第19話 味噌と醤油と甘酒を作る
よろしくお願い致します。
「こんにちは、納品にきたよ〜」
太陽が高く登った、天気の良い定休日に一台の馬車が一軒家に着いた。
定休日には食材など必要なものを納品してもらっている。
納品の時の検品は料理を作る私がしていた。
今日はいつもの食材の他に、デイカー様に頼んだ魔道具ができたら作りたいと思っていた味噌と醤油の材料の納品がある。
いつ出来上がってもいいように、デイカー様に魔道具をお願いしてすぐ、納品してくれる雑貨屋に材料を頼んでおいた。
本当は樽などにまとめて作っておきたいと思ったのだが、保存しておく場所が今のところない。
この一軒家の周りは広いスペースがあるので、家の横に保存する蔵のようなものをそのうち作りたいと思っている。
デイカー様なら大工の知り合いがいるかもしれない。
これもまたデイカー様に相談してみようと思う。
「はい、頼まれていた、大豆、小麦、米、塩と30cm角の容器二つだ。こんなに沢山どうするんだい?」
材料はキロ単位で頼んでいたので、納品にきてくれた雑貨屋の店主は驚いていた。
「ありがとうございます。最近また売ってもらった味噌と醤油を作ります」
以前配達を頼んだ四軒の店主が交代で週に一回、四軒の品物をまとめて納品にきてくれていた。
「ああ、あの珍しいものか。あれはエルちゃんしか売れてないね。こないだ言ったけど、売れなかったからあれ一回しか仕入れてない。お店も廃業したって聞いたよ。あんなの作ってどうするの?」
廃業した……。
やっぱり、デイカー様に魔道具を依頼した人と雑貨屋の店主が仕入れた味噌と醤油を作った人は同じで間違いないだろう。
「カフェで使うんです。話したか覚えてないんですが、よく食べに来てくださってる日替わりランチであれを使っているんですよ」
雑貨屋の店主は仕入れの途中によく寄って食べに来てくれていた。
「えぇ!! そうなのかい? 何に使っているんだい?」
「色々な料理に使っているんですけど、一番わかりやすいのは味噌スープですね」
「あの美味しい味噌スープ……。言われてみたら、見たことないスープだと言った時に聞いたような気がする」
「そうでしたか」
「あんな風に美味しいスープが作れるものだったんだね。知らなかったよ」
「使い方が分からなかったのかもしれませんね」
「エルちゃんが使い方教室でも開いて売れば、売れるかもね〜どうだい? 作ったらやってみる気はないかい?」
面白そうな話だけど……。
「そうですね……今のところはお店で使う分しか作ろうと思ってないので」
今はまだ味噌と醤油を作ったとしても売るつもりはなかった。
「そっか、残念だ。その気になったら協力するからまた言ってくれよ」
「すみません、ありがとうございます。その時はお願いしますね」
「おう! いつでも言ってくれよ。じゃあありがとう、また来るよ」
「はい、お気をつけて」
納品の支払いが済み、雑貨屋の店主は帰って行った。
「エルティアお嬢様、掃除と花の水やり終わりました」
シサが声をかけてきた。
「ありがとう。ガーベラも少しずつ育ってきているわね」
窓から種を撒いたところをみる。
シサが家の周りに撒いたガーベラの種は芽が出て、窓から見てもわかるくらいに成長していた。
「あっ、今日の納品で味噌と醤油の材料が届いたんですね」
普通に使うにしては多い大豆や粉になっていない小麦を見てシサが言った。
「そうなの。だから今から早速作っていくわ」
今から味噌と醤油を作る。
私は集めた麹菌が付く媒体として、味噌と醤油の材料全てを媒体として使えば、そのまま味噌と醤油ができることになるんじゃないかと気づいた。
それができるなら味噌と醤油はデイカー様の魔道具で通常よりもとても早く作ることができるだろう。
