暑い昼
「昼間になると、暑さもマックスだな」
部屋の中はクーラーの冷たい空気に満ちている。
女の子は相変わらずイスに座り、ノートパソコンと向かい合っていた。
わたしはその間、何をしていたかと言うと…。
「おい、風呂掃除終わったか」
『うっうん…』
「じゃあ次は洗濯頼む」
『ううっ…』
家事をさせられていた。
「メイド達がちょうど休暇中でな。助かった」
わたしとしてはバッドタイミング。
髪もポニーテールにして、三角巾を被っていた。
家事は一通りできるけれど、この家は広いから疲れる。
けれどふと、リビングの外を見て首を傾げた。
『ねぇ、ここって…一軒家じゃないの?』
「高層ビルが真正面に見える一軒家があるか。ここはマンションの最上階だ」
『…マンションに、2階ってあるの?』
そう。このリビングには階段があって、2階に行けるようになっている。
「今時の高級マンションはあるな」
『あなたってお金持ちのお嬢様?』
「…意味は違うが、金はあるな」
と、険しい顔で呟いた。
『ちょっと聞きたかったんだけど…』
ピンポーン
「ん? 来客か?」
女の子はインターホンに向かった。
スイッチを押すと、来客の顔が画面に映った。
「ヤッホー、マカ。家事の手伝いに来たよ~」
長い茶髪に、耳にいくつものピアスを付けた青年が明るい笑顔と声を向けてきた。
「…ハズミ。お前だけか?」
「マミヤもいるよ~」
「なら良し。上がってこい」
「はーい。…って、オレだけじゃダメなのかよっ!」
騒ぎ出す青年を無視するかのように、女の子はスイッチを押して画面を消す。
「男が二人、今から来る」
『えっと、じゃあわたしはどこかに隠れていたほうが…』
「いても構わん。どうせお前の元同類だからな」
『えっ?』
「とりあえずアイスティーを2杯、作っといてくれ」
『うっうん』
聞きたいことはあるけれど、お客さんが来るのなら準備はしたほうが良い。
数分後、眼をつり上げ、さっき画面に映った青年が来た。
「マカッ! さっきの何だよ?」
「お前だけだとうるさくてたまらん。マミヤがいればいざという時、お前を回収してもらえるしな」
「う~!」
「まあまあ。マカも暑くて参っているんだろう」
ハズミと呼ばれた青年の後ろから、もう一人の青年が付いてきた。




