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NEW GAME!!  作者: すくると
2/2

転移後の世界


余韻とかそんなのがあると思っていたがそんなものはなかったのだ。


瞬きをしたら目の前は真っ闇に包まれついでに意識も失った。


次第にそれぞれの感覚が戻って来たのかまずは嗅覚から戻ってき様子だった。


「スンスン...全く知らない匂いだ...」


次は聴覚。


「風が吹く音が聞こえる」


次は痛覚。


「特にどこか痛いわけでも無かった」


次は味覚。


「少し鉄の味がする」


次は触覚。


「どうやら地面にうつ伏せになっているようだ、あと寒い」


どうにかこうにか体を起こすことが出来、辺りを見渡した。


ふと気づく、そう服を着ているかどうかだったが、そこはちゃんと着ていた。

分厚い黒のコートに分厚い茶色のズボンを。


「んー倉庫を無理やり住処にしてるって感じかぁ」


何に使われていたのか分からないが天井は高く広々としていた。

近くには背もたれ付きの木製の椅子に少し大きめの木製の机があり机上にはランタンが一つ置かれており

明かりは消えており辺りは真っ暗なためランタンに明かりを灯そうと手に取るが中身は空っぽだった。

「はぁ」とため息をついた後にふと頭をあることがよぎった。


「そういえばそれなりに強いってことは周辺を見る力とかあるのかな...」


ワンチャンスあるかもしれない、そう思い目を閉じ一言放った。


「千里眼<上空偵察>!!!」


するとどうでしょう、物の見事に外の周辺情報が頭に入ってくるではありませんか。


「あーそっちね」


周辺はこの建物以外になく一面雪で覆われておりまるで世界が終わってしまったかのような

状況だった。


ただ、ある場所だけ点が無数に集まっており意識を集中させそこにフォーカスを合わせると

一つの点が無数の点に追いかけられてるのが見えた。


「あーいきなりそういうの始まる感じか...」


転移早々不穏な感じしかしない。


「瞬間移動とか使えたりして...」


ワンチャンスあるかもしれない!そう思い一言放った、ついでに美少女魔法使いっぽい仕草もしてみた。


「くるくるくるりん!私を任意の場所へと移動させよー!テレポーテーション<空間移動>!」


するとどうでしょう、吹雪が体を叩き目の前から大群が押し寄せてくる景色へと変わりました。


「まじ?てか寒すぎだろ!」


先頭を走っているのが多分追われてる者であることはすぐに分かった、しかしその影はこちらに気づき

助けを求めるかのように向かって来ていた。


「おーい!ちょっと手を貸してくれー!」


こんな吹雪の中で相手が何者か分からないのに良くもまぁ助けを乞うたな。


「でも、ちょうどいい!この剣を使う絶好のチャンス!」


次第に助けを呼んだ一匹が目の前まで迫りついには目前までに来た。


「はぁ、はぁ、はぁ、良かったぁ、いい人っぽい!」


体全体で息をしており相当必死になって逃げてきたのかと思うと一体何が追いかけて来てるのか。


「あれは、魔獣、だけど、大丈夫??」


厚手の茶色のコートを身の纏、長めの銃に少し大きめの剣を携えた二足歩行の狼は遂にその場に座りこんでしまった。


「はぁ、無理!あいつらマジで足が速いっての!」


「とりあえずカード渡しとくね!」


ほいっと渡されのでこちらもほいっとカードを渡した。


「いや~カードの交換なんて何時ぶりかなぁ」


「俺なんて初めて交換したぞ!」


「はっはっはっ!」


「はははは!」


お互いにカードの内容を確認した。


―プロフカード

名前:アーサー

職業:銃剣士

ステータス:非常に優秀。

種別:獣人(狼)



「狼!?」

「人間!?」



「お前、まさかあの群れの長なんじゃねーの!」


「貴様こそ!悪性の人間ではないのか!!」


そんな事をしているうちに魔獣の大群は目の前まで迫り来ていた。


「とりあえず、お互いに敵意はないみたいだしここは共同戦線といこう!」


「そうだな、ひとまず数を減らそう!剣を抜け!人間!」


「おう!じゃぁお披露目と行こうか!我が聖剣!!」


右腰にぶら下げた剣の柄をここぞとばかりに自信有り気に持ち勢いよく引き抜く。


が...


