第41話 エルティアの気持ち
よろしくお願いいたします。
「エル、大丈夫だろうか?」
「……」
私は、いきなりのアリオン王子の訪問に加えて、デイカーがラデュレラ王国の王太子だったという衝撃の事実に驚きを隠せず言葉がすぐに出なかった。
「エル?」
「ええ……。ありがとう、デイカー」
それにいつもと違う雰囲気のデイカーになんだか別人と話しているようだった。
「間に合ってよかったよ〜もう、僕はどうなることかと思ってヒヤヒヤしたよ」
「コロン頑張ったら!」
「いきなりコロンが俺の執務室に現れるから何事かと思った」
「慌ててたから、宰相まで連れてきてしまったら」
「驚きましたよ。いきなりコロン様が現れて、デイカー王太子殿下にくるように言ったと思うと、気づいたら私も一緒に移動してたので」
「申し訳ないら。ちゃんと帰すら」
「お願いしますね。でもデイカー王太子殿下にお付き合いされてる女性がいるなんて知りませんでしたね。どうりでお見合いを受けないわけですね」
「いや、エスター、その話はまた……。俺はもう少しここに残ろうと思う。コロン、エスターを戻してやってくれ」
「おや。ではあまり触れないでおきましょう。コロン様、よろしくお願いします。それでは皆様、失礼致します」
コロンと宰相は店の外へ出て、帰って行った。
「デイカーはラデュレラ王国の王太子殿下だったんですね……」
二人が出ていったあと、シサがぽつりと呟いた。
「……そうだ。言ってなくてすまなかった。冒険者をしやすいように普段からなるべく隠しているんだ」
デイカーは眉を下げて答える。
「……ううん、お互い様よ。私だって、元侯爵令嬢だって言ってなかったわ」
「僕も驚いたよ。エルが侯爵令嬢で、まさか元婚約者がこの国の王子で、突然連れ戻しにくるなんて」
クードだけでなく、私だって驚いた。
「……私も連れ戻しにくるなんて思ってもみなかったわ」
「それにあの王子、今でもエルが自分のことを大好きだと思ってるみたいで、“エルティアは僕のことが大好きだから〜“なんて言っちゃってさ」
「ですね〜それには私も呆れちゃいましたよ」
「エル……少しいいだろうか?」
「シサ、僕はそろそろ帰るね。お会計をお願い」
「わかりました〜!」
デイカーが私に声を掛けたのをみて、空気を読んだクードはそそくさと代金を支払い、シサの方はいつもはしない見送りをしに店の外へ行った。
「……エル、さっきはエルと恋仲なんて勝手に言ってしまってすまなかった。どうしても君を助けるためにああいうしかなくて」
「ううん、こちらこそ忙しい公務の途中に助けにきてくれて、ありがとう。デイカーでなければアリオン王子を追い返すことができなかったわ。本当に感謝してるわ」
デイカーがあそこまで言わないとアリオン王子から私を助けられなかっただろう。
「でも、デイカーにあそこまで言わせてしまって、立場もあるのに申し訳なかったわ」
「いや、俺はあんな風に言えて嬉しかった」
「そう……」
真剣な表情で伝えてきたデイカーを前に私はドキッとし、恥ずかしくなって、そっぽを向いた。
私の今の一番の気持ちはカフェを楽しく自由にやっていきたいと思っていることだ。でも、デイカーの気持ちが純粋に嬉しかった私はあえてそれを言わなかった。
言葉にしなかった私の想いがデイカーに伝わるように、私は再びデイカーの方を向き、しっかりと目を合わせた。
勘のいいデイカーはフッと表情を崩し、はにかんだ。
「ただいまら!」
コロンが宰相を送って戻ってきて、店の中に入ってきた。
「コロン〜待って! ダメですって〜」
後ろからシサがコロンを追いかけてきた。
「どうしたら?」
何も知らないコロンがデイカーに聞いた。
「いや、コロン、宰相を送ってくれてありがとう。俺もそろそろ戻ろう。申し訳ないが、この姿で歩いては帰れない。俺も帰してくれないか?」
「そのつもりら」
「デイカー、コロン、今日はありがとう」
私は二人に改めてお礼を言った。
「あっ、カレーの代金払ってないら」
「クードが一緒に払ってくれましたよ」
シサがコロンに教える。
「クード優しいら。じゃあ帰るら」
「ああ、コロン、よろしく頼む。エル、シサ、また来るよ」
そう言って、デイカーとコロンは移動魔法で帰っていった。
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