血液占い
最近、駅前に血液占いが出来たらしい。母が言うには当たると評判なのだそうだ。
気になったので、本を買いに行ったついでに覘いてみる。
駅ビルの暗い通路の一角に、血液占いはあった。
占い、というそっけない看板とガラス戸越しに見える薄暗い店内。
怪しいと思いながら眺めていると、ぼんやりとした人影と目があってしまった。
気まずくなり仕方なく店に入る。
占い師は口元から尖った牙を覗かせた優しげなご婦人だった。
「最近は簡単に血が手に入らなくてね」
ああ。やはり吸血鬼か。
「それじゃあ占いますよ。ちょっとチクッとしますからね」
首元を噛まれるのかとドキドキしていると、左腕をゴムで縛られ、浮き出た血管に軽く歯を当てられた。ご婦人はほんの少し血を舐めると、脱脂綿で傷を拭き絆創膏を貼ってくれた。
「あなた、ちょっと油をとりすぎね。それに運動不足だわ。毎日ウォーキングをしたらいいんじゃないかしら」
占いというよりも健康診断のようだ。
「御代は血を頂いたから結構よ。ただ、ヴァンパイア感染を防ぐために玉ねぎやニンニクを食べてね」
釈然としないまま占い屋を後にすると、隣の喫茶店のおすすめメニューがペペロンチーノだった。
このまま吸血鬼になるのも面白いかと思ったが、夜しか出歩けないのは不便なので素直に忠告に従うことにする。
「いらっしゃいませ」
店に入るとさっきのご婦人がいた。
いい商売してやがる。
ペペロンチーノは美味しかった。今度は血まみれミートボールを食べに来ようと思う。