そら豆バイト
今日のバイトはそら豆剥きだった。
茹で上がったさやを少し冷ましてから、つーっと筋を剥くのだ。すると、中から綺麗な黄緑色のそら豆が顔を出す。
時折、赤や黄色、青に紫などの変わり種も交じっているのでそれは取り分ける。
前回やったネジ猿の部品の時のように、ベルトコンベアに急かされることなく自分のペースで出来るので、私にはとても合っていて楽しかった。
軽くさやを押すと、ちゅるんと出てくるそら豆が何とも愛おしい。
茹で上がった豆の青臭い匂いの中、だんだん自分が豆を剥くために生まれてきたのではないかと錯覚しそうになる。
むしろ、私の遠い親戚に豆がいるのではないかと思うくらい相性がいい。
一緒に豆を剥いていたおばさんから、あなたスジがいいわね、と褒められた。調子に乗って、豆だけに、と付け足したら愛想笑いをされたのだけが反省点だ。
今日の剥きそら豆が何に使われるかは教えて貰えなかった。
ただ、色違いのものはジェリービーンズにするらしい。どうやって作るのかは企業秘密だそうだ。
家に帰って手を洗おうとして、指先が黄緑色になっているのに気付いた。
豆の色がうつったのだろうが爪がやけに柔らかくて、このまま豆になってしまうかと不安になる。
急いで百科事典で調べると、長時間に渡り豆を触り続けるとこうなるらしい。
一日で元に戻るというのでほっと一安心。
豆のマニキュアは、緑の春めいた匂いがした。