「あれ」


意に反して鞘から刀剣は現れずむしろ微動だにしなかった。


「何をしてる!早く戦闘態勢に入れ!」


「わ、わかってるよ!!」


鞘から一ミリも動かない。

それは筋力の問題でも、技量の問題でも無いまた違う何かがその剣から漂っていた。


「どうした!早くしろ!」


「あのー」


「なんだ!!」


「抜けないです」


間抜け過ぎた答えに一瞬時が止まった感じがした、そして彼は頭を抱えた。


「貧弱者めー!!」


「逃げるぞ!狼さんよ!」


まさかの剣が抜けない事故に合い共闘するなどの思考は微塵に砕け、再び逃げることになった。


「おい!人間!どうするんだこの状況!魔法!魔法使えるか!」


「あぁ!使える!ご注文をどうぞ!」


「なんだそれ...とりあえずなんでもいいから使え!」


狼は必至過ぎてもはや信用していいのかという時間すら惜しいと判断した。


走っていた足を止め、追ってきている魔獣の大群に向き直り仁王立ちのごとく立ちはだかって見せ、今だ落ち着かない鼓動を深呼吸で落ち着かせた。


「全体魔法で数を減らしさえすれば後は私が何とかする!」


「わかった!」


今回は攻撃魔法だし大丈夫かな...実はサポート専門とかだったりして。


ワンチャンスあるかもしれない!そう思い一言放った、ついでに右手を前に突き出してそれっぽい格好もしてみた。


「イクスプロージョン<天地を揺るがす神の怒り>!!」


辺りは静寂に包まれた。


「なんちって」


「お、おい人間...」


狼の顔は恐怖に近い何かをしていた。

そう何かを悟ったかのような獣の本能らしきものが。


「いやー悪かった!流石にそんな凄い魔法使える訳ないよな!スマンスm」


アーサーに向き直り両手を合わせてぺこぺこと腰を折って謝っていたが。


「逃げろ!!」


「はい?」


その意味を理解するのにあまりにも時間が足りなかった、瞬間。


耳の鼓膜が破壊されそうになる位の爆音が襲い、背中から次第に熱を持ちそれは止まることは知らず次第に焼ける感触が襲い、そして耐え難い風が体を浮かせ吹き飛ばした。


「ぬわぁぁぁぁぁぁ」


「ぐぅぅぅぅぅぅぅ」


するとどうでしょう、対象となった魔獣の群れは全てが消え去り範囲内のエリアは焦土と化していました。


「と、とりあえず...」


「あ、あぁそうだな...とりあえず帰ろう」


深い雪に埋もれた二人は体を起こし空を見上げた。


空は雲一つない快晴の空になっておりいまだ吹くそよ風が二人の頬を撫でた。



### ###


体面の椅子に座る灰色の狼は片手に持った銀のコップを机に置き「で、だ」と前置き。


「なぜ人間がここに?」


青く透き通った鋭く綺麗な目は好奇心に溢れこちらの答えを待っている。

それは背後に揺れる尻尾にも表れていた。


「なぜもなにも気づいたらここに居た、それだけの事だ」


目の前の狼は少し期待が外れたかのような表情を見せてくれた。

その後、「ふむ」と腕を組み考え始めた。


「私の記憶では'人間種'は審判の日に大半を失い今や絶滅したとかで」


その言葉を聞いて冷汗が出てきた、それは人間が絶滅したと言う言葉に反応したのか

審判の日と言う意味不明な言葉に反応したのか、それは目の前の獣が顔色一つ変えずあたかも常識的で

当たり前のように話した事に対して反応したのかは今の自分には分からなかった。


「今さらっと凄いこと言ったぞ、お前」


目の前の狼は机に置いてある銀のコップを手に取り中の液体を一気に飲み干した。


「あくまでも私の記憶での話であってその後の事はわからない」


静寂が訪れた、少し大きめの倉庫みたいな建物は大きな鉄の門が二つそれ以外は窓一つない所だ

しかしながら何処からか隙間風が吹いているのか少し寒い。

明かりは机に置いてあるランタンが一つ、お互いの顔を照らしている、どうやって光っているのかは

今の自分には理解できない。


「まぁ君からは悪性のオーラが出てないから敵では無いと判断はしている所だが」


なんだか聞きなれた単語が狼の口から出てきたもんだから前世の自分に感謝した。


「そりゃどうも」


狼は言葉こそ信じているがその透き通った蒼眼は疑心そのものだった。

こちらがジッと見ているのが察せられたのか「ところで」と――


「君の剣は設計ミスか何かなのかな?とんだ鈍らのようだね」


馬鹿にされたが反論が出来ない。


「そ、そんな事言われてもなぁ!」


実際、使えない剣などただの鉄の塊である。


「とりあえず見せてくれる?その剣」


そう狼に言われ右腰にぶら下げた剣を外し机に出した。


「ふむ、形は悪くないむしろ洗礼されてると言っても過言では無い...何かのレプリカか?」


狼は机に置かれたそれをジッと見ただけで評価をし始めた。

さらに手を伸ばしその剣を持ち上げようとした瞬間。


「――!!」


机に置かれた剣を今にも持ち上げようとしている狼はその状態のまま動かなくなってしまった。

と、言うより体は上下には動いていたのだが。


「どうした??」


もはや何かのコントかと思った。


「君は...」


その表情は焦りなのか恐怖なのか、はたまた両方なのかそんな顔をしていた。


「こんなにも重い物をぶら下げ走っていたのか...」


頭の中にはハテナマークが大量に出てきた。

なぜなら'重い'はずが無いからである。


「もしかしてお前の方が貧弱なんじゃね?その剣めちゃくちゃ軽いぜ?」


「そんな訳がない!私はあらゆる武器に...特に剣に限っては聖剣すらも装備ができる<ソードマスター>なのだぞ!!」


ガタっと椅子から立ち上がりこちらを睨んでき、その表情は口惜しさを滲み出していた。


「そ、そんな事言われても俺は右も左も分かんない初心者だし...」


狼は「すまない」と言い椅子に座った。


「その剣が何かは今は分からない...そんな事より」


「そんな事より?」


「まずは自己紹介から始めないか?」


その質問はもっと早くにするべきだった。

カードは交換したもののお互いの素性はわからず終いで話はとんとん拍子に進んでいたのだから。














次回

「自己紹介」

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