魔法少女とマフィアの関係性ってどんなだろうと真面目に深刻に考えざるを得ない雰囲気だったよ、だって自分が殺されちゃうかもしれないんだから
「あ、お客様、お待ちください‼︎」
店の入り口がざわついている。
店に入ってきたのはノーネクタイのダークスーツを着込んだ欧米人の男5人。いやでも目立つ。なんだろう、この既視感は。
「あ‼︎」
「なに、ユウリ⁈」
「ガトリングだよ‼︎」
「あ‼︎」
そうだ。さっき村木社長に見せてもらったネット画像の人物だ。彼は流暢で、それでいて違和感アリアリの日本語を発し始めた。
「ムラキ社長がご来店とお聞きしました。どちらにおいでになっていらっしゃいますのでありましょうか?」
村木社長はちらっと花井部長を見る。部長がうん、と頷くとようやく名乗った。
「私が村木です」
ガトリングがゆっくりと社長に歩み寄る。
「ムラキさん。私は大変迷惑しておるのでございます。あなた様の会社が出版した『マフィアの愛したアニメ』。あれは素晴らしい作品だと思うのでございますが、私の写真を掲載したのは予想外の出来事でありました」
「す、すみません。ただ、お顔にはぼかしを入れてご本人とは分からないように配慮しました」
「手の甲は写っていますよね」
「は、はい」
「タトゥーが写っているのでございます」
「は・・・はい・・・」
「つまりわたしが申し上げたいと思慮しておりましたのは」
「は・・・」
「魔法少女ギガのタトゥーが、写り込んでおるということでございます。その意味を理解していただくことはご無理なことでしょうか」
「え、えーと」
ガトリングがテーブルを力任せに蹴り飛ばした。その場の全員の動きが一瞬で止まる。磨き上げられて鏡面のような彼の靴に一筋、傷がついた。
ガトリングはマフィアらしい重厚な、けれども凶暴さに満ちた声で怒鳴った。
「世界広しといえど、魔法少女ギガのタトゥーをしたマフィアは、わたし1人という厳然たる事実でございますっ‼︎」
社長の隣で花井部長が震えていた。
花井部長ですら平常心ではいられないガトリングというマフィアに、僕は恐怖を抱いた。
でも、違った。
彼女はプププ、と吹き出しそうになるのを必死で堪えているだけだった。