出会い
『ご入学おめでとうございます』
桜満開の季節には見飽きたと言っていい
文字が堂々と佇む校門に向かって俺は歩く
周りにも今年入学の生徒がぞろぞろいる。
この学校は私立桜坂高校
今日が入学式である。
学力的には平均的な学校で
男子は基本的にブレザーを着用している。
そして俺は今一人 圧倒的一人
これだけの人数が周りに歩く中で
俺は一人だ。
しかも基本的に外見は平均程度の俺は
なんかこいつリアルに友達いない感が
出まくってる。
中学の頃は友達がいないと言う
訳では無かった。
ふとあの時を思い出す。
いや、思い出させられたと言うべきか、
あの時もそうだった
俺は希望に避けられてたんだ
『チッ』
吐き捨てるような舌打ちと共に足元の小石を蹴り飛ばす。
『おいおい真也く〜ん、一人でそんな事してたら完全に変な目で見られるよ』
厄介な奴に見られてたか。
こいつは同じ中学だった八乙女 日向だが
調子乗りのいわゆるチャラ男だ
『何、嫌な事でもあったの?』
なんだこいつ?
こいつとは同じ中学だが
こんなに近い距離で
話すような仲では無かった。
『まぁ色々ある』
『ふーん、たそがれちゃってー』
なんだ、本当になんなんだ?
もしかしてあれか、あの
『元々の中学でそんなに仲がいいわけでも無かったのに進学してそいつと一緒になった時に友達がそいつしかいないからそいつと仲良くなっちゃう』
の準備ですか?
ならやめて下さい、遠慮します。
ヘラヘラと笑いながら八乙女は続ける
『もしかして〜、まだあの軽音部の事、引きずってる?』
その瞬間、桜の花びらが目の前に落ちて来たと同時に胸をえぐり取られた様な感覚が走る
『辞めてくれ、その話は』
その言葉が感情から出た言葉なのかは分からないが高速で口から逃げ出した
『お、おう、ごめん、なんかその、悪りぃな』
何かを察したのか八乙女はすぐさま謝罪し
俺のそばを離れる。
『はぁ〜高校デビュー失敗しそうな気がして来た』
不安を胸に抱え俺は入学式会場である、
体育館へと足を運ぶ。
『新入生代表挨拶 新入生代表 梅波 日菜』
『はい!』
俺の周りにいる男子達は予想通りざわつき出す。
(あの子スッゲェ可愛いくね)
(それな)(ゲラゲラ)
まぁ確かに盛り上がる理由も分かる
黒髪ロングに整った顔立ちそして
透き通る様な白い肌
恐らく俺も初見だったら惚れていた。
だが、俺はあいつを知っている。
幼い頃ピアノをやっていた俺は
小学生ピアノコンクールの際出会ったことが
あったからだ。
数々の賞を受賞し、将来は有望であろうと
言われ、彼女が出るコンクールは必ず彼女が金賞をさらって行くと恐れられていた
"天才ピアニスト 梅波 日菜"
だが、彼女は何故か中学で
ピアノをやめたと聞いた、あれだけの天才が何故だとは思っていたが…
こんな所で再開するとは。
入学式が終わり自分のクラスに移動する。
早速自己紹介を行う様だ。
『はぁ、ぼっちにはきついな』
そもそも中学ではぼっちではない微妙なポジションだったのでよりきつい
ここで失敗すると基本的にそのイメージが
最低一年間はつきまとう、この自己紹介は正直高校生活の中で大学受験にも匹敵するレベルに大事だ。
心配を背に俺の番が回ってくる
『こ、こんにちは、南中学校から来ました1年A組の都城 真也です。よろしくお願いします。』
普通に小さな拍手が起こる
うん、まぁ、まずまずのリアクションだ
これはこれからの生活にかかってるな、
だがそんな不安はすぐに吹き飛ぶ事になる
『じゃあ次!』
担任の呼びかけに応じ
後ろの生徒が俺の右を通って前に出て行く
ふと香るコスモスの香り
ショートカットの髪に見事に白い肌
その顔立ちは高校生にしてはあまりにも未熟
そしてその生徒が明らかに目を引く理由それは
肩にかけたギターケース
『こんにちは!南中学校から来ました!
1年A組、黒木 葉音 です!よろしく!』
そのセリフとともに彼女はギターケースから
ギターを取り出す。
Morrisの綺麗なアコースティックギターだ。
『聞いて下さい、"桜満開"』
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午後3時、自己紹介を終えて、ホームルームを終え、生徒たちは帰路に着く。
ふとあの自己紹介を思い出す。
あのギターから奏でられた音は雑音にも引けを取らない音であった。
コード進行もバラバラで
バラバラのリズム、ストロークすらまともには弾けていなかった。
ただただ、透き通った歌声だけが響いた。
元々あいつは同じ中学で
吹奏楽だった女である。
ただそのテクニックの
無さは折り紙つきだった。
『声は綺麗だったな、バンドというよりあれはpops歌手向きだ』
だがの自信のある目、声、本当に
バンドを目指していそうだな
ふとそんな事を思いながら校門を出て
帰路に向かおうとしていた時
後ろから駆け足の様な音が聞こえた。
桜の花びらが舞う道に
ふと走るコスモスの香り
水玉の様に透き通った声が
俺の耳に刺さり震える
『突然ですが!一緒にバンド組みましょ!』
ほらな、って
は?