第36話 コーヒーの実が焙煎まで出来る魔道具
よろしくお願いいたします。
「エル、待たせた。食事が済んだから魔道具を見せよう」
食べ終わったデイカーが声を掛けてきてくれた。
「いえいえ。今すぐ食器を片付けるわね。ちょっと待ってて」
私はデイカーが食べ終わった食器を片付けて、カウンターの上を拭いた。
「魔道具、もう出してもらって大丈夫よ」
「せっかく片付けて拭いてもらったのだが、カウンターには残念ながら載らない。カウンターと四人掛けテーブルの間が空いているからそこで魔道具を出そう」
「デイカーのそのリュックから想像できないですけど、そんなに大きいんですか?」
私もシサと同じように思ったが、デイカーはこの前と同じ魔道具のリュックを持っていた。
「そうだ。今から出して見せよう」
デイカーがリュックからコーヒーの実を焙煎までできる魔道具を取り出した。
リュックから出した魔道具はすぐさま大きさが変化しカウンターと同じような大きさになった。投入口があって、ベルトコンベアになっているようだった。
「大きいな。これは場所とるね」
「店が狭くなったら」
「これはどこに置くつもりなんだ?」
クード達三人も初めて見たようだ。
「まだないんだけど、家の外に建物を建ててもらう予定なの。そこに置こうって思っているわ」
「まだ場所がないのか…それまではどこに置いておくつもりなんだ?」
フェオが心配そうに聞いてきた。
フェオは私が妹と同じ年齢だと知ってから、以前より私のことを気にかけてくれるようになった気がする。
「困ると思って、これを持ってきた」
デイカーがまたリュックから何かを取り出した。
「ここに入れておけば大丈夫だ」
手のひらサイズの小さな巾着のようだった。
「これは? これも魔道具かしら?」
「そうだ。これはさっき見せた魔道具をしまっておく収納袋だ」
「こんな小さい袋に入るんですね! 便利ですね!」
「ああ。ただし、この袋はそれしか入らない」
それでもこんな大きなものが、この小さな巾着に入るなら場所を取らないので大助かりだ。
「それとこの袋が点滅したら魔力がなくなる合図だ。充魔してくれ」
「もし、点滅しても気が付かなくて、魔力がなくなったらどうなるの?」
それはとても気になった。
「そうなったら取り出せない。取り出すには充魔しないといけない」
「そうなのね、なら良かったわ。ちゃんと忘れずに充魔するわね」
「? どういうことだ?」
「わかった〜! 魔力がなくなったら、その場でいきなり魔道具が出現したらどうしようって思ったんじゃない?」
クードの言う通りだった。私は無言で頷いた。
「そういうことか。それはないから安心してくれ」
「ええ、よかったわ」
「でもいきなり出現したらびっくりですよね!」
シサのいう通りだ。
「そうね。それは驚くわね」
「怖いら」
「そうだね、それは怖いよね〜特に夜中なんかになっちゃったらさ」
「何事かと思うだろうな」
みんな同じことを思ってくれた。
そうならない作りで本当によかった。
「じゃあ、建物ができるまではここにしまっておくわ」
「それがいい。袋の口を開けると勝手に出たり入ったりする仕組みだ」
デイカーが袋を開けたり、閉めたりして見せると魔道具も瞬時に出たり入ったりしていた。
面白い仕組みだ。
「便利ですね〜」
「デイカーは本当、天才だよ」
「俺もデイカーの作った魔道具を見るたびに、いつもそう思う」
「よく思いつくら」
本当にいつもデイカーの魔道具には感心してしまう。
「使いやすいように考えたんだ」
「ありがとう。すごく使いやすいわ」
「それなら良かった」
「それじゃあ、今から使い方を見せていこう。エル、コーヒーの実はあるか?」
「この前の残りがあるわ。でもこれはすでに焙煎までしてあって、あとは粉にするだけだわ」
「私、今からコーヒーの木で実を取ってきますよ!」
「僕も手伝うよ」
「コロンもら」
「俺も行こう」
みんなが行くなら私も行こう。
「私も一緒に行くわ」
「では、みんなで取りに行こう」
デイカーの言葉で、私達はカゴを持ってみんなでコーヒーの実を取りに行き、カゴ半分くらいの量のコーヒーの実を取って戻ってきた。
そして、採ってきた実を軽く洗った。
