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第29話 フェオの帰還

よろしくお願いいたします。

 大討伐から十日程経って、久しぶりにフェオが店を訪れた。


「こんにちは、今日はまだ日替わりランチって残っているかい?」


「フェオ! 久しぶりですね! はい、ありますよ。カウンターへどうぞ」


「ありがとう」


 シサがフェオを定位置であるカウンターに案内した。


「フェオ、いらっしゃい。久しぶりね、元気だったかしら? 今日の日替わりランチは海老のフリッターよ」


「エル、こんにちは。ああ、俺は元気だったよ。久しぶりの長期休暇で妹と一緒に過ごしていたんだ。海老のフリッター?よくわからないけど、それをお願いするよ」


「そうそう、それはデイカー達から聞いていたわ。以前もチーズケーキをお土産に買っていってくれてたし、仲がいいのね。海老のフリッターはふわっとした衣がついた揚げ物よ。日替わりランチね、わかったわ」


「ああ、実はもう俺の両親は亡くなっていて、その時に爵位を返納しているんだ。それで今は妹と二人暮らしなんだが、お金を稼ぐために冒険者になって、あちこち行くようになって、休みの日しか帰ることができてないんだ」


「そうだったのね……。じゃあ普段は妹は一人で住んでいるの?」

 

「そうだ。まぁもう成人しているしな」


「妹は何歳なの?」


「十八歳だ」


「私と一緒ね」


「エルも十八歳なのか!」


「ええ、そうよ」


 前世の分もあわせると40歳くらいだけれどもね。


「落ち着いているから、エルは俺と同じ歳くらいかと思っていた」


 40歳分の記憶があれば落ち着いても見えるだろう。


「フェオは何歳なの?」


「俺は二十三歳だ」


「シサと一緒ね」


「そうですね、私と一緒ですね!」


「俺はシサが妹と同じくらいかと思っていた」


 シサは緑のクリっとした目とそばかすが可愛らしい女性だから、フェオには若く見えたのだろう。


「えっ! エルティアお嬢様と同じようにそんなに若く見えますか?」


「エルティアお嬢様……?」


「あっ! つい嬉しくてうっかり……。すみません」


「そういえば、フェオはまだ知らなかったわね」


 私はフェオにもこの前デイカー達に話した内容を伝えた。


「そうだったのか……。それは大変だったな……。もう大丈夫なのか?」


「ええ、もうすっかり大丈夫よ。ありがとう」


 むしろやりたかったカフェをこうやってやることができて、とても嬉しいぐらいだ。


「それならいいが……」


 フェオは妹が私と同じ歳なので、余計感情移入してしまうだろう。


 私にも兄はいるが、フェオと妹のような関係ではなく、むしろドライな関係だった。


 それにすでに結婚して家庭を持っているため、オルレアンの本宅を出ていた。


 私はフェオの妹が羨ましく感じてしまった……。


「他のみんなもフェオと同じくらいの年齢なの?」


 私は話題を変えるために、みんなの年齢を聞いた。


「デイカーは同じ歳で、クードは二十一歳、コロンは十四歳だ」


 コロンはまだ成人前だった。この世界の成人は十八歳だ。


 なんとなくそんな感じがしていた。


「コロンはまだ成人前なんですね〜それなのにもうS級なんてすごいな〜うちの弟なんて、まだC級ですよ」


「ああ、シサの弟も冒険者だったな。コロンみたいなのは特殊だな」


 あんな魔法が使えるんだから、それは特殊だろうと思っていた。


「でもみんなS級なんですよね?」


「そうだな。俺たちは全員S級だな」


「それもすごいですよね。弟のパーティは弟がC級、残りがD級みたいです」


「バラバラなランクで組んでいるパーティもいるが、師弟関係くらいじゃないと、うまくやっていくのは難しいかもしれないな」


「やっぱりそうみたいですね〜よくパーティが変わってました」


 私はフェオとシサの話を聞きながら、海老のフリッターを揚げていた。


「そうなのね。冒険者も色々あるのね。海老のフリッターできたわ」


 ライスと味噌スープを盛り付けてシサに運んでもらう。


「はい、お待たせしました! 日替わりランチです〜」


「ありがとう。あっ! これは大討伐の時の弁当にもあったな。食感がふんわりしていて美味しかった」


「そうそう。覚えててくれたのね。ありがとう」


「当日に頑張って作った甲斐がありましたね」


 シサは私が頑張って当日に揚げていたのを覚えていた。


「ああ、俺はこれを気に入っていた。また食べることができて嬉しいよ。早速いただきます」


ぱくっ


もぐもぐもぐ


「うん、やっぱり美味しいな」


「お口にあって嬉しいわ」


 揚げ物の中でも私はフリッターが好きなので喜んでもらえて嬉しかった。


「ところで、コロンがエルにお土産をあげるっていってたが、もらったのだろうか?」


「ええ、コーヒーの実のことよね? もらったわ」


「正直、あの赤い実をもらっても、どうすることもできないだろうと思っていたが……」


私はフェオに昨日の残りのコーヒー豆となった実を見せた。


「これを見て」


「これは?」


「これがあの赤い実よ」


「これが?」


「ええ」


「どうなっているんだ?」


 フェオはデイカーが話していたコーヒーの粉の作り方を知らないらしい。


「あの赤い実の中から種を取り出して、それを乾燥させて、フライパンで炒ったの」


「そうするとこうなるのか?」


「そうよ」


「へー! すごいな! それでこれはどうするんだ?」

 

