都市伝説、完全なる消滅
「―なに? それは本当か?」
コウガからの電話を受けたマカは、一瞬にして険しい顔になった。
今日は金曜日。
いつものように、わたしはマカのマンションに訪れていた。
けれど今日は3人のメイド達は用事があって来られないので、代わりにハズミとマミヤの二人が泊まりに来ていた。
コウガの電話は、もう寝る時間になってから寄越されたけれど、その内容は緊急なものだったらしい。
リビングに集まっていたわたし達は、マカから発する緊張感に飲み込まれていた。
「…ああ、シキが確認したんだな。そうか…。分かった。後はこちらで何とかする。悪いが住所をメールで、ソウマに送ってくれ。ああ、じゃあな」
五分ほどで会話は終了。
けれどマカはケータイ電話を握り締め、宙を睨み付けている。
その気迫はただ事ではないことを示している。
「…ナナオ、悪い知らせだ」
「えっ? わたし?」
マカはわたし達3人が座っているソファーの所へやって来た。
「お前が気にしていたシスター達のことだ」
「えっ! 何か分かったの?」
思わず腰を浮かせたわたしに、マカは冷静に一言。
「全員死んだ。古き神ごと、信者達、全て」
「…えっ?」
唐突な言葉に、体から一気に力が抜けて、ソファーに崩れ落ちてしまった。
「ナナオっ!」
「ナナオ、大丈夫か?」
慌ててハズミとマミヤが支えてくれる。
「死んだって、どうして? まさか逃れられなくなって心中とか…」
「ではない。―正確には、喰われたんだ。私の双子の弟に」
「マノンにかっ!」
「先手を…打たれたか」
2人は驚いて眼を丸くした。
マノン―わたしは彼の存在を、マカの口から聞いていた。
死するも、母親が邪法を使って蘇らせた、マカの双子の弟。
今では能力者を喰らって、その存在と力を留めていることは知っていたけど…。
「何でマカの弟が…」
「恐らく、私の周囲を探っていたんだろうな。それで例の団体のことを知り、私達より先に見つけてしまったんだろう」
「マカ達をも追い抜いて?」
「…ああ。向こう側には操作能力者であるリウがいるからな」
リウ…それも聞いたことのある名前だった。
血族を裏切って、マノンに付いた男の子。
その能力は生き物を操作するということも。
「恐らく動物か人間を使って、団体の逃げ場を知ったんだろう。シキとコウガが見つけた時には、既に手遅れだったらしい」
「でっでもあの化け物まで食べたの?」
「だろうな。マノンなら、食すのは難などない」
くらっ…と眩暈がする。