「今からやってみせよう。まず投入口から実を入れる。この横にスイッチが付いている。1回押すと実を取って種だけにする、2回押すと乾燥させる、3回押すと焙煎するとなる」
そう言ってデイカーが投入口から実を入れてスイッチを1回押した。
種だけになったコーヒーの実がベルトコンベアから流れてきて、端に付いてた入れ物に入った。
デイカーはその入れ物を外し、再び投入口から入れて、入れ物を戻し、スイッチを押した。
今度は乾燥した豆がベルトコンベアから流れてきた。
その後、また同じように繰り返し、コーヒー豆は綺麗に焙煎された。
「こんな感じで焙煎まで完成だ」
「楽ですね〜」
「そうね、投入口から入れてスイッチを押すだけだものね」
「簡単なのがデイカーの魔道具の売りなんだよね」
「そうら」
「他の魔道具師が作ると使い方の難しい作りのがあるもんな〜」
「俺は誰が使っても、使いやすいものを作るように心がけている」
使う側としてはデイカーの考え方はとてもありがたい。
「これでコーヒーがお店で提供できるようになるわ。ありがとう」
「でも置き場所がないと使えないよね? 建物ができるまではどうやってやるの?」
クードが聞いてきた。
「お客様がいなければ場所はなんとかなるから開店前とか、閉店後に出してやってみるわ」
それに焙煎までしておけば、ある程度保存もできるから頻繁にやらなくてもよい。
「早速粉砕してみんなで飲んでみましょう」
「やっとコーヒー飲めるら!」
「コロン、良かったな。エルにシフォンケーキもお願いしたらどう?」
クードはコロンがコーヒーと一緒にシフォンケーキを食べたがっていたのを覚えていた。
「そうするら。エル、コーヒーと一緒にシフォンケーキを食べたいら!」
「ええ、いいわよ。シフォンケーキ、みんなも食べる?」
「僕も!」
「俺もお願いする」
「俺もいただこう」
「わかったわ。みんなね」
「オーナー、私、コーヒー淹れますね」
「シサ、ありがとう。私はシフォンケーキを用意するわ」
「シサ、ちょっと待ってくれ」
「デイカー、どうしたんですか?」
「これを……」
デイカーがリュックから前世でいうコーヒードリッパーのようなものを取り出した。
「これはコーヒーを淹れる時に使うものだ。エルが漏斗に布を敷いてやっているのを見て、ちょっとやりにくそうに感じたから作ってみた。もちろんこれも魔道具だ」
そう言ってデイカーがドリッパーの横を見せてきた。
「ここに、充魔する場所がある。魔力がなくなったら、ここから充魔してくれ」
「どういう魔道具なんですか?」
「これはカップの大きさに合わせて勝手に大きさが変わる。そして、布を敷かずともそのまま粉砕した粉を入れてお湯を注げばコーヒーができる」
「それはすごく助かりますね! デイカーいつも色々ありがとうございます!」
「デイカー、色々本当にありがとう! デイカーのおかげで色々なことがやりやすくなっているわ」
私とシサからお礼を言われて、デイカーは最近よく見かける照れながらも嬉しそうな顔をした。
「デイカーはよく気がつくな」
「言われなくても勝手に気がついてくれるところがすごいよね。僕だったらそんなの全然気付かないや」
「すごいら」
三人とも口々にデイカーを褒めていた。
「みんなから褒められてしまうと恥ずかしいものだな。さっきのエルの気持ちがわかった」
「ふふっ」
ますます照れてしまっていたデイカーはなんか可愛らしかった。
「では早速、デイカーの作ってくれた漏斗を使ってコーヒーを淹れますね」
シサがお湯を沸かし、コーヒーを淹れる準備をした。
「私はシフォンケーキを用意するわ」
もうこのあとはこのままcloseにしておこうと思っているので、私とシサの分も用意して一緒に食べよう。
「……なんか入り口に人の気配がしないか?」
「……フェオも気づいたか。俺もそう思った」
「そうら?コロンは全然ら」
「僕も全然わからないよ。さすが剣士」
「俺がちょっと見てこよう」
「入り口は中から鍵が閉めてあります!」
「わかった」
そう言って、デイカーは店の入り口に行った。
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