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最終話 涙っていろんな思いで流れるんだなって気付いた僕は男としてちょっとは成長したのかな

アキバ見物に来た僕とユウリが見物される側になるとは思ってなかった。

スマホを片手に僕らの動画を撮影する群衆オーディエンスが道路に溢れかえっている。


まるでマフィア映画そのままの動画がネットに配信されているのだろう。右拳をタオルでぐるぐる巻きにして救急車に乗り込むガトリング。彼に着き慕ってきた4人のいじめられっ子マフィアは手錠をかけられ連行される。

そして、僕、ユウリ、は救急隊の検査を受けていた。

ユウリはなんとか無傷っぽい。そして僕は。


「大丈夫そうですね」


全くわけがわからなかった。どう考えても砕かれたと思っていた右拳は何ともなっていない。これもギガの魔法なのか。


ガトリングを見送ろうとミツキさんが出てくると群衆のざわめきがどよめきに変わった。スマホの数が倍増する。


『あのだよ、魔法少女タトゥーのスミザリーンと対峙して勝ったのは』

『すげー、ほんとのアニメ映画みたいじゃん』


そうか。もはや実写映画ではなくアニメ映画というのがリアルな比喩となっているんだな。確かにミツキさんの容姿ルックスと佇まいは、三次元では決して表現できないような可憐さと儚さの両方を持ち合わせていた。それにしてももうさっきからの出来事の全貌を見ず知らずの群衆オーディエンスが詳細に把握してることがちょっと不快な感じがする。


「おわ。ツイートすげーわ‼︎」


チェリッシュの店長が嬉々としている。集客倍増確定だからだろう。


花井部長が隅で泣いていた。なぜか他のメイドさん達も泣いている。

そしてユウリはというと、なんと僕の胸におでこをピタッっとくっつけて泣いているのだ。


「ヒロオ、ヒロオ・・・」


僕は彼女の頭頂部をぽふぽふとよしよししてあげた。

しかし、どうしようか。一応欠席届は出してるけれども、この騒ぎの詳細全部が学校に知れたとしたら厳重注意とか停学とかで済むのだろうか。

まあいいや。とりあえず今夜はユウリと2人で美味しいものでも食べて明日はお上りさんらしくスカイツリーかなんか高い所にても登って現実逃避してから帰ろう。

凛とした表情でスマホに晒されていたミツキさんが僕に気づき、歩み寄ってきた。視線が僕らに集中する。


「ヒロオさん」


そして、顔を僕の耳元に近づけて囁いた。


「泣いても、いいですか?」


僕はこくっ、と頷く。


「はい。僕が許します」


そういった途端、ミツキさんは、えぐっと大きくしゃくりあげた。そして、


「あーん‼︎」


と大きな声で泣いた。ずっと、ずっと、泣いていた。





おしまい

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