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覆される都市伝説・【マカシリーズ28】  作者: 星群彩佳
出会ってはならない存在
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しかし女の子は答えることなく、いきなり立ち上がり、こちらに歩いてくる。


『えっ? なっ何?』


床に座り込んだままのわたしの目の前に膝をつき、マジマジとわたしの顔を見る。


そしてゆっくりと全身を見ていく…んだけれど、何かこの視線、危険な感じがするのは何故?


「…うん、七十点だな」


『はっ? 何がっ?』


思わず裏返ってしまった声。


だけど女の子は構わず、手を伸ばしてわたしの頬に触れた。


「おおっ! 流石は死霊、冷たいな!」


そりゃあ肉体がないから、冷たくて当たり前なんだけど…。


と言うか、この人、普通にわたしに触っている…。


……何で?


「うむ。これなら眠れそうだ」


女の子は喜びながら、わたしを立たせた。


立ってみて分かったことだけど、女の子の方が身長が高い。


わたしが小柄なせいもあるけれど、女の子の顎の辺りがわたしの頭の部分となる。


二人で向かい合わせになると、いきなり抱き着かれた!


『きっ…きゃあきゃあーーー!』


なっ何で抱き着くの?


しかも思いっきりぎゅっと!


「お~、コレは良いな。冷えた抱き枕と思えば、良く眠れそうだ」


女の子は言葉通り、わたしの体を抱き枕のようにズルズルと引きずって、再び布団の中に入った。


女の子に抱き着かれたままだったわたしも、そのまま布団の中に入ってしまうわけで…。


『えっ、えっ、ええっ!?』


訳の分からないことの連発に、わたしの頭は久しぶりにパニックになっている。


「うるさい。布団の中に入ったら静かにするものだと、ばあさんから教わっていたんだろう?」


『そっそれはそうだけど…』


それはわたしが小説で書いたこと。


女の子は覚えていたんだ。


「だったら大人しくしていろ。なぁに、抱き着いて寝るだけで、他は何もしない」


『されたら困るっ!』


「じゃあ大人しくしろ。わたしが次に眼を覚ますまでの辛抱だ」


『ううっ…』


どうしようもなくなって大人しくしていると、やがて寝息が聞こえてきた。


…この人、本当に眠ったみたい。


しかも死霊であるわたしを抱き締めながら。


いくら体が冷たいからって、抱き枕の代わりにするなんて、絶対に変!


でも寝顔も美人。


漆黒のサラサラヘアーは立ち上がった時、腰まで揺れていた。


前髪は眉毛の上まで、きちんと切りそろえられている。


黒い瞳は切れ長で、唇は何も塗っていないのに真っ赤で艶がある。


白くキメ細やかな肌に、すんなり伸びた手足。


そしてどことなく…変わった空気を持っている。


時々、力を持つ人間に当たる時があったから、こういう空気をわたしは知っている。


…だけどこんな反応をしたのは、この人が始めて。


『黙っていれば、美人なんだけどね』


体付きは女性そのものだけど、顔付きはちょっと中世的な雰囲気がある。


こういう人が友達だったら、きっと自慢してしまう。


わたしは女の子の寝顔を見ながら、息を吐いた。


生前に出会えていたのなら…わたしはこういう存在にならずに済んだのかもしれない。


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