第18話 完成した魔道具
よろしくお願い致します。
デイカー様に麹菌を集める魔道具をお願いしてから一週間経った土曜日にデイカー様から魔道具ができたと言われた。
定休日の月曜日が近かったので、定休日にすぐに色々試すことができるように、日曜日を指定して持ってきてもらえるようにお願いをした。
ランチタイムを少し過ぎた時刻に魔道具を持ってデイカー様が来店された。
「こんにちは、エル殿に頼まれていた魔道具を持ってきた。……伝え忘れていたが、今日もいつものように日替わりランチをお願いできるだろうか?」
いつもの冒険者の装いの他に、丈夫そうな袋を持っていた。
そこにお願いしてあった魔道具が入ってるのだろう。
「デイカー様、こんにちは、お待ちしてました。そのつもりで用意してありますよ。今日の日替わりランチはメンチカツです、どうぞ」
「それは助かった。ありがとう」
シサがカウンターに案内する。
デイカー様はいつも座られる左端の席に座った。
「デイカー様、こんにちは。魔道具をお持ちいただき、ありがとうございます。デイカー様が食事を済まされてから、魔道具の説明や受け渡しをしてもらってもいいですか?」
「ああ。俺もその方がありがたい。これが頼まれた魔道具だ。あとで説明するので、食べ終わるまで一旦預かっていてもらいたい」
「はい」
私は魔道具の入った袋を預かり、キッチンのスペースで空いていた調理に邪魔にならない場所に置いた。
袋は思っていたより軽かった。
「今日はメンチカツか。楽しみだ」
デイカー様は比較的がっつりしたものを好まれる。
特に揚げ物の時はとても嬉しそうだった。
私はメンチカツを揚げていく。
メンチカツは牛肉だけのものも豪華で美味しいのだが、今日は自分の好きな合挽で作っていた。
「メンチカツ、できたわ」
メンチカツと付け合わせにキャベツとトマトを載せて、味噌スープとライスを盛り付け、シサに配膳をお願いする。
「デイカー様、お待たせしました。日替わりランチです。揚げたてなので気をつけてお召し上がりくださいね」
「ありがとう、今日も美味しそうだ。いただくとするか」
ぱくっ
もぐもぐもぐ
「……うん。今日のメンチカツもジューシーでボリュームがあって美味しい」
「ありがとうございます」
「今日は合挽肉のミンチカツなんですよ〜! ねー、オーナー?」
「そうなんです。私はこっちのが柔らかく出来上がるので、好きなんです」
「よくわからないが、合挽肉とはどんなものなのか?」
「牛肉と豚肉を使って作るものを合挽肉と言います」
「それ以外もあるのだろうか?」
「牛肉だけや豚肉だけのものも作る時がありますよ」
「俺はただ美味しいと思うだけで、その違いを気づいていなかったように思う」
「今日は合挽なので、また牛肉だけや豚肉だけで作った時は、召し上がられる時にお知らせしますね」
「ああ、また教えてほしい。違いを知るのも楽しみだな」
毎日来られるデイカー様は、最近は料理で使う食材にも興味を持ってくれるようになり、こうやって質問してくれる。
「エル殿、今日もとても美味しかった。ありがとう」
デイカー様が笑顔を向けてお礼を言われる。これは毎日の光景だった。
「いえいえ、こちらこそいつもありがとうございます」
「シサ殿、悪いが食器を片付けてもらってもいいだろうか?」
「はい、今すぐ片付けますね〜」
シサがデイカー様の空になった食器を片付けて、テーブルを拭いた。
「ありがとう。エル殿、さっき渡した魔道具をもらえるだろうか?」
私は置いてあった袋を取ってデイカー様に渡した。
デイカー様は袋の中から厚手の折りたたんだ黒い布でできた魔道具を取り出した。
「ありがとう。実際にやりながら説明をした方がいいだろう。まず、何か入れ物を用意してほしい。なんでもいい。あるだろうか?」
「はい」
私は20cmくらいのお弁当を入れるような容器を用意した。
