第6話 シフォンケーキは主食
よろしくお願い致します。
「はい、どうぞ〜。いらっしゃいませ」
外からシサの案内の声が聞こえてきた。どうやら早速お客様が来たようだ。
「とても美味しい味噌スープとやらがあると聞いたら〜」
「はい、ございますよ。どうぞ、まずはあちらにお座りください」
シサがお客様をカウンターに案内し、カウンターにいた私の前に座った。
座ったのは、ピンクの髪が珍しいおかっぱ頭の少年だった。
「いらっしゃいませ」
私も来店の挨拶をする。
「味噌スープをお願いするら〜」
座ると同時に、ピンクの髪のおかっぱ頭の少年はメニューも見ずに味噌スープを頼んできた。
「味噌スープは日替わりランチについてきますので、日替わりランチをご注文ですね。かしこまりました」
仕込んであった和製ポトフと味噌スープを温める。
シサにはライスを盛り付けてもらう。
器に全て盛り付けて、準備ができたところでシサに配膳を頼んだ。
「お願いね」
「はい」
いつもの通り、カウンターから直接出さずに運んでもらう。
「お待たせいたしました」
「おぉ〜これがデイカーの話してた味噌スープら〜」
和製ポトフと味噌スープをみた少年の目が輝いた。
……昨日みえたデイカー様の名前が出た。お仲間かしら?
「早速いただくら〜」
「はい、どうぞ」
ズズズ〜
……いきなり器に口をつけて味噌スープを啜っていた。豪快だ。
ゴクッ
その途端、勢いよく顔をこちらに向けた。
「う・ま・い・ら〜!! なんて美味しいのら! デイカーのいう通りだったのら〜!!」
目をキラキラと輝かせながら声を上げた。
「そうでしょう、そうでしょう!! 私もそう思いますよ!」
シサが便乗して答えた。
「ありがとうございます。和製ポトフも召し上がってみてください」
「おぉ〜こっちもあったら。いただくら」
和製ポトフを勧める。こっちも私の自信作だ。
ぱくっ
もぐもぐもぐ
味噌スープの時よりもあっという間にライスと一緒に食べ進め、完食だった。
ドンッ!
勢いよく持っていた食器を置いて、目の前にいた私に手を伸ばして、私の手を掴んできた。
「こんなの初めて食べたら!! なんて美味しいんら!このエビの味のする丸い物体!! コロン、気に入ったら。 おかわり!」
この方はコロン様とおしゃるようだ。
美味しいと言われ、おかわりまで頼まれ、とても嬉しかった。
「ありがとうございます。おかわりもいいんですけど、デザートセットでシフォンケーキと紅茶のセットメニューがあります。いかがですか?」
私はせっかくだったので、さっき作ったシフォンケーキを勧めてみた。
「シフォンケーキ? なんら?」
「ふわふわでしっとりしたケーキなんです」
「……よくわからないけど、そっちにするら」
「ありがとうございます。少々お待ちくださいね」
私はシフォンケーキを四等分に切り分け、その一切れにホイップクリームを添えた。
紅茶は侍女だったシサに淹れてもらう。シサはとても紅茶を淹れるのが上手だった。
「シフォンケーキ、準備できたわ」
「私も紅茶を淹れましたよ」
小声で申し送りながら、デザートセットができたのでシサに出してもらう。
「お待たせいたしました。デザートセットになります。どうぞ」
「ありがとら、いただくら」
コロン様が一口とは思えないほど大きくシフォンケーキを切って口に運んだ。
ぱくっ
もぐもぐもぐ
「……」
どうしたのかしら?無言だわ。
何か言って欲しいわけではないけど、さっきの反応とはすごい違いだった。
「……どうしたんでしょうかね?」
シサも同じように思ったようで、小声で聞いてきた。
「お口に合わなかったのかしら?」
「えー、そんなはずはないんじゃないですか?」
二人でコソコソ話しているとコロン様がぼそっと呟いた。
「……人は美味しすぎると何も言えなくなるって本当だったんら。これはコロンの主食にするら」
「主食?」
今、主食にするって聞こえたけど、どういうことかしら?
「そう、主食。これから毎日、毎食食べるら。残っているの、全部持って帰るら」
どうやらシフォンケーキを食事の代わりにするようだ。
持ち帰りを希望されたので、シサの分の一切れを残して全部渡すことになるのだが、お持ち帰りのことを考えてなかったので、皿に載せて袋に入れるしかない。
「ちょっといい入れ物がありませんので、皿に載せて袋に入れてお渡ししますね」
「わかったら。毎日食べるから、皿はまた買いに来た時に持ってくるら」
「はい。ありがとうございます」
私はシフォンケーキの持ち帰りの準備をした。その間にコロン様は紅茶も飲まれ、シフォンケーキも食べ終わっていた。
「美味しかったら。会計をお願いするら」
「ありがとうございます。日替わりランチが800トピーで、デザートセットが600トピー、シフォンケーキが二つで800トピーなので、全部で2200トピーになります」
シサが会計をして、私はシフォンケーキをコロン様に渡した。
「はいら〜。ありがとら」
「「ありがとうございました」」
「また明日もくるら〜」
そう言って、シフォンケーキを持って帰られた。
「面白い方でしたね〜シフォンケーキを主食にされるなんて」
「本当ね。そんなことを言う方には初めてお会いしたわ」
私達はコロン様のシフォンケーキ主食発言に驚いていた。
「シフォンケーキがどんなものか、余計気になりますね」
まだ食べたことないシサは食べたそうにしていた。
「そうそう、シサはまだ食べていなかったから、一切れ残しておいたわ」
「エルティアお嬢様、ありがとうございます!嬉しいです」
シサは全部コロン様に渡してしまったと思っていたようだ。
とても嬉しそうにしていた。
あとで食べてもらおう。
思いがけずシフォンケーキが売り切れになったので、その後は日替わりランチのみで営業する予定だったのだけど……。
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