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黒い髪に黒い瞳、メガネをかけていて、身長が高い。
真面目な雰囲気は、ハズミという青年の華やかな雰囲気とは全く正反対。
『あの、アイスティーをどうぞ』
グラスを2つ、トレーに載せて、わたしは二人に話しかけた。
二人は同時に振り向き、わたしを見て眼を丸くした。
「わっ! マカ、またこういうのに憑かれたの?」
「―お前がそれを言うか? 『携帯彼氏』よ」
「うぐっ…!」
ハズミは胸元をおさえ、その場にうずくまった。
代わりにマミヤがマカに問いかける。
「でもマカ、彼女は一体…」
「サイトで評判になっている小説の話、聞いたことないか?」
「…読んだ人間が不審な死に方をするってアレ?」
「それの作者兼管理者みたいだな」
「じゃあオレ達と同類か?」
マカの言葉でハズミは顔を上げて、マジマジとわたしを見る。
「しっかしオレの時といい、憑いてきたモノを使うとは、さすがマカ」
「コイツ、死霊だから冷たくてちょうど良いんだ。メイド達が戻るまで、コイツに面倒を見てもらう」
『ええっ!?』
いつの間に決まったの?
「でも流石に買い物とかはムリだろう? 俺達でそっちは何とかするよ」
「すまんな、マミヤ。だが買い物も昨日、メイド達がしこたま買い込んできたんだ。困ることは特にない…ことも、ないか」
ふとマカの視線がわたしに向かう。
『えっ?』
「マミヤ、ソウマに言って、コイツの着れる服を用意してくれ」
『ええっ?』
わたし…着替えること、できるの?
「了解。明日から少しずつ持ってくるよ」
「ヒマな時で良いからな。今、ソウマは店を留守にしているんだろう?」
「あ~。ソウマさん、今は買い付けに出ているからなぁ」
ハズミはトレーからコップを一つ持って、マカの隣のイスに座った。
「今年は特に、色んなことが起きすぎてパニックになってるって。表の世界と裏の世界、バランスが崩れてるって険しい顔で言ってた」
「…だろうな。一度境界線が崩れると、修復するまで時間がかかる」
「マカ達が何とかできないの?」
「そこまで万能ではない。そもそもこんなに大きな亀裂が入ったのは、長い歴史の中でも類を見ないほどだ。…しばらくはいろんな意味で落ち着かないだろうな」




