだけど、何て言うか雰囲気が面倒見の良い兄貴みたいな感じ?

 かなりがっしりした重装備で、シンプルな片手剣と武骨で大きい盾でタンクの役割みたいだな。背中に刀幅が広い大きな剣もあるけど、あれも使うのか? 

 

「はいっ! 次、アタシ! アタシはプルティア! 同じくC級冒険者で、双剣がメインのアタッカーだよっ! にしし!」


 次に、ずっと俺の事を見ていた小柄な女性。プルティアさんはなぜか俺に興味津々みたいで、大きい瞳でランランと俺を見つめている。

 ダークグリーンのショートヘアーで、体形は小柄でスラッとしていて、俺より身長がすこし高いくらい。笑うと八重歯が覗く、元気の良い女子大生みたいな印象。

 運動用のピチッとしたロングTシャツの様なタートルネックにショートパンツで、胸当てやらの最低限の軽防具。

 武器は腰に飾り気のない少し湾曲をした双剣で、胸元に少し大きめのナイフを装備している。

 一番目を引くのは、タートルネックから覗く、ほほまである傷。タートルネックは傷を少しでも隠すためかな?


「クエリアよ。C級」


 ……え? 終わり? 


「首を傾げるとか、あなた狙ってるの? はぁ、魔法でのバックアタッカーで、火と風の二属性持ちよ。それと、魔法職ではあるけれど、ごろつき程度なら追い払える位には接近戦も出来るから、都市では安心しなさい」


 遠回しに守ってあげる的な事を言ってくるとか、クエリアさんこそクーデレを狙ってやってませんか? 多分この人面倒臭そうにしながらも、面倒見が良いお姉さんタイプだ。

 ダークグリーンのロングヘアで、ダルそうな切れ長の瞳。身長はプルティアさんより、大体十センチくらい高い。面倒臭がりだけど、仕事が出来る女上司みたいな印象。

 武器は先端に手を握った位の大きさのクリスタルみたいなのが付いていて、その石を蛇が搦め取って咥えている装飾がされている杖を持っている。装飾といっても全然派手じゃなく、アンティークみたいな感じの長めの杖。

 服装は全体的に黒と紫で魔法職のイメージみたいな感じなんだけど、動き易い様になのかロングスカートにスリットが大胆に入っている。

 あと、ウィンドウで『二属性 火 風』って調べてみたら、結構珍しいみたい。俺が言うのもなんだけど。


「最後は俺だね。俺はイラル。皆と同じくC級冒険者。このダークグリーンの髪で気付いただろうけど、皆トゥシーイの出身。それで、その四人のパーティー“過去の約束”の一応リーダー。今はギルドのクエストで、この森の異変の調査中。あぁ、使用武器は槍で、中距離で指示を出す役割」

 

 おお、なんか自己紹介って感じ。物腰も柔らかそうだし、他の人に失礼かもだけど常識人っぽい。

 その……、イラルさんは、襟足を三つ編みにしている。身長はハンクスさんよりは低いけど、それでも十分大きい。んー、たぶん百八十センチくらいかな? 

