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第3話 地獄の幕開け

 帝国歴1876年。6月7日。


 師匠……もとい剣聖ミルケルカとの地獄の修行がスタートした。

 まだ一日目だというのに山の上り下りをすべてダッシュで行い二十往復。

 上り下り中には横から師匠から石が投擲されて、よけれなければ普通に痛い思いをする。


 ミルケルカとて、さすがに回復魔法ぐらいなら使えるはずなのに一向に行使してくれない。あれなのだろうか、王都にもたまにいた魔法に頼らず己の力だけで治そうとするもの。


 自然派ママならぬ、自然派ババなのだろうか。

 もしそうなら勘弁。というか、一日目ぐらい様子見してもいいんじゃないかと思う。

 一日目からこんなに飛ばすとさすがに体がもたない。

 いやでも、今日からこれが日課になるのなら慣れなければならないのかもしれない。


 ちなみに師匠はこれを最低でも二時間でこなせるようになれと無茶苦茶言う。

 普通に考えて、一般的な魔術師かできる最大で自己強化魔法、速度上昇をかけても八時間は優にかかるだろう。


 それを、今まで剣ばかりで魔法なんてほとんど使えないような俺に向かってそんなことを言う。

 ちなみに師匠は一往復するのに二分もかからなかった。二十往復で四十分だ。

 これでもまだ余力を残しているらしいので、師匠はもしかしたら魔王側の手先なんじゃないかと思った。


 ちなみになぜかはわからないが、今日の夕食のときに師匠が「わしは魔王の手先ではないぞ」とかいうもんだから、何か心を読む特別な魔法でも使ってるんじゃないかと疑った。


 ちなみに今日は二十往復で十四時間かかった。一応ずっと走ってこれだ。やっぱり師匠がおかしいんだなと思った。普通の人間ができる芸当じゃなかった。

 というか、安易に師匠についていくという判断をした自分を呪いたい。何なら呪い殺したい。


 流石にこんなに厳しいとは聞いていない! でもまあ、こんなところで逃げだすのも癪だから、できる限りくらいついてやるよと誓った。


 剣は振らせてもらえなかった。


   ✕   ✕   ✕   ✕


 帝国歴1876年。6月8日。


 ―――やめたい。そして逃げたい。

 やっぱり師匠は鬼だった。というか魔王だった。

 多分このまま放置しておけば人を襲いかねないぐらいには魔王だった。

 ちなみに機能書いた日記がばれた。

 師匠を敬う気持ちが欠けているぞ。と、師弟関係はもっと純粋なものなんだとお叱りを受けた。


 なので、師匠を敬う気持ちを記しておこうと思う。

 ししょうばんざーい。

 ……これで満足してくれるだろう。

 ちなみに今日も二十往復で十四時間かかった。師匠はたぶん不正か何かしているんじゃないかなと思う。


   ✕   ✕   ✕   ✕


 帝国歴1876年。6月9日。


 なぜかはわからないが、再び師匠にお叱りを受けた。

 どうやら師匠ばんざーい程度は満足できないようだ。この欲しがりさんめ。と思ったが、やっぱり師匠をところどころバカにしているような場所が入っているのが気に食わなかったらしい。


 突っかかってくる理由が子供みたいで可愛かった。

 というか弟子の日記を勝手に盗み見るのはどうかと思いますよ。人として疑います。


 一応書いておくけど、今日は二十往復のタイムが十分ほど縮んだ。まあまあ自信につながる。ちなみに師匠。上り下り5回とかでいいんだよ?


 とりあえず、師匠への敬いの気持ちを倍にしてみる。

 ししょうばんざーい。ししょうばんざーい。

 ……ふぅ。これでよし。


   ✕   ✕   ✕   ✕


 帝国歴1876年。6月10日。


 またまたまた師匠にお怒りを受けてしまった。

 やっぱり万歳が悪いのだろうか。

 ちなみに師匠はこれを注意しに来た時に「かっかかかわ……」ってかわいかったと書かれたことに照れていた。

 なんかほっこりした。


   ✕   ✕   ✕   ✕


 帝国歴1876年。6月11日。


 寝ぼけた師匠とお風呂で遭遇してしまった。

 でも、師匠の体なので反応しなかった。

 何がとは言わない。俺と師匠の名誉のために。

 師匠じゃなかったらかなり危なかったと思う。というか、なぜここにおるんじゃ!? と文句を言われたが、しっかり入浴中の札もかけたし、脱いだ服も近くに転がっていたと思うので、悪いのは明らかに師匠だと思う。



   ✕   ✕   ✕   ✕


 帝国歴1876年。6月12日。


 師匠が怒っていた。

 昨日の日記が気に食わなかったらしい。

 なんでも、自分のことを一人の女性として認識されていなかったことが悲しかったらしい。

 というか師匠。前も書いたような気がしますが、弟子の日記を勝手に見ないでください。


 流石にいくらなんでもおかしいですよ。過保護にもほどがあるというか、自分の感情のはけ口になるために書き始めたのに、師匠の目を気にしながら書くんだったらいつもと変わんないじゃないですか。


 ちなみに今日は師匠が拗ねちゃったので走るのはなかった。


   ✕   ✕   ✕   ✕


 帝国歴1876年。6月13日。


 最近、師匠はかわいいといわれ照れたり、女性扱いされていなくて拗ねたりともしかしなくてもかわいいな。と思っていた時期もありました。


 でも、やっぱり師匠は師匠でした。

 山の上り下り二十回が終わった後、師匠と茂木線をやらされるらしい。

 流石にそれはおかしいでしょうと抗議してみたけど結果は変わらず。

 多分師匠はおととい書いた日記のことをまだ根に持ってるんじゃないかなと思う。


 それにしても、弟子の日記を勝手に見た挙句、それで拗ねて練習厳しくするのは公私混同も甚だしいと思う。


 ここ最近、タイムが三十分ぐらい短縮できた。


   ✕   ✕   ✕   ✕


「ほれ、身が入っておらんぞ? 足はフラフラじゃないか。こんな状態でどう戦えというんじゃ? もっと足を動かせ、殺られるぞ」


 そういいながら師匠はかわいい姿で、十五時間ぶっ通しで走った弟子を木刀でタコ殴りにするという悪魔に近い所業をやってのけていた。


 やった初めの走り込みから一時間短縮できたと思った矢先にこんなことが始まるんだから、いやになる。


 でも、途中で「師匠可愛い」というと、動きが止まるのでそのすきに攻撃して無理やり修行を終わらせた。


 鬼かと思ったけど、やっぱりかわいいのかもしれない。というか、かわいい。


 師匠とのマンツーマンの修行はまだまだ終わりそうにない。


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