救出
湖に沿って陣の裏に回ると、あっさりとテントの横まで来ることができた。本陣とは対照的に明かりが少なく薄暗い。見張りは二人だけでどんちゃん騒ぎに混ざることができずに、テントの前でつまらなそうに雑談をしている。
「ガルダ頼んだよ。」
僕はそう小声で呟くと、二人に向かって走っていく。これでも勇者育成学校に通っていた身だ。足音を消すくらいはできる。ガルダが紫色に光ると同時に僕は、一人二人と順番に剣を降り、意識を奪う。
『ひゅ〜、意外とうまいじゃん。人の記憶ってのは美化されることが多いからお前さんが本当にこんなに上手いとはな。安心安心。』
ガルダの声は人には聞こえないが、少し静かにして欲しかった。
テントの幕を開け中に入る。中には煩雑と物が置かれその奥に縄で包まれた、ミーナを見つけることができた。
目が合う…
ミーナの瞳が大きく見開かれると同時に涙が溢れる。
「ミーナ。」
詠唱ができないようにと口を縄で縛られているが、ミーナも僕の名前を呼んだように見えた。
近づいて縄を解く。
ギュッ……
ミーナが抱きついてくる。
「ごめんなさい。リーク。私のせいで。ごめんなさい。」
泣いている。僕はミーナの頭を撫でながら優しく言う。
「ごめんね、ミーナ。守るって決めたのに。迎えに来たよ。さぁ、行こう。」
ミーナは手で目をこすって涙を拭い小さくうなづいた。
僕はミーナの手を引いて、テントから出る。大丈夫だ。まだ気付かれてはないない。
僕はそのまま湖畔に沿って村への道の方へ戻ろうとする。どんちゃん騒ぎのせいだろうか。これも簡単に成功しすぐに抜けきることができた。
「ミーナ。ここを出て他に僕たちの生きることのできる場所を探そう。ね?でも、僕はその前に一旦村でしなくちゃいけないことがあるんだ。」
ミーナは黙って頷く。もう泣いてはいなかった。
村に向かって走り出そうとしたその時…
「きゃあぁぁぁぁぁぁあーっ」
一抹の悲鳴がユングの本陣から響く。
本陣の方を振り返ると…
「私の陣に忍び込むなんてなかなか勇気あるじゃん。」
ユングが誰かを捕まえている。
「話してっ…」
足を忍ばせつつ、陣のほうへもどると顔が見えてくる。
黒く、長い髪が揺れている。片手をユングに捕まれ逃げることがないない…それは、
カリナだった…