図書館
今日は、借りていた本を返すために図書館へ行った。
やけに気温が高いせいか、冷房を求める人で平日でもそこそこの賑わいだ。
本を返却し、次の獲物を求めて書架の間を回遊する。
しばらく歩き回っていると、司書さんが床に屈みこんで何かしている。
コンタクトレンズでも落としたのかと様子を見ていると、ピンセットを使って床に零れ落ちた文字を慎重に拾い集めているのだ。傍らに置かれた本のページには、虫食いのごとくちらほらと言葉が抜けてしまっていた。
「すみません、もうすぐ終わりますんで」
私に向かって司書さんが申し訳なさそうに言うので、いえいえお構いなくと別の書架へ移動する。
この図書館もずいぶん古いからな。
本は読まれることなく本棚に入れっぱなしにすると、稀に言葉が剥がれ落ちることがある。そんな時は落ちた文字を付け直すか、新たにハンコや手で書き込むしかないのだ。
高校で図書委員に入っていたころ、誰も読まないような古い本を引っ張り出しては文字を書き入れる作業をしたのが懐かしい。
特に、空白部分に間違えた文字を書き込んでしまったときなどは本が更に怒ってしまい、ばらばらと他の文字まで落とすので非常に疲れる仕事だった。
それでも、雪の結晶のように脆く儚い文字を、崩さないようにピンセットでつまみ上げるのは少しロマンチックに思えて好きだった。
出来るだけ、文字が抜け落ちないような新しい本を選んで帰宅する。




