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第22話 再び甘酒の試飲と仲が深まった日

よろしくお願い致します。

 今日の日替わりランチは鶏胸肉の塩麹焼きを提供していく。


「うわ〜これ本当に鶏胸肉なんですか? めちゃくちゃ柔らかくて、高級なお肉みたいな食感になってますよ!」


 オープン前の昼食で食べたシサが感嘆の声を上げた。


「ふふっ。今日の料理は私のイチオシよ」


「今日だけでなく、エルティアお嬢様の料理はいつもイチオシですよ」


「あら、嬉しいわ」


 シサに褒められて、嬉しい気分で今日も開店していく。


 開店してすぐにお客様が来店された。


「「いらっしゃいませ」」


「こんにちは、今日もお邪魔するね」


「カウンターは空いているだろうか?」


 クード様とフェオ様だ。


「クード様達、こんにちは、空いてますよ。どうぞ」


 今日は珍しくクード様とフェオ様の二人で来店された。


 クード様のおかげで、今日も女性客は長居される方が多くなるだろう。


「クード様、フェオ様、こんにちは。今日の日替わりランチは鶏胸肉の塩麹焼きです」


「塩麹? なにそれ?」


「俺も聞いたことがないな」


「この前デイカー様に作っていただいた魔道具を使って作った調味料です」


「あっ、あの微妙な味の飲み物もそうだったよね?」


「おい、クード、それは思っても失礼だろう」


「そうだね、ごめんなさい」


「いえいえ、大丈夫ですよ。あれから改良してみたので、また今日飲んでいただきたいのですが、デイカー様とコロン様はお見えになるかわかりますか?」


「デイカーとコロンは後から来ると思うよ。一旦宿に戻ってから来るみたい」


「改良できたんですね。それは楽しみです」


「美味しくなったの?」


 クード様は微妙な味の飲み物と言いながらも興味はあるようだ。


「はい!今度は大丈夫だと思いますよ。飲んで確認してます!」


 いいところでシサが答える。


「それなら僕も楽しみかも」


 鶏胸肉が焼けたので、付け合わせに醤油麹の野菜和えを載せる。


 味噌スープやライスも準備できたのでシサに提供してもらう。


「はい、お待たせしました。日替わりランチです」


「ありがとう」


「今日も美味しそうだね」


「甘酒はデイカー様とコロン様が見えたら、お出しさせていただきますね」


「うん、それでいいよ」


「わかりました。食べてたらそのうち来るでしょう」


 そう話していたらデイカー様とコロン様が来店された。


「こんにちは、今日も日替わりランチをお願いしたい」


「コロンもら」


「いらっしゃいませ、こんにちは。クード様達のみえるカウンターへどうぞ」


 シサがカウンターに案内する。


「デイカー様、コロン様、いらっしゃいませ、こんにちは。今日の日替わりランチは鶏胸肉の塩麹焼きです」


「また聞いたことないメニューだな」


「コロンもら」


「魔道具の説明の時にできた米麹で作った調味料を使っています」


「ああ、あの時にできたものを使っているのか。それは興味深い」


「楽しみら〜」


「デイカー、コロン、この前飲んだ微妙な飲み物を改良したから、後で

また飲んで欲しいって」


「もう改良できたのか! さすがエル殿だな」


「……美味しくなったら?」


 コロン様がおそるおそる尋ねられる。


「コロン様、美味しくなってますから、大丈夫ですよ!安心してください」


「……シサ殿がそう言うなら……飲めそうら」


 コロン様はよっぽどこの前の甘酒が嫌だったのか、か細い声で返された。


「うわ〜なにこれ? 鶏胸肉だよね? 別物に感じるくらい柔らかい〜」


 鶏胸肉を食べたクード様が横で声を上げた。


「鶏胸肉? これが?……信じられない」


 フェオ様も驚いていた。


「本当にめちゃくちゃ柔らかいですよね。私も食べた時、別物かと思ってしまいました」


 頷きながらシサが言った。


「うちのシェフに教えてあげて欲しいくらい……」


 ぼそっと口走ったクード様の言葉をシサは聞き逃さなかった。


「うちのシェフ? クード様って、やっぱりどこかの王子様ですか?」


「えっ、いや。僕は隣国のラデュレラ王国の伯爵の息子で王子じゃないよ」


 苦笑いしながらクード様は何故かデイカー様の方を向いた。


「……」


 デイカー様は無言だった。


「クード様は貴族の御坊ちゃまなんですか!」


「うん、次男だけどね。だから冒険者になったんだけど」


「コロンは平民ら」


 コロン様は得意気に胸を張った。


「俺も元男爵の息子ですが、冒険者には貴族も平民も関係ないですね」


「そうだ。実力があるかどうかが重要だ」


 フェオ様の言葉に続いてデイカー様が答える。


 デイカー様とコロン様の日替わりランチができたので、シサに運んでもらう。


「お待たせいたしました。日替わりランチです」


「ありがとう。クードのいう柔らかさがどんなのか楽しみだ」


「いい匂いら〜早速食べるら〜」


ぱくっ


もぐもぐもぐ


「……本当だ。柔らかい……。これは本当に鶏肉なんだろうか」


「……コロンの知ってる鶏肉とは違うら」


