第25話 大討伐からの帰還とコロンからのお土産
よろしくお願い致します
デイカー達が大討伐へ向かって今日で四日目だ。
デイカーは三日と聞いていると話していたが、長くなる可能性もあるかもしれないとも言っていた。
まだ戻って来ていないのか、それとも今日は月曜日で定休日だから遠慮しているのかわからないが、デイカー達は顔を見せない。
デイカーに渡した弁当は今日の分まであるから食べ物には困らないだろうとは思っているが、安否も気になる。
「もう大討伐に行って四日目ですね。デイカー達そろそろ帰ってくる頃ですね」
「……大丈夫なのかしら?」
「大丈夫だと思いますよ! だってS級ですよ? 普通の冒険者が逆立ちしてもなれない特別なランクなんですから!」
「……そうよね」
「私も詳しいことはわからないですけど、以前聞いた弟の話では冒険者でS級まで上り詰めることができるのは全体の1%にも満たないらしいですよ」
「……それはすごいわね」
「だから安心して待っていましょうよ! 私は今から二階の掃除をしてきますね」
「ええ。お願い。私は納品を待っているわ」
その時、裏口から人の気配がした。
(納品の方が見えたのかしら?)
私は裏口に行き、外を確認した。
「大討伐から戻ってきた。今日は定休日だったが、よかっただろうか?」
「エル〜ただいまら!」
「予定より遅くなっちゃった!」
なんと! 裏口にデイカー、コロン、クードの三人がいた。
「お帰りなさい! 無事で何よりだわ」
「ありがとう。エルのお弁当のおかげでとても元気に討伐できた」
「コロンも毎日シフォンケーキが食べれて嬉しかったら!」
「あの甘酒、案外慣れると美味しいし、何より飲むと身体も温まって元気が出たよ」
「それは良かったわ。こんなところで立ち話でもなんだから中に入ってちょうだい」
私はデイカー達三人を店の中へ案内した。
いつものカウンターに座ってもらう。
「ごめんなさい、今日は定休日だから何も用意してないの。ちょっとお茶だけでも今から淹れるわね。そういえばフェオは?」
「いや、こちらがいきなり定休日に来たんだ。気を遣ってもらってすまない。フェオは妹に会うって言って、まだラデュレラ王国にいる」
「そうそう、デイカーの言う通りだよ。フェオは妹好きだし、僕達しばらく休暇になるしね」
「コロンも気にしないら〜。そうら、よく妹に会いに帰ってるら」
確かに最初に店に来た時も、妹へのお土産にチーズケーキを買っていた。
しばらく休みならゆっくり妹と過ごすのだろう。
私は急いでお湯を沸かして紅茶を淹れる準備をしていた。
「エルティアお嬢様〜、掃除終わりました。納品の馬車って来ましたか?」
何も知らないシサが2階から降りながら、大きな声で私に話しかけてきた。
「エルティア?……エルは愛称だったのか?」
「エルはお嬢様なのら?」
「エルティアお嬢様? それってエルのこと?」
シサの普段の私の呼び方がデイカー達にバレてしまった。
「エルティアお嬢様〜」
私の返事がないので、こちらへ向かいながらシサが私をまた呼ぶ。
「あっ、皆さんお帰りなさい〜」
デイカー達がカウンターに座っていたのをみて、シサも一瞬しまったという顔をしながら、挨拶をした。
「すみません……皆さんがきているのを知らなくて」
シサが私の横へきて小声で謝った。
「気にしないで。来ているのは知らなかったんだし」
私はデイカー達に紅茶を出した。
そして、貴族の娘だったが、婚約破棄をされて家を追い出されたことで、元々興味のあったカフェを開いたと話した。
前世の記憶があることや、侯爵令嬢で婚約破棄の相手は誰だったのかなどは伏せておいた。
そして、シサのことはうちの屋敷で働いていたが、私が追い出された時に一緒について来てくれたと伝えた。
「そうだったのか……それは大変だったな」
デイカーの顔が曇った。
すっかり忘れていたけど、デイカーに言われて、思い出した。
私って大変な人生を歩んでいたのだった。前世でも、今世でも……。
今はやりたかったカフェも好きなようにできているし、デイカー達のような常連のお客様もできて、前世の私や以前の私とは雲泥の差なので、気になっていなかった。
「エルはやっぱり貴族の令嬢だったか〜僕は薄々そうじゃないかって思っていたんだよね。所作とか話し方とかでさ。それと、シサがいつまでも話し方が砕けない理由がわかった」
クードは納得したように話した。
「コロンは全然気づかなかったら」
「でも貴族の娘なのに料理上手だよね? どうして?」
クードの疑問はその通りだと思う。
「元々料理に興味があって、内緒で自分の家のシェフに教えてもらっていたの」
「そうだったんだね。僕も家で出てきた料理が美味しいと、気になって興味が出て、シェフに作り方を聞いたりしてたな〜結局作りはしなかったけど」
本当は違うんだけど、クードが私と同じような感覚の持ち主でよかったわ。
「クードと違って教えてもらって作ってたんら」
「そうね」
嘘をつくのはちょっと心苦しいが、ここはしょうがない。
「それはもう大変でしたよ〜周りに見つからないようにコソッと習いに行ってね」
シサが話を合わせてくれた。
「コロンの主食のシフォンケーキもシェフに習ったんら?」
「あれはシェフから借りた本を見て、思いついたの。甘酒とかもそうよ」
「エルティアお嬢様、あの頃本当にすごかったですもんね。私閃いたわ! なんて言って」
上手にシサも合わせてくれた。
「……エルは元々料理の才能があったんだろうな」
デイカーが言った。
「僕もそう思うよ。だって弁当の料理はどれもとても美味しかったし」
「コロンもそう思うら」
「ありがとう。そうやって言われて嬉しいわ」
私は純粋に腕を褒められて嬉しかった。
「そうらっ! これエルにお土産ら」
コロンが私に小さな袋を渡してきた。
「何かしら?」
中を見ると赤い実が入っていた。
「コーヒーの実だ」
「そうら」
デイカーが答え、コロンが同意した。
「コーヒーってなんですか?」
私より先にシサが聞いた。
よかった。私は前世でコーヒーを知っていた。
「コーヒーは黒っぽい液体で苦い飲み物だ。この実から種を取り出して、その種を乾燥させて、煎って潰したものを濾すと飲めるらしい。他国の冒険者の受け売りだがな」
「コロンが他国の冒険者にもらったら」
「へ〜」
シサが珍しそうにコーヒーの実を見た。
「コロンがシフォンケーキを他国の冒険者に分けてあげたんだ。そしたらその後で、“一緒に飲みながら食べるとより美味しいですよ“って俺達に飲ませてくれたのがコーヒーだった」
「コロンがシフォンケーキを分けるなんて珍しいですね」
私もシサに同意だ。根に持っているようだが、以前デイカーには分けなかった。
「でしょ? それは僕も思った。もらった本人もコロンの様子を見てて、そう思ったんだと思うよ。それでコーヒーを分けてくれたんじゃないかな」
「あの冒険者は一人で来ていて、食料がなくなってとても困っていた。俺達の弁当を分けようとしたら、コロンが自分用のシフォンケーキを分けてあげていた」
「シフォンケーキはコロンの主食ら。でも他にライスもあったら。それでら」
優しい……コロンは人助けをしたようだ。
「帰る時、それをくれたら。コロン、もらってもどうしたらいいか困るら。それでエルにお土産にしたんら」
確かにコーヒーの実をもらっても、コロンは困るわよね……。
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