魔剣
扉が閉まるとさっきまでの騒ぎが嘘だったようにシーンと静まり返る。ドアの外からは複数人の大人の話す声が聞こえる。
僕を自責の念が襲う。
「ごめん…ごめんね…ミーナ……」
脱出するにはドアの反対側についている窓しかないが、高すぎて手は届かない。部屋は以前誰かが使っていたのか、荷物が散らばっていた。
少し動くようになった痛む手と足を動かして何かないか周りを漁る。ミーナのことを考えるとこんなの痛み何でもなんでもなかった。
「何かロープか、大きな箱…」
探して手を伸ばしていると、少し長い木箱が手に触れた。
「窓には届かないな…」
そうやってどけようとすると…
『ちょっと、ちょっと、俺様をどこにやる気だよ。』
どこからか声が聞こえる。
あたりを見回すが誰もいない。首を傾げつつ持っていた箱を置こうとすると、
『いや、だから置くなって。手元みて手元。』
今度ははっきりと箱の中から声が聞こえる。よく見ると蓋の隙間から紫色の光が漏れている。
「箱が喋った……」
僕が呆然と箱を見ていると
『やっと、気づいたかー。でも、箱が喋ってるわけじゃないさ。その中だよ。ほら開けなって。』
言われた通りに開けようとするが鍵がかかっていてあかない。
「なんだか、知らないけど開かないよ。」
箱がガタガタ揺れる。
『バカだな。お前は。ポケットの中に鍵があるだろう。』
そう言われて今朝ミーナから鍵を渡されたことを思い出す。何故か鍵は吸い込まれるように鍵穴にぴったりとはまる。少しムッとしながら箱を開けると中からは紫色で半透明の刀身を持った。どこか厳かな1本の剣がでてきた。
『ふぅ……やっとでれたー。俺はガルダってんだよ。よろしく。』
剣がひとりでに話している。魔法か何かかな…
「僕はリーク……えーと、なんで剣が話してるの?」
『誰が剣は喋ってはいけないって決めたんだよ。って、まあ確かに武器が喋れば不気味だな。俺は魔剣だよ。魔物の種類の一つさ。まぁ、自分で言うのもなんだがちょーレアだけどな。』
聞いたことはあった。魔物には上級、下級の区別があり、また上級の中でも目撃数などからA. S. SS. SSSに分類される。確か魔剣は…SSだった気が…
『あほ。バカ。俺はSSSだっつーの。人間の考えた分類だろしっかり覚えてろ。』
叱られた。
「魔物の分類は勉強したはずなのに…って、今僕口に出してた?」
僕は今の言葉を口には出してなかったはずだ。
『俺は記憶と意識を司る魔剣なの。人の思ってることなんて簡単に読めるさ。特にお前は魔法による抵抗が一切感じられない。とっても読みやすいぞー。』
魔法適正が0の事を言っているのだろうか。こんな時にも困らせられるなんて…
『ふむふむ、そんなことが。お前も災難だな。』
そんなことを考えているうちに僕の記憶は勝手に魔剣に読まれていた。
「やめてよ、勝手に記憶を読むの。」
『おいおい、怒るなよ。お詫びと、俺を起こしてくれたお礼に手伝ってやるからよ。お前の思い人助けるのさ。』
勝手に話を進められる。
「ちょっと待ってよ。今それができないから困ってるんじゃないか。君魔剣だかなんだが知らないけど、そんな刀身で壁に穴でも開けれるっていうの?」
少しムッとしながら、ガルダに向かって話す。
『無理だな。そもそも俺は何も切れないよ。』
えっ…切れない剣ってなんの意味が…
『俺はこの刀身でものを切ることでその人の記憶をいじるんだよ。言ったろ記憶と意識を司ってるって。あー、もうお前質問ばっかりで長い。助けるんだろ?可能性あるんだから俺信じろよ。大切だぞ信じるって。』
言われて我に帰る。僕は早くミーナを助けないといけない。
「わかったよ、じゃあまず僕は何をすればいいの?」
僕が聞くとガルダは少し愉快そうな雰囲気で
『まずはそうだなー。俺を自分の胸に刺せ。』