食らった衝撃と決心
「お迎えに来てくれたんじゃない?琴ちゃん」
「誰が…」
公園の入り口には、背の高いお兄さんが一人。
丸めの目をした、くるくるの髪。
小さい頃、2、3度会ったことのある、琴ちゃんに似た雰囲気の人。
きっと、あれが誠兄ちゃん。
「…じろちゃん」
そういって、僕を見る琴ちゃん。
不安そうな表情も可愛いんだけど、
「琴ちゃんなら大丈夫だよ、ほら」
そう言って、背中を押しました。
「…ありがとう、じろちゃん!」
そう言って、琴ちゃんは駆け出しました。
あれは…抱きつく勢いのやつだ。
思った通り、琴ちゃんは誠兄ちゃん目掛けてダイブ。
僕ならきっとよろけちゃうだろうけど、誠兄ちゃんはまったくブレることなく、琴ちゃんを抱きとめました。
いいな、僕も早く大きくなりたい。
そしたら、あんな風に抱き止めるのに。
琴ちゃんが頑張って話している後ろで、こんな邪な考えをしていることなんてきっと考えもしないんだろうな。
誠兄ちゃんが笑うのが見えました。
ああ、きっともう大丈夫。
琴ちゃんの顔は見えないけど、誠兄ちゃんの笑顔は、琴ちゃんの笑顔にそっくりです。
ふいに、琴ちゃんがこちらを振り返りました。
そして…
「じろちゃーん!!大好きー!!」
と大きく手を振りながら叫んでいます。
ああ…どうしよう。
とりあえず手を振り返しました。
満足したのかすぐにくるりと翻して琴ちゃんは歩き出しました。
もういいかな…。
可愛かったぁぁぁ!!!
思わず両手で顔を覆いました。
琴ちゃん、今僕に大好きって言った!?
あんな可愛い顔で大好きなんて言われたら死んじゃうよ、琴ちゃん…。自分の可愛さ分かってないの…!?
僕は気づくとしばらくそこで悶々としていたようです。
気づいたら周りが暗くなっていました。
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ゆっくり歩いて帰りました。
家について、お帰り、と言ってくれる兄ちゃんに、僕は思わず抱きつきました。
「わぁ!!じろ…?どうしたの?」
「兄ちゃん…僕…」
「あれ、琴ちゃん仲直りうまくいかなかったの?」
「ううん…それは大丈夫。仲直り出来たみたい」
「それはよかった。…それならどうしたの?」
「僕…僕…琴ちゃんが好きすぎてどうにかなりそう」
「………。なんだ、びっくりした。いつものことじゃないか」
「今日のはいつもと違うんだよ兄ちゃん…!琴ちゃんが僕のこと大好きって…!」
「…男の子として?」
「…それは…わかんないけど…」
「ははは!!宗二郎、それは…ははっ…!」
「笑わないでよ!嬉しかったんだ僕!!」
「よかったね、宗二郎」
「もう…ほんとに…嬉しかったんだ」
「うん、見てたらよくわかるよ」
「兄ちゃん、僕どうしたらいいと思う?」
「んー、そうだねぇ」
「琴ちゃんどんどん可愛くなって困ってるんだ…」
「んー、そうか。もたもたしてると、誰かに取られちゃうかもね?」
「そんなぁ…」
「ね、じろ。そんなに好きでどうしようもないなら、一度、ちゃんと琴ちゃんに伝えてみたらどうかな?」
「…好きだよって?」
「うん。でも、琴ちゃんの気持ちだってあるから、押しつけちゃわないように、でもこんなに琴ちゃんのことが好きなんだよって伝えてみたら?」
「…そうだね、そうしよう!」
「ちゃんと、時機をみて、だよ?」
「はい」
「よし、とりあえず、仲直りの仲介役お疲れ様」
「ありがとう、兄ちゃん」
そして僕は、よく考えました。
鈍感で可愛い琴ちゃんに、どうしたら伝えられるか。
よし、今度良きタイミングで実行しよう…。
そう決心して、僕はその日まで、備えることにしました…。




