第12話 注目の的
よろしくお願い致します。
今日もいつものようにカフェを開店していく。
カフェはオープンから今日で一ヶ月だ。シフォンケーキを主食にすると宣言したコロン様は毎日シフォンケーキを買いに来てくれている。
持ち帰りのシフォンケーキを買ってくれるので、まだ一ヶ月だけどすっかり常連になっている。
デイカー様もコロン様と一緒にきたり、一人でふらっとカフェに来て毎日食事をしていかれる。
今日もデイカー様が食事に来た。
「こんにちは。今日の日替わりランチはなんだろうか?」
「デイカー様、こんにちは。いつもありがとうございます。今日は煮込みハンバーグですよ。お席はいつものカウンターでいいですか?」
「ああ。今日は煮込みハンバーグか。俺はハンバーグが大好きだから楽しみだ」
シサがいつものようにデイカー様をカウンターに案内する。
「オーナーの煮込みハンバーグ、美味しいですよ。こちらへどうぞ」
デイカー様はカウンターの一番奥にいつも座られる。すっかり定位置になっている。
「エル殿、こんにちは。今日は煮込みハンバーグと聞いた」
「デイカー様、こんにちは。はい、今日はトマト煮込みハンバーグです」
今日はこの世界で定番に人気のある煮込みハンバーグにしてみた。メニュー自体は目新しいものではないが、隠し味に醤油と味噌を使っている。
カフェをオープンしてから、醤油と味噌を使ったメニューを色々と提供してみたが、どれも美味しいと評判が良かった。
私が前世で食べていたものを提供する時もあれば、今日みたいにこの世界でもすでにあるメニューを提供する時もあった。
でもそんな定番メニューでも私なりのひと工夫をして提供していた。
今回の隠し味の醤油と味噌もそうだった。
「お待たせしました。煮込みハンバーグです」
できたのでシサに運んでもらう。
煮込みハンバーグの他には、ライスといつもの味噌スープだった。
デイカー様はオープン当初から味噌スープがお気に入りだった。
ある時、具材が違うけど、毎日味噌スープを提供していたので、飽きるのではないかと他のスープに変えて提供してみたところ、デイカー様はとてもがっかりされたのだ。
毎日来られるのは今のところデイカー様とコロン様だけなので、デイカー様に合わせて味噌スープは毎日提供している。
「ありがとう。いただくとするよ」
「はい」
デイカー様が私に話しかけながら食事をされていると、シサがデイカー様に話かけてきた。
「デイカー様、お知り合いの方が見えているようですが、お隣にお連れてしてもいいでしょうか?」
「構わないが、誰だろうか?」
「ちょっとお名前まではお聞きしてませんが、入り口の外でお待ちになっていますのでお連れしますね」
うちのカフェはカイヤ町からナイト街へ行かれる方が寄ってくれる。
空いていたらテーブル席に移動してもらえたかもしれないが、ちょうどお昼時なので今はテーブル席は満席になっていた。
シサは入り口に戻り、待っている人を連れてくる。
「あの人、かっこよくない?」
「一人なのかしら?」
その人は男性で、店の中を通ってカウンターまでくるのだが、途中で女性客が色めき立っていた。
「おい、デイカー! いつになったらここに連れてきてくれるつもりだったんだ?君が誘ってくれないから、僕は待ちくたびれて自分で来てしまったよ」
「クードだったか! すまない。すっかり誘うのを忘れていた」
「デイカー様のお知り合いですか?」
私は男性をみた。女性客が色めき立つほどの銀髪の美形で、王子様のような雰囲気のデイカー様と同じくらいの歳と思われる若い男性だった。
ご本人はいつものことなのか平然とされていた。
アリオン王子の元婚約者だった私は、もちろん他の王子も知っていたので、この人がこの国の王子ではないことはわかっていたが。
「そうだ。冒険者のパーティ仲間でクードだ」
「初めまして。僕は回復師のクードと言います。デイカーに以前からここのことを聞いていたけど、ちっとも誘ってくれないんですよ」
「ご来店ありがとうございます。初めまして。私はオーナーのエルと申します。先程案内していたのは従業員のシサです」
クード様が名乗ったので、私も自己紹介をした。
「すまない。クードはいつも女性に囲まれていたり、女性と一緒にいるからなかなか誘うタイミングがなくて」
「そんな遠慮しないでよ。討伐中とかに言ってくれてもいいんだし」
「そうだな。これからはそうするよ」
「まぁもう来ちゃったから、僕一人でも来れるけどね」
デイカー様とクード様が話をされるが、クード様はまだ座っていなかった。
「クード様、デイカー様のお隣にお座りくださいな」
シサが気を利かせてクード様に言った。
「ありがとう。そうさせてもらうね」
シサをみてクード様はにっこり笑った。それを見たシサの顔が赤くなっていた。
美形の笑顔ってすごい破壊力がある。
「クード様も日替わりランチでよかったですか?」
「うん、僕も日替わりランチをお願い」
私はクード様の煮込みハンバーグを用意した。
「はい、クード様もお待たせ致しました」
シサに運んでもらった。
会計の場所はカウンターの右横にあるのだが、会計に来た一人の女性客が支払い後クード様に話しかけていた。
デイカー様は気にしていないようだった。
「この後、よかったら一緒にナイト街に行きませんか?」
「お誘いありがとう。僕は今仲間と一緒なので申し訳ないけど……」
「そうですか。残念です」
女性客は帰って行った。
「すごいですね〜私、店の中で誘われている人って初めて見ましたよ」
シサが私に小声で話す。
「そうね。しかもクード様も慣れてるみたいね」
「隣にデイカー様がいるのに目もくれずにね……」
「それもそうよね。見えてないのかしら?」
「そんなことないと思いますけど」
私とシサはコソコソと話していた。
この後も会計にきた女性客が隣にデイカー様がいるのにもかかわらず、クード様に声をかけて誘っていた。
ぱくっ
もぐもぐもぐ
「! エル殿!! 」
煮込みハンバーグを一口食べたクード様が大きな声で私を呼んだ。
「! はいっ!!」
その声に私は驚いてしまった。
「この煮込みハンバーグめちゃくちゃ美味しいです! 僕はハンバーグが好きで、特に煮込みハンバーグが好きなんだけど、こんなに美味しいものは初めて食べたよ」
「クード、この味噌スープも飲んでみてくれ。これもすごく美味しい」
無言でうなづき、クード様は味噌スープをスプーンで掬って口に運んだ。
ごくっ
「!! デイカーの言う通りだ! これもめちゃくちゃ美味しい。でも僕はやっぱり煮込みハンバーグが最高だよ」
「ありがとうございます。そう言っていただけてとても嬉しいです」
デイカー様は先に食べ終わっていたが、クード様と話しながら、クード様が食べ終わるのを待って、二人で一緒に帰られた。
クード様が帰られたら、長居していた女性客達は波が引くようにサーッと帰っていった。
「クード様効果……。すごいわ〜」
私もシサの呟きに同意するのだった。
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