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木犀の音  作者: 佐依知(さいち)
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幼馴染の女の子の話


僕は黒木宗二郎。中学2年生。

商店街にある日用品店、黒木屋の次男です。

趣味は昆虫観察、おじいちゃんとの散歩、兄とお茶を点てること、それから…好きな子の話を聞くこと。


僕の好きな女の子は、尾浜(おはま)琴音(ことね)。同い年で、幼馴染です。

兄ちゃん達も同い年で、昔から仲がいいので、僕達も自然と仲良くなりました。


彼女は、僕よりやんちゃで、よく笑って、よく泣きます。

おしゃべりが好きで、色んな話を僕にしてくれます。

僕は、琴ちゃんが楽しそうに話してくれる時間が大好きです。

その時間は、僕だけが琴ちゃんを独り占め出来るから。


そんな彼女を好きになったのは、幼稚園の時。

一目ぼれでした。

笑顔で名前を教えてくれた時、すでに僕は琴ちゃんが好きなんだと自覚しました。


そして早12年。僕はまだ、片思いです。

別に、一緒にいられれば、もうそれだけで幸せなので高望みはしていません。

でも、最近ちょっと困ったことがあります。

琴ちゃんが、なんだか落ち込んでいる様子で、元気がないんです。


どうしたの?と聞いても、なんでもないって言います。

でも、絶対になんでもなくないのに。

僕は、琴ちゃんのことが大好きだけど、笑っている琴ちゃんが一番好きなんです。


うちの兄は、黒木宗一郎と言います。

成績が良くて、いつも落ち着いていて、かっこいい。

でもよく笑って、時には真面目にふざける、大好きなお兄ちゃんです。

そんな兄は、琴ちゃんのお兄ちゃん、陽光(はるひこ)君と仲良し。

だから、ちょっと、兄ちゃんに相談してみることにしました。


-----------------------------------------------------------------


「兄ちゃん、ちょっといい?」

「どうしたの?じろ」

「あのさ、最近琴ちゃんが元気なくて…。聞いてもなんでもないって言うんだけど、ずっとなんだ」


「ああ、そういえば陽光が、琴ちゃんが反抗期で荒れてるって言ってたな」

「え、反抗期!?」

「うん、そうみたい」

「え、琴ちゃんが荒れてるとこなんか想像出来ない…」


「じろはほんとに琴ちゃんが大好きだよね。兄ちゃん、感心するよ」

「え、だって琴ちゃんは可愛いからね。兄ちゃんも知ってるでしょ」

「知ってるけどさ」

「僕、琴ちゃんに元気になってほしいんだけど…どうしたらいいと思う?」

「んー。ちょっと陽光にも聞いてみようか。僕も事情はよくわからないし」

「うん、聞いてみて」

「分かった。あ、じろ、じいちゃんにご飯だよって言いに行ってきて」

「はーい」


-----------------------------------------------------------------


数日後、はる兄ちゃんから連絡をもらいました。


「や、宗二郎」

「こんにちは、はる兄ちゃん」

「なんか琴のこと心配してくれてるんだってね。ありがとう」


「うん。琴ちゃん、ずっと元気ないから」

「そうなんだよね。琴音、実はうちの兄ちゃんと喧嘩中なんだ」

「え、誠兄ちゃんと?」

「そう。もうだいぶ経つんだけどね。最近はもう、多分、怒ってないんだよ、琴音」


「琴ちゃんが怒ってたの?」

「そう。ちょっと色々あってね。怒って兄ちゃんのこと無視してるうちに、兄ちゃんあんまり家に帰って来なくなっちゃって」

「え…」

「ああ、大丈夫。いる場所はわかってるんだ。浅緋兄ちゃんのとこだから」

「浅緋兄ちゃんって、琴ちゃんが好きな…」


「そうそう。だから、最近は毎日、兄ちゃん今日帰ってくるかなって僕に聞いてくるんだ。寂しいだけなんだよ」

「なるほど」

「…宗二郎さ、琴音のこと、ちょっと気分転換させてあげたり出来るかな?」

「気分転換?」

「うん。ちょっと公園に連れ出すだけでいいんだ。僕たち家族じゃ、素直に話もしてくれなくて」

「そうなんだ。僕でいいなら、やってみる」

「ありがとう、宗二郎。頼んだよ」


そうして、僕は琴ちゃんを誘うことにしました。



こちらは"あなたとなら毎日"という拙作のスピンオフ作品になります。

本編読まなくても読めますが、本編も読んでいただけますと、より解像度が上がるかと思います。

よければ本編も併せて読んでみてください。(強制はしませんので、ご自由にお楽しみください!)

黒木宗二郎と尾浜琴音、幼馴染ふたりがくっつくまでのお話です。

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