米麹の時と同じように全ての材料が入った入れ物に魔道具を被せるだけでいいからだ。
昨日仕込んだ塩麹と醤油麹も同じようにできただろうけど、せっかく作った米麹を使って作ってみたかった。
私はさっき持ってきてもらった容器の一つを調理台に置いて、大豆半分、米、塩半分を入れた。
もちろん材料は洗って、大豆と塩の残りは醤油作りに使う。
そして魔道具である黒い布を被せた。
みるみるうちに容器にあった大きさに変化した。
「麹菌」
魔道具が光り、しばらく待っていると黒から白に色が変わった。
「できたみたい」
「本当にすぐですね」
横で見ていたシサが言った。
魔道具を取って中を見ると思った通り、味噌ができていた。
「ちゃんとできたわ!」
「味噌スープで使うものと一緒ですね!」
今度は醤油を作る。
もう一つの容器に残っていた大豆、塩と小麦、水を入れた。
そしてまた魔道具である黒い布を被せた。
みるみるうちに容器にあった大きさに変化した。
「麹菌」
魔道具が光り、しばらく待っていると黒から白に色が変わった。
「できたわ」
「何度見ても不思議ですね」
魔道具を取って中を見るとやっぱり醤油になっていた。
この容器は蓋があったが、できた醤油は瓶に移した。
この方法で次は甘酒を作ろうと思う。
甘酒は米麹とライスと水でできるのだが、米麹は昨日塩麹と醤油麹で使ってしまった。
魔道具で先に米麹を作ってしまうと、通常の作り方でしか甘酒が作れない。
それだと出来上がるのに時間もかかるし、適温を保つ温度管理も必要になる。
だから、味噌と醤油と同じように魔道具で甘酒を作っていく。
まず、蒸し米を作る。
そして、できた蒸し米と残っていたライス、水を昨日の容器に入れた。
容器に魔道具である黒い布を被せた。
みるみるうちに容器にあった大きさに変化した。
「麹菌」
魔道具が光り、しばらく待っていると黒から白に色が変わり、甘い香りがしてきた。
魔道具を取って中を見ると甘酒ができていた。
「甘酒もできたわ!」
「あまざけ? お酒ですか?」
シサが怪訝な顔をする。
「ううん、酒がつく名前ではあるけど、これはお酒じゃなくて甘い飲み物よ」
「へー! お酒じゃないのにお酒って付くなんて変わった名前の飲み物なんですね」
「冷たくても飲めるけど、私は温かい方が好きね。ちょっと温めて飲んでみましょう」
私は甘酒を鍋に移し、温めた。
「はい、どうぞ。飲んでみて。飲む時に、生姜をちょっと入れるのがすごく合うからやってみて」
シサに甘酒と皿に入ったすりおろし生姜を渡した。
「わー! ありがとうございます。やってみますね」
皿に載っていたスプーンを使って、生姜を掬って甘酒に入れてかき混ぜる。
それから、甘酒を口に運んだ。
ゴクッ
「……なんて言っていいのか。不思議な飲み物ですね」
シサは微妙な表情をしていた。
「……口に合わなかった?」
「……すみません。私はあまり好きじゃないかもしれません」
「謝らなくていいわよ。これは好き嫌いが分かれるかもしれないわ」
甘酒は飲む点滴と言われていたくらい前世では身体に良いとされていた。
だから大討伐の時に持っていってもらおうと思っていたけど……。
「これをデイカー様達の大討伐の時にお渡ししようと思ってたけど、シサの表情を見ると先に味見してもらった方が良さそうね」
「そうですね。四人のうち、デイカー様やフェオ様は可もなく不可もなくって感じで、クード様とコロン様は微妙なような気がしますね。もしかしたらクード様とコロン様は私と同じような感想かもしれません」
デイカー様達四人はこのカフェの常連となっており、シサは四人の好みが予想できるほどだった。
私もシサの予想が当たっているような気がしていた。
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