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第8話 ストーキング!

 師匠はどうやらドラゴンのクエストを受ける人間を張り込んで、それを追跡して後ろから颯爽とドラゴンを瞬足で倒して、さっさと帰るという悪魔的な計画を立てた。


 クエストを受ける人たちは準備をしっかりとして、決死の覚悟で挑むはずなのにうちの師匠がこんなバカなことを考えてすみません。


 申し訳ないという気持ちは持ち合わせているが、それ以外は何もできないのでまあ、許してほしい。


「まあ、あれじゃ。ドラゴンぐらい一人で倒せんと男じゃないわい」

 そんな師匠に俺は思わず、あんたがバケモンなんだよと言ってやりたくなった。


 ドラゴン一人だ倒せるような男はこの世の中にほとんど存在しません。

 そこのところ分かってらっしゃるのかな? 師匠?


 なんか、適当に突っ込んでも勝てるような存在じゃないからね。普通、ドラゴンはもっと強力で恐ろしい存在だからね。


 俺も、師匠のおかげでドラゴンに対する恐怖は全くと言っていいほどないけど、普通の人はそんな感じじゃないはずだから。

 もっと、恐怖と誇りをもってドラゴン討伐しに行こうとしているから。


 その気持ちに水を差す感じで俺はどうかと思うのだが、師匠がそういうなら従うしかない。


「しっ、ユーリ。やつらドラゴン退治の張り紙をまじまじと見つめておる。これは受注するだろう」

 別に俺は何もしゃべっていなかったような気がするが、師匠に注意されてしまった。


 もしかしなくとも、師匠の目は節穴なのかもしれない。この場合は節耳か? いや、それはそれでおかしいな。


   ✕   ✕ 吟遊の黄昏 ✕   ✕


「なあ、トーカ。そろそろ俺らはドラゴンを倒す番じゃねえのか?」

 Sランクパーティ「吟遊の黄昏」はパーティメンバーの一人で「回復者ヒーラー」であるトーカに意見を仰いでいた。


 だいたい、うちのパーティは攻撃特化だからトーカが負傷したメンバーの処置が間に合わなくなれば確実に負けてしまうというわかりやすい欠陥を抱えたパーティだ。


 だからこそ、クエストの受注の最終決定は大体トーカが決める。

 俺らがどれだけ無謀だろうといってもトーカがGOをだせば受注することになるし、俺らがどれだけこれはいけるだろうといっても、トーカがNOをだせばその時点クエストは受注しない。


「ドラゴンを倒したものにの与えらる特別勲章、ドラゴンスレイヤー。そろそろ何かうちのパーティだけの強みを運営が欲してるからね」


 俺が属する吟遊の黄昏は多数のスポンサーを抱える有名パーティだった。

 装備の一部にスポンサーの宣伝写真やロゴなんかを張って、録画型魔動機を背中に連れてモンスターを退治する。エンターテイメントだ。


 ギルドのトップランカーになればそれこそ一生金に困らないぐらいに儲けることができる。

 まあ、それ相応の責任は付きまとうのだが。


「ドラゴンスレイヤー。まあ、最近ロクな成果を残していない俺たちにゃ必要かもしれねえな」

「そ。だから、とりあえず作戦を練ろうか」


 特別勲章と呼ばれる特殊な称号が存在する。これを手に入れるだけでスポンサーが三社は増えるといわれるほど重要なものだ。


 その中でも高難易度のドラゴンスレイヤー。それは前人未到の称号。誰も手に入れることのできていない勲章。


 それがうまいこといけば次のシーズンでAランクに落ちる可能性があった俺たちは回避どころか堂々の一位にすら返り咲ける。


 多少のリスクは無視してでも挑むべきだろう。


   ✕   ✕ ユーリウス ✕   ✕


「ほらなユーリ。わしの言った通りじゃろう? あやつらは絶対に受ける目をしておったんじゃ」

 珍しく。ほんっとうに珍しく、師匠の勘があったっていた。

 なーんでだ? という疑問よりも師匠でも勘を当てれる時があるんだなと素直に感心してしまった。


「よし、追うぞ。ストーキングじゃ」

 師匠。それ、この国で普通に犯罪です。


   ✕   ✕ 吟遊の黄昏 ✕   ✕


「レッドドラゴンがいる場所……。本当にここなんだな?」

「うん。そうだね」


 紅の宝石(レッドカーマイン)採掘洞窟。そこの最深部にレッドドラゴンがいるらしい。


 最近、十字に引き裂かれ一撃で絶滅している黒龍が発見された。それをみて人々は魔王の復活だと騒ぎ立てた。

 だが、専門家の見解では黒龍に瘴気が見られなかったため、人間の仕業だといわれている。


 そんな人間いてたまるかとは思うのだが。まあ、もしそんな人間がいるとして、この冒険者ランキングには手を出さないでほしいものだ。

 ドラゴンを引き裂いて絶命させれるような手練れが、商売敵だなんて商売あがったりだ。


 そんなことを考えながら歩いていると、荘厳な扉が俺たちのことを出迎えてくれていた。

「さ、行くぞお前ら。ドラゴンをぶちのめしてやろうじゃねえか」

「「「おー!」」」


 俺たちは意気揚々と、ドラゴンのいる部屋へと突入していった。


   ✕   ✕ ユーリウス ✕   ✕


「あれ? 師匠。行っちゃいましたよ?」

「まあ待て。あやつら見たか? 周りに録画型魔動機が飛んでおった。つまるところ出演者じゃ。そしてわしはわけあって顔を見られたくない。でもドラゴンは倒したい。そしてわしが考えた策はこれじゃ!」


 そういって師匠は袋の中から、仮面を取り出す。

 昔読んだ小説で回答がつけていたような目元だけを覆う仮面。


 そして、どこでかったのか師匠は俺にタキシードを着せてくる。

 師匠も同じ仮面に、純白のワンピースを身にまとっていた。


「さて、ユーリ。あやつらがドラゴンに負けそうなとき、全く知らない乱入者が颯爽とドラゴンを倒したらどう思う?」


 師匠がそんな不思議なことを聞いてくる。


「簡単じゃ。超盛り上がる。わしはそれをやってやるのじゃよ!」

 そういって師匠は笑った。


「よし、そうと決まればユーリ。よく聞き耳を立てておけ。あやつらがピンチになったそのタイミングで飛び出すぞ!」


 その姿に見合ったかわいらしくて無邪気な笑みを浮かべた。

 俺的には普通に怖かった。

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