幼馴染の困りごと。 琴音視点
じろちゃんと私、琴音は今年高校に入学しました。
今まではセーラー服だったけど、高校はブレザー。
気持ち新たに、お友達も出来ました。
が、少し困っていることがあります…。
幼馴染のじろちゃんについてです。
中2のバレンタインに、ずっと好きだったって告白してくれて、びっくりしたと同時に嬉しかった。
でも、私は…ずっと別の人が好きだった。
初恋の人。八束浅緋さん。
上のお兄ちゃんの高校からのお友達で…今ではお兄ちゃんの旦那さんです。
あ、もちろん旦那さんと言っても日本ではその…同性の人同士の結婚は出来ないので、あくまでも私たち家族や知っている人達の認識です。
私が4歳の頃からずっと大好きで、中2まで結婚するなら浅緋兄ちゃんだって思ってました。
年の差なんて関係ないって。
でも…ある日お兄ちゃんたちがキスしているのを見てしまいました。
わざとじゃありません。偶然でした。
もう…それはもうショックで…。
好きな人とお兄ちゃんがっていうのもだし、お兄ちゃんが取られてしまった、みたいな感覚もあって…。
半年くらい、荒れました…。
思い返せば恥ずかしい…。でもそれくらい好きだったから。
好きです、大好きってじろちゃんが言ってくれても、私のじろちゃんに対する好きは同じ好きじゃないと思って…。
でも、ちゃんと考えたくて、時間をもらっています…。
もう、1年以上…。
ですが、好きでいてもらうのは困ってません。
そうじゃなくて…。
「琴ちゃん!今日も可愛い…!」
「おはよ、じろちゃん」
「…好きだよ、琴ちゃん」
「…ありがと、じろちゃん」
このやり取り…1年以上毎日なんです…。
入学してから、クラスは別々になったんですが…
何かとやって来ては、このやり取りをしているので、
今ではすっかり有名なコンビになってしまいました…。
「黒木くん、今日も溺愛ぶりがすごいね…」
「うん…まあ、いいんだけど…」
「何を迷うかね…?黒木くん、男前なのにどっか可愛い雰囲気あって、成績、運動もよし。そして一途。それの何が不満なの、琴音は」
友達の雨音ちゃんです。
別に…まだ悩んだっていいじゃない。
もう少し、ちゃんと考えたいんだから。
それに、もし高校で他に素敵な人がいたら、じろちゃんももしかしたら…私のことが一番じゃなくなるかもしれないし…。
そう考えると、なかなか答えを出せずにいます。
「そんなこと言ってると、可愛い子に目移りされちゃったりして…?」
「それならそれで…」
…いいのかな。じろちゃんが他に好きな人が出来ても。
私…ほんとにいいのかな…。
「…ま、琴音が迷うならそれはそれでいいんじゃない?黒木くんも思う存分牽制しまくりだし」
「…そうかな」
「あ、琴ちゃーん!!」
移動教室で、じろちゃんのクラスの前を通ったら…
ちょうど目が合ってにこにこ手を振ってくれました。
こういうところは、小さい頃から変わらなくて可愛い。
そこはほんとに、大好きなんです。
手を振り返すと、なんか…悶えてる……??
「尾浜さんが可愛すぎて黒木死ぬかもしれないってさ」
廊下側の左吉くんが教えてくれました。
「大げさなんだから…」
「またね、尾浜さん」
「あ、またね左吉くん」
左吉くんに声をかけて歩き出すと、なんか後ろから声が…
「え、いや別に何も…こら黒木!」
「琴ちゃん!僕も僕も!!」
「じろちゃんさっき手振ったじゃない!」
「え、足りないよ。左吉のほうが長かった…!」
「もー、後でね!遅れちゃう」
「はーい!またねー」
これなんです…。
春休みで中学生の頃より背がぐんと伸びて、顔立ちも前よりかっこよくなったのに…中身は変わらない、かわいいじろちゃんのままなんです。
「今日も熱烈だな、宗二郎は」
「あ、笹山先生。こんにちは」
「おう、尾浜もあんな旦那がいると大変だな」
「旦那じゃなくて幼馴染です…」
「そ。遅れんなよ、次、池田先生だろ?」
「あ、そうです。失礼します!」
「廊下走るなよー」
「はーい!」
笹山先生は、うちの下の兄の高校の同級生。ここの卒業生です。
じろちゃんのお兄ちゃん、宗一郎兄ちゃんとも仲が良くて、時々みんなで遊んでいるみたい。
「危なかった。池田先生、ちょっと遅れるとなんか一言ついてくるから…」
「また黒木くんに愛の告白受けてたの?」
「違うけど、じろちゃんにはひっかかってた…」
「そうだと思った…笑」
そんなこんなで、休みの日はメッセージでも…毎日じろちゃんから好きだよって言われて、困ってます。
嫌なんじゃなくて…どうしたらいいか…。
待たせてるのは悪いと思ってるけど…。
ちゃんと考えないで、イエスもノーもじろちゃんに失礼だから…。
まだもう少し、時間が欲しいのが、私の悩みです…。




