超優秀な部長さんは噂通りの敏腕みたいだけど、その容姿も尋常じゃなかった、ユウリがなんだか焦ってるのが結構痛快な感じがするな、僕としては
僕とユウリは大講義室(と言っても定員50人ほど)の中で、文芸部のスペースを探した。手前では自炊部なる意味不明の集団がレトルトカレー節約レシピの研究をしている。お粗末極まりない。その隣では映像文化研究部が単にスマホでアニメの動画を見ているだけだ。全員バラバラで。
さっきの男女学生に長谷さんのことも聞いたけれど、そんな奴知らないからハナイに訊け、と言われたので仕方なくこの混沌とした各部共用の部室に来たのだ。ちなみに、文学部=文芸部という状態らしく、もはや最高学府としての体をなしていないんじゃなかろうかと他人事ながら心配になる。
「あの、長谷さんか花井さんて・・・」
「こんにちは‼︎」
「こ、こんにちは‼︎」
「私が花井です。キミらは、何?」
「え、と高校生ですけど、長谷さんにお話が・・・」
「違うよ。私が訊いたのは、キミらの名前と年齢」
「はい。春日ヒロオです。15です」
「丹羽ユウリです。15です」
「若いわねえ。いいわねえ。で、長谷ちゃんに用事って?」
「長谷さんの投稿小説のことで、お伝えしたいことが」
「お。彼女の小説読んでくれてたんだ。ガトリングコミッティーのことでしょ」
「はい。その連作はもちろん読んだんですけど、次の『タイシとシナリ』についてなんです」
「わ、びっくり。そのためにわざわざ?」
びっくりしたのは僕らの方だった。
この花井部長はとんでもない美人だった。いや、見た目の若々しさもものすごく、美少女、と言い切れるぐらいの可憐さだ。ユウリは一瞬唖然としていたけれども、立て直して応対を続けた。
「長谷さんに、タイシとシナリについてアドバイスしたいんです」
「ふーん。何か事情がありそうね。でも残念。長谷ちゃんは風邪でダウンだわ」
「え」
「それに彼女、『タイシとシナリ』はもう九割がた書き進んでるよ」
「もうそんなに・・・」
「キミら、どっから来たの?」
今度は僕が応対する。
「鷹井市です」
「わ。最果ての地・・・でもないけど遠いね。いつまでいられるの?」
「明日までです。学校にも欠席届出して来てるんでそれ以上は」
「別に義務教育じゃないからキミらの責任で問題ないと思うけど、お金がきついでしょ。おーい、ヤベちゃん」
呼ばれて男子学生がpcから顔を上げる。
「ヤベちゃん、この子ら長谷ちゃんの寮に連れてってあげてよ、見舞いがてらさ」
「すんません、部長。俺この後バイト入ってるんですよ」
「あら、そう。じゃあ、私が行くしかないか」
「え、でも部長。この後marusanの編集長と打ち合わせが入ってるんじゃないですか?」
「いいよ。こっちの方が大事だし、Marusan はアポ無しの癖にいきなりもう向かってるって一方的に電話切ったんだから。ちょっと断りのメールだけ送るね。・・・よっと送信。じゃ、2人とも、行こうか」