 武器は、えーと、無駄な装飾が無い槍を持ってて、腰にロングソード。装備は、プルティアさんよりもしっかりしている軽装備。

 ……えーっと。


「わかるよ。他の奴より特徴が無いって言いたいんだろ? よく言われるよ……」


「……そんな事は。あの……」


 はい! 思ってました! すいません! 気まずい空気になってしまった。どうしよう。

 ハンクスさんもプルティアさんも、笑ってないでどうにかしてください。あと、クエリアさん、楽しそうにイラルさんに追い打ちしてる笑顔が怖いです。

 こうなったら、話を変えるしかない。


「えっと、じゃぁ、俺の自己紹介ですね。名前はユウ。ユウ・ベルトゥーリです。……」


 あれ? 俺の自己紹介ってどうすんの? 正直に『最近転生してきました、テヘッ』、……激しくダメな気がする。

 つーか、能力とかも言うの? チートですって? いやいや、それこそ駄目な気がする。


「どうした、嬢ちゃん?」


「もう! ハンクスっ! 嬢ちゃんじゃなくて、ユウちゃん! あと、かさないで!」


「……ふーん。皆少しここに居て。あなた――えっと、ユウは私とこっちに来なさい」


 俺が自己紹介で言葉が詰まってしまったので、ハンクスさん達が不思議そうに見てくる。そんな中クエリアさんが突然手を引いてきて、みんなから離れた場所に連れていかれる。


「これくらいの距離があれば、人間離れしたハンクスの耳にも届かないでしょう。……まぁ、こんな所に一人でいる時点で思ってたけど、家名も持ってるみたいだし、あなた訳ありね。言いにくい事が有るのなら、相談に乗るわよ? 勿論、言いたくないのなら無理には聞かないし、相談された場合でも他言されたく無い事なら誰にも言わないわ。ただ、相談するかどうかは、あなたが決めなさい。人に流されないで、あなたの意志で」


 何このクエリアさん!? 厳しい言い方だけど全然急かしてこないし、さっきからずっと俺の肩に手を置てしゃがんだまま、目線をさげてくれている。やっぱり面倒見の良いお姉さんタイプだった! 

 だけど、ハンクスさんもだったけど、クエリアさんも俺の事子供扱いしているのが微妙に納得いかない。そんなに今の顔は子供っぽいのだろうか?

 そんな事を考える振りをして、問題から目をらしてはみたものの、……結局ここで誤魔化しても後でバレた時に大変な思いする位なら、今相談して置いた方が良いかな? 

 それに、あまり考えたくないけれど仮に罠だったとしても、仲良くなってから裏切られるよりは、知り合ったばかりの今の方が傷付かないだろうし。


「あの……。お言葉に甘えて、相談してもいいですか?」


「……そう。なら、相談に乗るわ。落ち着いて話せる様に、準備をしましょう。一度イラル達に、どこか離れた場所で野営して来いって伝えてくるわ」


「……はい、わかりました」


 ……男としてめちゃくちゃ情けない様な気がしないでもないが、今はそこには目をつぶろう。困ってる時に、男だとか女だからとか関係ないよな! うん!

 それに何故か姉っぽい雰囲気の人には逆らえない様な気がする。……きっと気のせいだ。


 そうやって自分の男としての自尊心の為に言い訳していると、いつの間にか皆の所に戻っていた。


「イラルとハンクス。それにプルティア。あなた達、今日だけ離れた場所で野営してきて頂戴」


「……おう! クエリアの頼みならしゃぁねぇな。ただし! なんかあったら、直ぐに俺らを呼べ。それが条件だ」


「ハンクス。一応リーダーは俺なんだが? はぁ、俺の意見もハンクスと一緒」


「ずるいっ! アタシは一緒に居たい! アタシもその子と沢山おしゃべりしたい! ……けど、クエリアのお願いなら分かった。だけど! もしも、アタシが居ても良くなったらすぐに呼んで!? あと、さりげなくユウちゃんがクエリアの服掴んでるのが羨ましいぃ!!」


 ほぁ。クエリアさんは理由も何も言わず、一方的にどっか行けって伝えたのに、皆何も聞かずに準備しだしたよ。多分、皆がお互いを信頼しあってるんだろう。

 今も野宿組が持っていく道具や、緊急時の連絡手段の確認もしつつ、テキパキと荷物を分けていっている。

 あと、プルティアさんが最後に言っていたのは、さっきと同様に気のせいだ。気にするな。


 そんなやり取りを見て感心している内に、もうすでに準備を終えて移動を始める三人。その三人を見送るクエリアさんと俺。

 さて、これからどう俺の相談をクエリアさんにするべきか、頭を切り替えて考えなければ。




ありがたい事に報告をいただき、誤字修正しました!

その事について、後書きでは長くなってしまうので、活動報告に投稿しております。


話は変わりますが、初めて経験するというのは、どんな事でもドキドキしますね。

それが刺激になったのか、以前より物事が楽しく感じられる様になった気がします。

その後、ルンルン気分でいつも飲んでる紅茶を買いにコンビニに行ったら、売り切れてました。

とてもしょんぼりしました。

どうやら、楽しく感じていたのは錯覚だったみたいです。


さて、話も無事にスベッた事ですし、最後に。


ここまで目を通してくださった、心優しい皆様に感謝を。


紬 いと

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