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第11話 師匠と別行動

 さて、ということで今日は別行動だ。

 なんというか、馴染まない。ここ一年ぐらいは本当にずっと師匠と一緒だったからか、師匠がいないのということが物凄い変な感じがする。


 というか、結構師匠って忙しそうな感じだったんだけど、本当に一年間も俺に山にこもって指南しててもよかったのかな?


 なんて思ったりしたけれど、そもそも師匠は失踪したってことになってて誰もその行方を知らないんだから、忙しいもクソもあるかと思い直した。


 ただ、何か用事があるのは確かだったのでそっとしておくことにした。というか、今日のために結構長くのお小遣いをもらったのだが。師匠はいったいどうやってこんな金をためているのだろうか。


 というか、あとちょっとで俺の貯金額が四千に乗りそうなんですが、どういうこと? 小遣いで四千万貯まるって。

 それはもうなんかやっちゃいけない仕事にでも手を染めないと稼げない額でしょ。


 まあ、そこだけは気になるので後日師匠に問い詰めるとして、とにかく今日の俺はやることがない。


 まあ、別に師匠がいようがいまいが俺が基本的に暇だという事実は変わらないのだが。


 ―――どうしたものだろうか。


 ということで、賢い俺は考え、普段はあまり行かないようなフローナヴァから少し離れたところにある小規模の都市「ジャーハル」に向かっている。


 なんでも海に面している都市特有のおいしい海鮮とか、異国の珍しい食べ物とか、日用品とかが売り出されているらしい。


 特段やることもなく暇だった俺は「そうだジャーハルに行こう」と思い立って、チンタラ歩きながらジャーハルに向かっていた。


 ジャーハルの都市境を超えると、人々ががやがやと会話する様子や馬車が怏々と行きかうのが見て取れた。

 住民の活発さでいえばフローナヴァを凌ぐんじゃないかと思うような光景だった。


 流石に国随一の港と称されるだけのことだけはある。

 俺は半ば吸い込まれるようにして港付近の競り市場に向かっていた。


   ✕   ✕   ✕   ✕


 始めは珍しい魚や、海の珍味などTHE港。といったようなものが競りに挙げられていたが、いつの間にか年代物のティーポットやら、見たことも聞いたこともないような作家の絵巻などが競りに出されていた。


 なんというか、フローナヴァとは全く別の場所に来た勘がすごかった。

 だってやってないもんね、あそこではこんな活気のあるような商売。

 せいぜいケチなおっちゃんが商店相手に値切っているところをたびたび目撃するぐらいだ。


 それにしてもやたらと高い金額で落札されていく、大体すべての商品が低くても1.3倍。大きいと2倍近い落札価格がついている。


 そんなに価値を感じるようなものには思えないが……。

 俺も、せっかく来たからにはお土産代わりに師匠に何か買ってきてやろうと思っていたのだが、この値段のつき方を見ていると、さすがに買う気が失せてくる。


 同じことを思ったのか、ほかの客は早々に切り上げて帰って行ってしまった。


 ―――そうこうしているうちに二時間がたった。

 いまだ落札価格は二倍近い。普通に高くて手を出す気になれない。

 もしかしたら、フローナヴァでは半分の価値でもここでは倍近くの価値があるのかもしれない。


 だが、俺の居住地はフローナヴァなのでそっちで買う方が安上がりなら、わざわざこっちの高い方で買う意味はあんまりない。


 とはいえ、師匠から手に余るほどの金をもらっているので落札しようと思えばできるのだが……。


 次、いいものが出てきたら多少値が張っても落札してやるぞと息こんだ。———その時だ。


『レディース&ジェントルメーン! ここジャーハル南港第二競り会場がただの競り会場ではないということを、ここにいる皆さんは理解されているであろうと思います!』


 ウォォォォォォォォォォと雄たけび。

 ……なんだろうか。超が付くほどの掘り出し物でも出てくるのだろうか。

 俺がそんな期待を抱きながら、競りが行われる台に目をやる。


『今からこの会場は不視の結界と、無音の結界、進入禁止の結界が張られます。理由はお分かりの通りですが、一度退出されると進入禁止の結界により入ることができなくなってしまうのでご注意ください! 今日は目玉商品からのスタートです!』


 するとガラガラと音を立てながら、細長い檻が音を立てて現れる。


 その檻には紫のシルクの布がかぶされており、どことなく高貴な印象を与えた。


 その厳重な扱いを見て、俺は超貴重な鳥とか中に入っているのだろうか。と全く的外れな感想を抱いていた。


『今日、皆様がお越しいただいた最大の理由。それがこちらです―――!』

 司会が盛り上げるように精一杯声を張り上げる。


 なんだろうかと、注目した矢先。目に飛び込んできたのは衝撃の光景だった。



『世にも珍しい、紫の魔眼。獣人の少女! 奴隷商会が直接仕入れた一級品ですよ! さあ、一万からスタートです! 張った張った!』


 少女はどこかギロリとした目つきで虚空をにらむ。それはだれかをにらむとかそういうのではなくて、ただ漠然とこの世界そのものを憎むかのような鋭い目つき。


 ボロボロの服や体からは想像できないほど、激しい怨嗟に燃えた瞳がこの会場全体を包み込む悪を鋭く見据えていた。


「は? 人……?」

 そんなことを平然と言ってのける司会。まるで人を者のように。商品のように扱う。


 どういうことだよ。こんなことがまかり通っていいのか?

 俺がそんな義憤に駆られている間にも二百万、五百万と下卑た笑みを浮かべた連中が下卑たような目つきで獣人の少女を舐め回すように眺める。


 それが、どうしても許せなかった。———だからだろうか。

「三千万」

 そんな言葉が口を突いて出たのは。

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