真実の都市伝説
ナナオが通っていた施設は、邪教を信仰する所だった。
そこの大人達は、傷ついた子供達に甘い言葉をかけ、取り引きを持ちかける。
それは自分を傷つけた者に対する、復讐。
復讐の対価は、自らの肉体。
崖から飛び降り、異形のモノに喰われることで、その願いは成就する。
―そこまでは、子供達にとっては共通点。
だが、シスター達はそんなに甘い存在ではなかった。
コレから語るはナナオのこと。
ナナオの肉体は主に捧げられ、その魂はシスターの手に堕ちてしまった。
生前、ナナオは自らの体験を、シスターの勧めで書き残していた。
それを元にして、出来たのが例のサイトだった。
しかし利用者は、ナナオが思っていたのとは全く違う。
ハズミが告げた通りだった。
サイトにアクセスできるのは、誰かを、そして何かをイジメていた人間。
そしてイジメた人間がそのサイトを知るのは、イジメていたモノからの勧めからだ。
そうしてナナオはイジメをしている人間の元へ行き、死に追い詰める。
このことはインターネットや口コミで広がる。
被害者を調べていけば、分かりそうな共通点だった。
「…しかし近年では、イジメの境界線があやふやになっているらしい。イジメをしている人が自覚がない状態が増えているらしいんだ」
本人はからかっている、あるいはいじっているだけに過ぎないと、本気で思っている。
だがイジメを受けた人間は、そう簡単には思えない。
「恐らく、話せば和解した人達もいるだろう。けれどイジメられた人間の恨みの念は、強く燃え上がる。それはキミも知っていることだろう?」
「…そう、ね」
確かにそれは、身をもって知っていた。
「キミは一部の人達にとっては、ある意味、ヒーローと言われているんだ」
「……皮肉な呼び方ね」
「うん、それには同感。それにさ、イジメている人間をサイトに導いた人も、無事では済まされない」
「えっ…。終わらないの?」
「キミの役目は終わっているだろう。けれどその続きは、殺された人間が引き継いでいるんだよ」
そう言って、コウガは皮肉な笑みを浮かべた。
そこで一つの可能性が思い浮かぶ。
「まさかっ…殺された人が、わたしと同じようになっているの?」
「正解。頭良いんだね」
「あっああっ…!」
わたしは再び頭を抱えた。
…そうか。
わたしのしてきたことは、わたしと同じ存在を作り出す作業の一つだったんだ。
「ナナオの察する通り、殺された人間の魂は、キミがいた場所に吸収される。そしてまず、自分を殺す為に導いた人間を殺すんだ。そうすることで、キミと同じ存在に成る」