「今からこの容器に自然界に存在する菌? を集めていく。よくわからないが、この菌を使って料理に使う調味料を作るんだったな?」
「はい、そうです。菌の名前は麹菌と言います。でも、媒体となるものがいるので、ちょっと待っていただけますか?」
「ああ」
私は、あらかじめ鍋とザルを使って、作っておいた蒸し米を保冷の魔道具から出して、さっき用意した容器に入れた。
「これで大丈夫です」
「わかった」
デイカー様が容器に魔道具の黒い布を被せた。
すると、みるみるうちに容器にピッタリ合うサイズに縮んだ。
「被せる容器の大きさによって勝手にサイズが変わるんだ」
「「すごい」」
「どんなに大きなものでも大丈夫でしょうか?」
「この一軒家くらい大きいものは試したことがないが、最初の依頼者は樽に被せて作ったと言っていた。色々試してみるといいかもしれない」
「それはいいですね。またやってみます」
沢山作っておけるので、樽でも作れるのはとてもありがたい。
「それから集めたい菌の名前、麹菌だったか? を言うと被せた入れ物の中に集めてくれる。集まったら黒から白に色が変わってわかるようになっている」
「へー! すごいですね!」
「やって見せよう。麹菌」
デイカー様が“麹菌“というと魔道具が光った。
しばらくすると、黒かった布が白く変わり、甘い香りがしてきた。
「集まったようだ。魔道具を取ってみよう」
デイカー様が魔道具を取った。
中を見てみると、米麹ができていた。
「米麹ができたわ!」
「エルテ……オーナー、よかったですね!!」
私とシサは手を取り合って、嬉しくて子供のようにはしゃいでしまった。
「……無事成功したみたいだな」
その様子を見て、デイカー様は口元を緩めていた。
「……すみません。つい」
私は恥ずかしくて、ちょっと顔が赤くなってしまった。
「いや、……喜んでもらえて何よりだ」
そんな私を見て、デイカー様は笑顔を見せてくれた。
「デイカー様、ありがとうございました。これで私が作りたかったものを作ることができました」
私は魔道具を受け取って、改めてデイカー様にお礼を言った。
「よかった。では俺はこの辺で失礼する。会計をお願いしたい」
「今日は魔道具をお持ちいただいたので、お代は結構ですよ。またお待ちしていますね」
「……ありがとう。また定休日明けにお邪魔する」
デイカー様は帰られた。
「エルティアお嬢様、デイカー様の作った魔道具は面白くてすごかったですね!ただの黒い布にしか見えないのに……やっぱり天才魔道具師は違いますね!!」
「本当にね。でもすごく嬉しいわ。これで発酵食品を色々作ることができるし」
「よかったですね。ところで、今日は一旦closeってことでしたが、実際にはどうしますか? openに戻しますか? それとももう今日はこのままcloseのままにしますか?」
シサに聞かれたが、私はお店を再開するよりも、さっきできた米麹を使って何か作ってみたくてうずうずしていた。
「今日はもうそのままcloseにして、米麹を使った試作をするわ」
「わかりました」
「じゃあ、早速、さっき作った米麹を使って塩麹と醤油麹を作るわ」
私はさっきの容器の半分くらいの大きさの容器を二つ用意した。
一つは米麹、塩、水を入れた。
もう一つには米麹、醤油を入れた。
両方とも蓋はのせる程度にしておき、明日から毎日一日一回スプーンでかき混ぜていく。
一週間くらいで出来上がるだろう。
「これでいいわ」
「なんかリゾットみたいですね。これって調味料ですよね?」
容器を見てシサが言った。
「そうよ」
「出来上がったらどうやって使うんですか?」
「ふふっ。今は内緒よ」
出来上がりが楽しみだった。
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