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勇者が世界を救っても  作者: なるる
首都セネーブ
7/18

旅立ち

捕まったミーナを見ても、ミーナが悪魔だったという事実からか、僕はすぐに助けに行くことができなかった。


衛兵たちがミーナを連れて行こうとする。


キーーーーーーーーン


突如マイクがなった。


「いや、衛兵のみなさん。その子はそこで押さえていた抱いて結構です。」


マイクを握っていたのは、ユングだった。奴は嬉しそうに笑いながら喋り始める。


「残虐非道な魔物には罰が必要です。彼女の目の前で公開処刑を実行しましょう。彼女もそのあとで、この場で殺します。」


僕は耳を疑った。正気ではない。勇者の、いや人のすることではない。それでも民衆は歓声をあげる。拍手さえ起こっていた。みんなの笑顔がゆがんで醜く見える。みんな悪魔を憎んでいる。それは僕も変わらなかった。だがこれは…


動こうとするが、足が動かない。魔物だという葛藤が心の中で渦巻く。


「それでは、刑を実行してもらいましょう。」


マイクは司会の手に渡り、すっかり落ち着きを取り戻した司会が、処刑を進行する。ユングは魔法を唱えようと杖を構え、小さな声で詠唱を始める。


「……………」


詠唱と同時に、杖からかなりの大きさの炎が吹き出す。その炎は一直線にステージ上の魔物たちに向かって行く。


「あっ…」


手を伸ばすが間に合わない。


彼らの命は一瞬で消し飛んだ。


拍手が起こる。


ユングは何事もなかったかのように、ステージを降りるとミーナに向かって杖を構えた。ミーナを抑えていた衛兵達が離れるが、ミーナは動かない。


ミーナの顔がちらりと見える。


彼女は泣いていた。


カチンっ…


何が壊れる音が僕中で響く。心の中の葛藤がすべて消し飛ぶ。

今弱いものが誰かなんてのは分かっている。


「おとうさん…」


ミーナが呟く…声がかすれている。


「悪魔に救いなんてないよ。君たちは存在そのものが悪だ。」


ユングが詠唱を行う。


「ははっ、死んじゃえ。」


ユングは笑う。


カキン


その飛んできた斬撃を僕は腰にかけていた剣で走りこみながら弾く。一瞬で剣は粉々になり、両腕に痛みが走る。


ぐっ…


だがそこで止まらずに、ミーナの元へ走りよる。突然のことにあたりが静まり返る。


「リーク…?」


ミーナが抱きついて、泣きじゃくる。


「お前誰だ?」


ユングがイラつくように、吐き捨てる。


答えるような肩書きもない。答える代わりに僕はユングを睨みつけた。


「ふん。まぁ、いいや。悪魔を庇ったならそれはそれで君も同罪だ。」


ユングはもう一度杖を構える。躊躇なく打つつもりだ。目はギラついている。


もうだめだ…結局僕は弱い人を…困っている人を救えない…


少しでもと思いミーナを庇う。


その時…


足元に魔法陣が浮かび上がる。


ステージの上では先ほどの致死量を超えた魔法で、口の封じが解けたミーナの父親が、こちらを見て笑っていた。


「ミーナ、生きるんだ。」


一瞬の間に、目の前の景色は吹き飛んだ。

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