第9話 リクエストされたシフォンケーキ
よろしくお願いいたします。
「さっき何か驚いているようでしたが、どうされましたか?」
キッチンに戻るとカウンターに座っていたシサに声をかけられた。
「コロン様が、さっき買っていかれたシフォンケーキをもう食べてしまわれたのよ」
「えぇ〜!! さっきのあの大きさの二切れをですか?」
「ええ」
「その前にここで、一切れ食べていかれましたよね?」
「そうね」
「……すごいですね。私もさっき、いくらでも食べれちゃいそうだと言いましたけど、食べたらやっぱりお腹いっぱいになったので、一切れで十分ですね……」
「ほとんどの人はそうよね……」
シサと話しながらデイカー様の日替わりランチを準備する。
そういえば、コロン様はランチもおかわりしたいっておっしゃってたわね。
シフォンケーキを勧めてしまったからおかわりはされなかったけど。
もしかして、デイカー様が食べられているのを見たら食べたいって言われるかしら……?
そっと二人の方を見る。デイカー様とコロン様は楽しそうにお話をされているようだった。
「エルティアお嬢様、私、食べ終わったのでこちらにお二人を呼びましょうか?」
「そうね、シフォンケーキのこともあるし。カウンターの方が待ってもらうのにいいかもしれないわね」
「なんですか?シフォンケーキのことって?」
「コロン様にまたシフォンケーキを頼まれたのよ」
「えっ!! まだ食べられるんですか?」
「ううん、ここで今からまた食べられるわけじゃないわ、持ち帰りよ」
「そうですか。……うん、まあ、明日ここお休みですし、主食にされるなら必要ですよね」
シサは思い返したように納得していた。
「デイカー様のランチ、できたわ」
「あっ、じゃあお二人に移動を勧めてみますね」
「お願い」
シサがデイカー様とコロン様の座る席に行って声をかけた。
お二人がこちらへ移動してきた。
「すみません、移動していただいて」
「いや、こちらがお願いして作っていただくんだ。気にしないでくれ」
「そうら。コロンが頼んだんら」
「シフォンケーキ、リクエストしていただけるほど気に入っていただけて嬉しいです。ありがとうございます。今から作りますね」
私は改めて笑顔でお礼を言った。
「こちらこそ。よかったな、コロン」
「ありがとら」
「はい、ではお待たせしました。日替わりランチです」
シサがデイカー様に日替わりランチを配膳した。
「ありがとう。いただくとするよ」
「デイカー、この丸い物体、とても美味しいら!!」
「じゃあ、それからいただくとするよ」
……コロン様は食べたいって言わなかったわ。
私の心配は杞憂だったようだ。
コロン様の様子を見届けた後、私は急いでシフォンケーキ作りに取り掛かった。
「デイカー様とコロン様はとても仲が良さそうに見えますけど、どんなお知り合いなのでしょうか?」
私がシフォンケーキを作っている間にシサがお二人に話しかけていた。
「俺たちは一緒にパーティを組んでいる冒険者仲間だ」
「そうら。コロンは魔法使いら。デイカーは魔道具師で剣士ら」
「魔法使い! 私、魔法使いの方って初めてお会いしましたよ」
「コロン、カイヤ町から遠すぎて、魔法でここまできたら」
「えっ、魔法を使ってここにきたんですか?」
「そうら」
「やっぱりコロン、魔法使ったんだな。おかしいと思ったよ。コロンの足じゃいくら魔道具を使ってても、ここまで来るのに夜になってしまう」
「当たり前ら。遠すぎて歩いてられないら」
「私達も馬車じゃないとカイヤ町にはいけないですね」
「そうら。デイカーとは違うら」
「……もしかして、デイカー様はここまで歩きで来れるんですか?」
「ああ、魔道具の靴を履いているから短時間でここまで歩いて来れる。コロンにも渡してあるんだけどな」
「魔法使いって聞くと体力がないイメージがあります」
「それは概ね当たってるら」
「まあ、コロンは当てはまるな」
デイカー様は話しながらも食事を進めていて、もう食べ終わっていた。
「エル殿、今日の日替わりランチもとても美味しい。コロンが勧めていた丸い物体も初めて食べたが、不思議な食感でエビの味がして美味しかった」
「ありがとうございます。あれは手作りなんですよ」
「そうなのか!? それはすごい! エル殿は色んなものが作れるのだな」
「ふふっ。他にも色々な料理を作れるので、楽しみにしていてくださいね」
「あぁ。どんな料理を食べさせてもらえるのか楽しみだ」
私も今度はどんな料理を提供しようか楽しみだ。
「エル……オーナー、お二人は冒険者仲間らしいですよ」
「そうなのね。お二人はお仲間になって長いんですか?」
「まだ一年くらいかな」
デイカー様が答えた。お二人の様子を見ていると、知り合ってまだ一年のように見えない。
「もっと長い付き合いなのかと思ったわ」
「討伐に行くとすぐに帰って来れない時もあって、一緒にいる時間が長いからそう見えるのかもしれない」
「コロンはいつもデイカーにお世話になっているら」
デイカー様が兄のようにコロン様を気にかけて、とても仲が良さそうだった。
そうこうしているうちにシフォンケーキが焼けた。
また料理用の酒のボトルにできたシフォンケーキをひっくり返して刺して冷ます。
「何をしているら!?」
私がした行動を見たコロン様が驚いて声をかけてきた。
「こうやってシフォンケーキは冷まさないと萎んじゃうんです」
「面白いな」
「私も今日、初めて見た時、びっくりしましたよ」
これは知らない人が見たらびっくりするような不思議な光景なんだなぁ。
シフォンケーキがある程度冷めたので、六等分に切ったものをコロン様にお渡しする。
主食にされるのであれば六つに切るのが適当だろう。
「お待たせいたしました。シフォンケーキできましたよ」
「ありがとら」
コロン様が支払いをされて受け取った。
「エル殿、ありがとう。恩に着る」
「そういえば、デイカー様はシフォンケーキは食べられたことないんですよね?」
「ああ」
こんなにしてくれているのにデイカー様の口にはまだ入っていない。
「デイカーのおかげで焼いてもらえたようなもんら。後で少し分けるら」
「ありがとう、いただくとするよ」
デイカー様が味見されるなら七等分の方が良かったかしら……?
でもコロン様が本当にデイカー様におすそ分けされるかは微妙だ……。
「あ、お二人とも明日はここは店休日ですので」
言い忘れていたことをシサが伝えてくれた。
「店休日⁉︎ デイカー!! さっきのはなしら! デイカーにあげたら足りなくなるら!」
コロン様がその途端、すごい勢いでデイカー様に詰め寄った。
「あ、あぁ……俺は大丈夫だ。またでいい。」
コロン様の勢いに圧倒されながらデイカー様は答えていた。
やっぱり私の思った通りになり、私はお二人の会話を聞いて苦笑いしたのだった。
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