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覆される都市伝説・【マカシリーズ28】  作者: 星群彩佳
出会ってはならない存在
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キッチンのテーブルの隅に、何枚かのエプロンを見つけた。


グリーンのチェック柄のを身に付けて、わたしは冷蔵庫の中を見た。


業務用かと思えるほど、大きくて立派な冷蔵庫には、ぎっしり食材があった。


『わぁ! コレだけあると、何作ろうか悩むなぁ』


そう言いつつも、どこか心が浮かれてしまう。


わたしは材料を見ながら、何を作るか考え始めた。




―30分ほど経って、女の子が戻ってきた。




「冷水シャワーで、ようやく目が覚めた。メシはできたか?」


『えっええ』


とりあえずサンドイッチとコンソメスープを作った。


トレーに載せて、女の子がいるテーブルセットまで運ぶ。


女の子は黒髪を頭の上で結んでいて、白生地に青の朝顔の浴衣を着ていた。


…黙っていれば、本当に美人なのに。


「んっ、んまい。が、ちょっと味が濃いな。味見しなかったのか?」


『味見ができるの?』


何かを食べることなんて、もう二度とできないと思っていた。


「さっき言っただろう? この部屋にいる間だけは、普通の人間と同じことができると」


つまり…寝ることや食事をすることも、可能ってこと?


確かに寝ることはできたけど…。


考え込んでいると、女の子は一つのサンドイッチをわたしの目の前に差し出した。


「ほれ、食ってみろ」


『うっうん…』


わたしは恐る恐る口を開けて、サンドイッチを食べてみた。


『っ! ん~しょっぱいっ!』


久しぶりに感じた味覚は、しょっぱさ。


けれど材料が良かったおかげで、塩分がある程度は抑えられているけれど、このしょっぱさは有り得ない!


『ごっごめんなさい! 作り直すから…』


「別にこれでも構わん。汗をかいた分、塩分が欲しかったからな」


『…ごめんなさい』


味見ができるかどうか、まず試してみれば良かった。


料理をするのも久し振りだったから、感覚が狂っているのも気付かなかった。


「そう済まなそうな顔をするな。私は味が濃いのが好みだし、本当にイヤだったら食べない」


『うっうん』


「だが飲み物は欲しいな。紅茶でもいれてくれ」


『わっ分かったわ。アイスティーで良い?』


「ストレートで頼む」


『うん、ちょっと待ってて』


慌ててキッチンへ向かう中、わたしは思った。


言葉は悪い…と言うより古臭くて、態度は大きいけれど……決して怖くはない。


怒鳴っている姿を見ても、そんなに恐ろしくないというか…。


多分、気持ちがそのまま表に全部出ているからだろう。


ウソ・偽りなく、素直に行動しているから、イヤな感じが全然しないんだろうな。


…良いな。


あの女の子なら素の自分を表に出しても、周囲の人達は受け入れるだろう。


……もっとも、受け入れられなくても女の子は平然とするだろうな。


受け入れられなかった受け入れられなかったで、その状況を真正面から受け止めそうだ。


女の子のそういう強さ、わたしにもあったのなら……。



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