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家族ゲーム 番外編  作者: 祐月
こどもの日
8/9

幸せの記憶

久しぶりの投稿です。

現在、本編を鋭意(?)執筆中ですが、時間がかかるためちょっと肩ならしもかねて番外編から手をつけてみることにしました。

 まだ潤が産まれて間もない頃が俺の中にある一番古い兄の記憶だ。

 小学校に上がる前で、弟が産まれたことが嬉しかったが、両親の関心をさらった潤に少しだけ嫉妬していたのを覚えている。

 確かそれはこどもの日で、母がお祝いのちらし寿司を作ってくれ、ちょうど食べる準備ができた頃だったと思う。

 両親は朝からなぜかそわそわと緊張した様子で、俺が不満気にしていることなど気づきもしていなかった。



 ドアベルが鳴る音に、そわそわしていた母がびくりと反応し、少し戸惑ってからゆっくりと玄関に向かう。

 玄関から聞こえる声と人の入って来る気配に、少しだけ興奮していたのも覚えている。

 リビングのドアから入って来たのは、俺より小さな子どもで、茶色の髪と大きな茶色の瞳で珍しそうにきょろきょろしていた。


「にーちゃ、おととは?」

 舌ったらずに話す年少の少年に驚きながら、見た先には少年をそのまま大きくしたような男が母の隣に立っていた。

「玲、それはお前の弟じゃないよ。」

「おととちがう?」

 キラキラさせていた目が一気に潤んで行くのを呆然と見つめながら、俺はこの少年とそれを見下ろす男から目が離せなかった。

 次の瞬間、破裂するように大きな声で泣き出した少年とその声に驚いて泣き出した潤の泣き声の二重奏に俺は耳を塞いだ。


 男は大泣きしている少年を抱き上げ、手慣れた様子であやしている。少年も、男の首にしがみつき、何がそんなに哀しいのか大きな声で泣いている。

 母は泣き出した潤を抱き上げてあやし、父は2人の様子をただ眺めていた。


「玲、お前が大きな声を出すから潤が泣いてしまっただろう?」

「そうだ!

 それに潤はお前の弟じゃなくて俺の弟だ!」

 2人を見上げてびしっと言った俺に、男は笑みを浮かべる。

 俺にはそれがバカにしているように見えて、一層不機嫌になった。


 グシグシと泣いていた少年が男の首元から顔を上げ、俺を見下ろす。

 泣いてぐしゃぐしゃになった顔だが、それでもかわいいと思ってしまった自分が少しだけ恥ずかしかった。


「おとと?」

 首を傾げて俺に言う少年に、俺の弟だと宣言し直した俺に、男は苦笑を浮かべ、腕に抱いていた少年を下ろすと一緒にしゃがみ込み俺に視線を合わせた。

「一馬、玲はお前の弟かって聞きたいだけで、もう自分の弟だとは思っていないよ。」


 思いがけず言われた言葉と、男の優しい笑みに恥ずかしくなり顔を背けると、ぺたぺたと足音がして、小さな手が俺の顔に触れた。


「かずま?

 ぼくあき。」

 たどたどしい自己紹介に、応える俺に男が微笑みかけ、少年から手を離すと、潤をあやしていた両親へと近づき、母に抱かれた潤んを覗き込む。

 泣いていたはずの潤が男の顔を見ると泣き止み、きゃっきゃと声を上げ笑い出したことにその時の俺は気づくこともなく、目の前の可愛い存在に釘付けだった。


 気づいた時には、潤は男に抱かれ、その隣で母が嬉しそうに微笑んでいた。

 そして、嬉しそうな母を見つめる父も嬉しそうで、俺も嬉しくなった。


「悠、どう?

 あなたの新しい弟は?」

 母の言葉に驚いた俺をめざとく見つけると、男は微笑んだ。

「一馬が産まれた時とそっくりです。

 残念ながら私にはあまり似ていませんがね。」

 あわてて玲の手を引いて、母の元に駆け寄った俺に母は言った。

「一馬、お前は覚えていないかもしれないけれど、お前のお兄さんの悠よ。」


 その後のことは記憶の中にあまり残っていない。

 だが、その後、かなりの頻度で兄と会う様になり、必然的にくっついてくる玲と先を争って兄に遊んでもらおうとしたことは何となく覚えている。

 実際、事情がちゃんと理解できる様になるまでは、なぜ兄が一緒に住んでいないのか、そして、玲は俺の弟ではないのかわからず、何度もダダをこねては母が兄を呼んでくれた。


 俺たちと一緒にいなくても、兄は兄で玲達と幸せに過ごしていることに少しの安堵と寂しさを覚えていた。



「カズ兄〜

 お茶が入ったから早く下りてきて!」

 

 昔のことを思い出していた俺の意識を、現実に呼び戻す声は潤とは数日違いで産まれた翼だ。

 その後ろにはあの日と同じ様に優しい目をした兄と、相変わらずかわいい玲、潤に慎がいるのだろう。


 ここ数年、玲はずいぶんと生意気に俺に対抗意識を向ける様になり、子どもの頃のようにはいられないが、あいかわらず俺にとって一番かわいい弟分だ。


 あれから両親が亡くなり、兄に引き取られたが、その時はこんなに温かい家族になれるとは思っていなかった。

 でも、あの日初めての兄の記憶そのままに、兄は弟達に接し、あの日の玲にした様に渉に接している。


 声に出して言うことは無いが、あれからずっと変わらず、兄は俺の自慢の兄で、弟達は可愛い弟だ。

 あの日のように、両親と兄とが揃うことはもう無いが、こどもの日になると初めて兄と玲と会ったことを15年経った今でも思い出す。

 あの日、温かく笑っていた両親と一緒に。


 それはとても幸せな優しい記憶。

ちょっとしんみりした話になってしまいましたが、一馬にとっての兄弟、家族とはどんなものなのか少しでも書けていたらと思います。

そし実は、一馬にとって一番可愛い弟は玲なんです。成長するにつれ、ライバル意識も大きくなりますが、初めてできた弟なので。。。

そして、普段は年少者達をかわいがり、一馬と玲には厳しい悠も実は2人が可愛くて仕方が無いのです。。。


微妙に設定でていますが、本編で上手く設定が描けて行けたらと思います。

一応、プチ設定としては、呼ばれてリビングに現れた一馬が最初に見るのは翼と潤の柏餅の取り合いで、高校生にもなってと一馬の雷が落ちるのです。

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