『メイドの職責』っていう言葉がかっこよくて僕はミツキさんの容姿を改めて確認した、彼女はさっき目の奥に見えた満月のようにそしてその名前の通りに内面の美しさが外面にもほとばしっていた
「あなた様は私が怖くないのでありますか? 私は日本語で言うところのいわゆる反社会的勢力でございますよ」
ガトリングが言葉の柔らかさとは反対に、冷めきった酷い表情でミツキさんに問いかける。
「わたしは怖いという感覚をある時から持たないようになりました」
「ほう。それはいつの時点からのことなのでございますか?」
「小学校5年生の時からです。ちょうどクラス全員からのいじめに遭い始めた時からです」
心なしか、ガトリングの表情が動いた。彼は、再度ミツキさんに問う。
「私は貴女様のことがひどく気にかかって参りましたのでございます。できれば客として貴女様とお話しできることを懇願いたします。ではございますが、日本では反社会的勢力への利益供与や商業上の取引等が厳しく厳禁されているのが法律上の条文にあったのではないかと存じ申しております」
「わたしは世のため人のために働くということは主義ではありません。ですが、メイドという職業に対しては誇りを持っております。ガトリング様がお客様なのであれば、わたしはメイドとしての職責を果たすのみです。法律上のことは店長に一任いたします」
そう言ってミツキさんは、きっ、と冷えた視線をさっきからノーコメントの店長に送る。まだ30代独身男性の店長は、やはりノーコメントのまま、うんうんとうなづく。
ガトリングがテーブルに着き、その脇を4人の部下が直立不動で固める中、ミツキさんの接客が始まった。
「ガトリング様、わたしも座らせていただいてよろしいでしょうか」
「もちろんです。貴女様のお話をお聞きするには私の正面に着席していただくのが非常に好都合でありますから、是非にそう願い上げますところです」
「では失礼します」
そう言ってミツキさんはメイドの長いスカートを折りたたんで見るからに礼儀折り目正しい所作を連続させる。ガトリングは満足そうにしている。
「では、ガトリング様のお望みのことをいたしましょう」
「ではまず先ほどの貴女様の質問にお答えするところから始めさせていただくことといたします。私が魔法少女ギガのタトゥーをしている理由でございます」
「はい」
ふうっ、とガトリングが1つ深い息を吐く。意外な動作だった。そして彼は語り始めた。