丘
僕とミーナは丘へ上がる一本道を歩いていた。ミーナは僕より少し先を歩いている。
『あれで良かったのか?』
ガルダ鞘から少しだけ、刀身を出してが聞いてくる。
昨日、ユングを倒した後。僕はユングやカリナを含めて、その場にいた兵士、そして村のみんなの記憶を書き換えた。僕は村には戻ってきてはおらず、ユングの軍は僕達を見つけてはいない。
「良かったんだよ。もう、あの村は僕の居ていい場所じゃなくなってたんだよ。」
綺麗に晴れた空を見上げる。昔の村での思い出が蘇る。だが、昔は昔。僕が今あそこの村に居ては迷惑しかかけない。
『まぁ、お前がいいってんならいいか。心は読まないでやるよ。』
ガルダはそう言うと、鞘に収まった。
「リークーーー。」
丘の上ででミーナが手を振っている。次の目的地はミーナの故郷の近くだ。故郷の村自体は英雄達に破壊されてしまったが、村のみんなは近くの森にばらばらになったらしい。ミーナの父親は他のみんなを逃して、自分とその仲間達だけが捕まってしまったそうだ。
僕は軽く小走りでミーナのところまで行く。
「リーク見て、村があんなに小さく見えるよ。」
ミーナが僕の後ろを指差す。
僕は丘の上から後ろを振り向く。僕の育った。大切な人たちの村がそこにはポツンと小さくあった。
「いこう。ミーナ。僕の居場所はもう無いんだよ。」
僕はそう言って、歩き出す。
そんな僕の手をミーナがつかむ。
「私と一緒に行くんでしょう。そこがリークの今の居場所だよ。ちゃんとあるよ。」
ミーナの綺麗な瞳が僕を捉える。不意に泣きたくなって、顔を背ける。
「うん。ありがとうミーナ。」
僕とミーナは一緒に歩き出す。丘を下るとだんだんと村が見えなくなる。
さようなら。僕の…
僕は少し振り返ると、心の中でつぶやく。
ガルダが優しげに紫色を光らしたように見えた。