「これを粉にして、濾してコーヒーにするのよ」


「これを粉に……あっ! そういえばそうやっているのを俺は見かけた」


 フェオもコーヒーミルのような機械をみていたようだ。


「そうそう。実はそれをデイカーに頼んでいるのよ」


「デイカーに作ってもらうのか?」


「ううん、知り合いの人に作ってもらえるようにお願いしてもらってるの」


「そうか、それは魔道具じゃないんだな」


「そうね。手動だから違うと思うわ」


 店の入り口のドアが開いた。ドアの方をみるとデイカーだった。


 デイカーの話をしていたらデイカーが店にやってきたようだ。


「こんにちは」


「あっ! デイカー! いらっしゃいませ。今フェオが来てますよ。カウンターへどうぞ」


「ありがとう」


「ありがとうございます。どうぞ、どうぞ」


 シサがデイカーをフェオの隣へ案内した。


 フェオの右側のカウンターにデイカーが座った。


「フェオ、ゆっくり妹とは過ごせたか?」


「ああ、ありがとう。随分ゆっくりできたよ」


「よかったな。これから当分戻れないからな」


「そうだな。寂しいけど、こればっかりはしょうがないな」


「デイカー、こんにちは、いらっしゃい。デイカーも日替わりランチでいいかしら? 今日は海老のフリッターよ」


「ああ、俺も日替わりランチでいい。今日は海老のフリッターか。弁当にあったやつだな」


「わかったわ。フェオもだけど、デイカーも覚えててくれたのね」


「あれは美味しかった」


「俺もそう思ったとさっき話していたところだよ」


 海老のフリッターはどこで出しても人気が出るメニューだ。


 前世でも美味しいって評判だった。


 早速デイカーの日替わりランチを作っていく。


「エル、手動で粉にする道具、それから自動でメレンゲが作れる魔道具ができた。コーヒーの実を焙煎までできる魔道具の方は、もう少し出来上がるまで時間がかかる」


 もっとできるまで時間がかかると思っていた。お願いしてからそんなに経ってない。デイカーはすごく頑張ってくれたんだろう。


「早く作ってくれてとても助かるわ、ありがとう」


「ああ」


 私の感謝の気持ちが伝わったのか、デイカーはとても嬉しそうだった。


「あっ、もしかしてさっき話していたやつか?」


 フェオが気づいた。


「そうよ」


「よかったですね……もう昨日みたいなコーヒーを飲まなくて済みそうで」


「昨日みたいなコーヒーってなんだ?」


 デイカーが聞いてきた。


「実はこの前収穫したコーヒーの実から種を取り出して、乾燥させて、焙煎して、砕いてと工程を一通りしてみたの」


「この前のって、あの全部をか?」


「ええ、焙煎までは全部やって、砕くのは半分だけれどね」


「……それは大変だったな。さっきのシサの言い方だと、実際にコーヒーを淹れてみたってことだろか?」


「そうです。それがもう変な味で」


 シサが顔をしかめて答えた。


「どんな味だったんだ?」


 フェオが面白そうに聞く。


「オーナー、あの変な味はなんて言えばいいんですかね?」


「薄くて酸っぱい味ね」


 初めて飲んだシサには味の表現は難しいようだ。


「そう! そんな味でした!」


「薄くて酸っぱい味か……飲ませてもらったコーヒーはそんな味ではなかったな」


 デイカーが答える。


「そうだな。苦いなとは思ったが、酸っぱいとは思わなかった」


 フェオもデイカーと同じように酸っぱいとは感じなかったようだ。


「完成した道具を使って粉にすることで味が変わったりするだろうか?」


「実はお酒のボトルで叩いて粉砕したの。だからあんまり細かくならなくて。でも、道具を使えばもっと細かくできると思うから、味も変わったりするんじゃないかしら」


 コーヒー豆の粉砕の仕方は大切だと思う。


 荒いとスッキリで細かいと濃くなると前世のカフェ修行中に聞いていた。


 コーヒーに慣れていない人は濃いよりスッキリの方が飲みやすいと思う。


 でも今の私はそんな美味しいコーヒーを飲んだことがないので、希望的観測としてしか言わない方がよい。


「使うのが楽しみだな。できたものを明日の定休日に持ってきてもいいだろうか?」


「ありがとう。大丈夫よ」


「じゃあ明日の昼前にお邪魔するよ」


「わかったわ」


 デイカーとフェオはゆっくり日替わりランチを食べて帰っていった。


お読みいただきありがとうございました。もし作品を楽しんでいただけましたら、お気に入り登録や評価などいただけると大変励みになります。

是非是非よろしくお願い致します!!m(_ _)m

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