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木犀の音  作者: 佐依知(さいち)
7/10

なんだかぽっかり穴があいたみたい 琴音視点


雨なのに、傘を忘れたのか、はたまた壊れてしまったのか分かりませんが、

生憎、何か事情があったであろう知らぬ人に、傘を持っていかれてしまいました。


昇降口で困っていると、茶道部も部活が終わったようでじろちゃんに会いました。

事情を話すと、傘に入れてくれるというので、入れてもらうことにしました。


背の高いじろちゃんが傘を持ってくれて。

ほとんど私に傘を傾けてくれていたので、じろちゃんは傘の持ち主なのにずぶ濡れでした。

思ったよりも雨脚が強くなったので、途中で公園の東屋で雨宿りをして。

自分の方が濡れているのに、何故か必死に私にタオルと長袖のジャージを貸してくれるじろちゃん。


私はその日体育がなかったので、タオルもジャージも持っておらず、有難く貸してもらいました。

背が伸びたな、とは思ってたけど…。

やっぱりじろちゃんは男の子で。

ジャージがぶかぶかで、思わず笑ってしまいました。


借りたタオルでじろちゃんの髪を拭くと、じろちゃんは思い出したのか、急に思いついたのか、

「琴ちゃん…好きだよ」

と言ってくれました


いつも突然だし、朝から、とかみんなの前でも言ってくるから困っちゃうんですが…。

なんだかいつもと違っておかしくなっちゃって、ちょっと恥ずかしくて。


「ふふ、ありがと」


と笑ってしまいました。



その時に気づいてあげたらよかったのかも。

やっぱり、いつもと様子が違うことに。


「こ、琴ちゃん、ごめん、僕もうだめかも…」

「え?」

「傘、使って!!」


そう言って、まだ強く降っている雨の中、じろちゃんは駆け出してしまいました。

私は突然の事で驚いてしまって。

しばらく呆然と立ちつくしてしまいました。


結局、雨は弱まらず、商店街まで兄の陽光(はるひこ)に迎えに来てもらったんですが…。


「あれ、珍しいね。琴が宗二郎のジャージ着てるなんて」

「あ、うん。なんか…貸してくれて走って帰っちゃった」

「え?」

「じろちゃん、風邪ひいてないといいんだけど…」


家に着いて、着替えたあと、じろちゃんに連絡をしてみましたが、いつもすぐ既読になって

返ってくる大好きという返事はなく。


翌朝も未読のまま。


登校して、じろちゃんのクラスを覗いてみたところ、

左吉くんがじろちゃんはお休みだと教えてくれました。


「そっか…」


いつも学校でじろちゃんから「好きだよ」とか「大好きだよ!」とか言われて、

恥ずかしい思いをしている気がしていたのに。


なんだか今日は静かすぎて、

心にぽっかり穴があいたみたいです。


雨音(あまね)ちゃんから

「今日は黒木君からの熱烈なラブコールがないから寂しいね」

なんていわれました。


…じろちゃんの馬鹿。

自分が風邪ひいてどうするのよ…。


丈夫だから、と言ったじろちゃんは、2日、高熱でうなされたようでした。






























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