水風船
朝、ぱちゃん、という音で目が覚めた。
まだ夢の中かとうとうとしていると外から再びぱちゃん。
カーテンを開けて窓の外を見ると、道路には割れたゴムの水風船と水たまり。
殺人事件か身投げかと不謹慎にも心躍らせていると、目の端をアスファルトに向かって勢いよく落ちる水風船の姿。
空を見上げると、お向かいさんの屋根でカラス天狗の子供がけたけたと笑っている。
犯人はあいつか。
ポンプを使って風船を作り、水爆弾をせっせと作っている。
通勤中のサラリーマンが散らばるカラフルなゴムの欠片を訝しげに眺めている。
その頭に水色の風船がぶつかり水が飛び散った。
突然のことに驚くサラリーマンを馬鹿にしたように笑うカラス天狗。
しかしサラリーマンも負けてはいない。胸元に手を差し入れるとCDを取り出しカラス天狗に光を当てる。あまりの眩しさに天狗の子は山へと飛び去って行った。
誰にも遊ばれずに割れていった彼らの無念を誰が知るだろう。
色鮮やかな水風船の残骸が祭りの後のような寂しさを漂わせる。
少し感慨にふけった後、もう一眠りした。
水玉模様やのっぺりとした色の夢を見た。