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あえて口には出さなかったけれど、多分マカの眷属になれば、シスター達に対抗するだけの力も身に付けることもできるかもしれない。
…そう。甘い言葉で子供達を騙し、自分達の都合の良いように利用したシスター達を、わたしは許すことはできないっ!
「確かに可能になるが…。それは今まで経験しなかったことも、するようになるぞ?」
「覚悟はできてる。…何も自分がした罪をシスター達になすり付けるつもりはないわ。わたしは確かに、醜い願いを持っていたし」
あの施設へ行く前から持っていた感情は、偽りなんかじゃない。
あんなに激しい憎しみは、忘れようにも忘れられない。
「…キミって見た目よりも潔いね」
コウガが感心したように、わたしを見て言う。
「いろんなことを諦めただけよ。それに罪の逃れはしたくはないわ」
わたしをイジメた人間達は、罪から逃れた。
その姿を見ていたわたしだからこそ、逃げてはいけないんだ。
「マカ、わたしを眷属にして」
わたしは改めて、マカに申し出た。
マカの眼は数日前と同じように、真っ直ぐにわたしに向かっている。
「わたしはシスター達の今後を見届けたい。その為になら、この世に留まり続けたいの」
「…だが一度、血族の眷属になってしまえば、例えシスター達が消え失せても、お前は存在し続けることを余儀なくされる。それに使われる時には、使われるぞ?」
「良いわよ。わたしはもう、一人じゃないでしょう?」
マカに選択を与えられ、ハズミやマミヤには仲間呼ばわりされた。
けれどこの人達は、ウソがない。偽らない。
ありのままでいるのに、決して人をイヤな気持ちにさせない。
「わたしはね、変な言い方かもしれないけれど…あなた達みたいになりたいの」
「私達のように、能力を身に付けたいか?」
「それもあるけど…。まずは強くなりたいわ。それも人を傷つけるんじゃなくて、人を…何かを守る強さが欲しい」
そう、ずっと思っていた。
マカ達は優しいとは言い難いけれど、人を、そして何かを守る強さがある。
そしてその強さを誇りに生きているからこそ、輝いて見えるんだ。
闇に属するのに、その輝きは決して濁らない。
「まっまあわたしじゃ時間はスッゴクかかるだろうけど、ちょっとでもそういう存在になりたいの」
照れながら言うと、マカはふと表情を崩した。
「確かに先は長いだろうな」
「うっ…。やっぱりそう思う?」
「ああ。だが女の方が根性はあるからな。これからよろしくな、ナナオ」
そしてマカは微笑んで、わたしに手を差し伸べてくれる。
わたしは今度こそ―迷いなく、マカの手を握った。
「うん、これからよろしくね」