「はい、鶏胸肉ですよ。塩麹の力ってすごいですよね」


 余程信じられなかったのか、神妙な顔をしながらデイカー様とコロン様は日替わりランチを食べていた。


「そろそろ改良した甘酒の試飲をお願いしてもいいですか?」


 私は皆さんが食べ終わったところで、デイカー様の方を向いて声をかけた。


「ああ、みんな食べ終わったので大丈夫だ」


 フェオ様とクード様は話しながら二人の食事が済むのを待っていた。


 作っておいた粒なしの甘酒をコップに注いで、すりおろし生姜も添えてシサに運んでもらう。


「はい、どうぞ。お飲みください」


 それぞれに渡ったところでクード様がコップの中身を確認した。


「あれっ、この前はライスが入ってたけど、今度は入ってない」


 粒がなかったのでそう思ったのだろう。


「飲んでみるら」


 コロン様の言葉で全員が甘酒を口にした。


「どうでしょうか? これはこの前と同じものなんですよ。粒は潰してなめらかにしてみました」


「……飲みやすくなってるし、味もこの前ほど気にならなくなってる」


「そうだな。この前より良くなっています」


「……この前よりいいら」


「この前より格段に飲みやすくなっている。粒がなくなったのが良かったのだろうな。エル殿、そこによく気づかれた」


「ありがとうございます。実はこれを大討伐の時に持っていって飲んでもらえたらと思っているんです」


「大討伐に?」


「はい。食事が取れない時に食事の代わりのようになります」


 大討伐のことはよくわからないが、食事の時間を確保するのはきっと難しいだろう。


「そうなんだね。それはありがたいよ。食事どころじゃない時もあるからね」


「特にクードはそうだよな。救護係でつきっきりになるから」


「怪我人相手の回復師はどうしてもね……」


「デイカー様は魔道具師でしたよね? 魔道具だけで戦って魔物を倒していけるんですか?」


 シサがデイカー様に尋ねる。


 天才魔道具師であればそれも可能なのだろうか?


「いや、俺は魔道具師だけではなく、剣士でもあるんだ。戦う時は剣士として戦っている」


「俺も剣士ですが、斧で戦っています。デイカーは剣なので、本当の剣士ですね」


 フェオ様が補足した。


「エル殿、そういえば大討伐の日程が決まった。月初に当たる、来週の金曜日から行くことになった」


 今日は月末の最終週の火曜日だからあと一週間とちょっとだ。


「わかりました。お弁当は何日分用意したらいいでしょうか?」


「今のところ三日と聞いているが、伸びる可能性もあるかもしれない」


 デイカー様が答える。


「じゃあ一日長くして、四日分でどうでしょうか?」


「それはありがたい。頼む。俺が当日の朝に保存の魔道具を持って取りに行く」


「わかりました。皆さん、何かリクエストあれば教えてください」


「俺は味噌スープを頼む」


「俺はカレーをお願いします」


「僕は煮込みハンバーグが食べたいな」


「コロンは絶対シフォンケーキら」


「わかりました。今のリクエストは必ず入れますね」


 甘酒とリクエストを入れたら、お弁当の大体の内容は決まるので、あと少し何か考えるだけになった。


「大討伐は僕達の国のラデュレラ王国で行われるんだよ」


「皆さん、ラデュレラ王国の方なんですね」


 シサがクード様の僕達に反応した。


「そうら」


「今はたまたまこのスピア王国のお客さんの依頼で来てるだけなんだ」


「じゃあ、終わったらラデュレラ王国に戻られるんですね」


「そうだね」


「そうなると寂しくなりますね」


「本当ね」


 私とシサはしんみりしてしまった。


「今でも俺はちょくちょくナイト街からラデュレラ王国に戻っているくらいだからいつでもここに来れる」


「ありがとうございます。お待ちしてますね」


「ところで、エル殿、そろそろ俺たちのことは様付けじゃなくて呼び捨てで呼んでもらえないだろうか?ここに毎日来るようになって気の知れた仲になったと感じている」


「僕もそれはずっと思ってた。なんか様付けで呼ばれてると距離が遠く感じるし、貴族の令嬢に呼ばれているみたいな気分になるんだ」


 私は元侯爵令嬢だからクード様のいわれることも一理ある。


「わかりました。でしたら私のことも“エル“とお呼びください」


「私も“シサ“でお願いします」


「ああ、そうする」


「わかりました」


「うん、僕もそう呼ぶね。それと話し方ももっと砕けた感じでいいよ」


「コロンもら」


「砕けた感じ……」


やっぱり長年の侯爵令嬢の習慣は、簡単には抜けないみたいだ。


「こんな感じですかね、やっほー!クード」


 私が困惑しているのに気づいたシサが手を振って実践して見せた。


「ははっ。そうそうそんな感じ」


「シサ、面白いら〜」

 

 デイカー達との仲がより一層深まった一日だった。



お読みいただきありがとうございました。もし作品を楽しんでいただけましたら、お気に入り登録や評価などいただけると大変励みになります。

是非是非よろしくお願い致します!!m(_ _)m


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